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幸運なことに、激戦だったチケットを手に入れることができ、この日、私は大好きなロックバンドのライブを観るためにライブハウスへと向かった。
フレデリックの全国ツアー、リリリピート編。キャパ250人程でみれるなんて、夢にも思わなかったし、会場に入ってもまだ夢なんじゃないかと疑ってしまうほどだった。定刻を過ぎても始まらず、左手に付けた腕時計を何度も見返しながら、今か今かと開演を待つ、その時間はとてつもなく長かった。そして定刻を5分ちょっと過ぎた頃、SEが流れ始めた。SEは、インディーズの頃の初めての全国流通盤のミニアルバムの一曲目。この時点で今日のライブが、とんでもないものになることを改めて感じた。そして、そのミニアルバムの二曲目に収録されていた“SPAM生活”でライブが始まった。私がフレデリックを好きになって、ライブへと足を運ぶようになったのは最近のこと。この曲は、今後一生ライブで聴くことも無いんだろうなと思っていたからこそ、この曲が目の前で披露されている、その状況を脳内では理解していても、気持ちが追いつかなかった。付いて行くのに、忘れないようにするので必死だったんだな、と振り返ってみて思う。そんな曲たちが次々に繰り広げられるリリリピート編は、以前のビバラロックのライブレポの言葉を借りれば、まさに『幸せな拷問』だった。(このワードセンス凄い……)そんな昔の曲たちがメインで構成されていた前半のセットリストの中でも印象的だったのは、シンクロック〜もう帰る汽船〜峠の幽霊。シンクロックのアウトロからもう帰る汽船への繋ぎ方は鳥肌ものだった。深海の奥底に引きずり込まれるかのよう。そこからの峠の幽霊、というこの三曲の流れはこれまでの空気とは一変した、独特な空気だった。それを感じることが出来るのも、フレデリックのワンマンライブの魅力だと思っている。フェスなどで体感するライブよりも、さらに深く、奥の奥の底に引きずり込まれる感覚がワンマンライブにはある。その感覚をこのリリリピート編をみながら改めて感じることが出来た。そして、後半はフレデリズム2の曲たちを披露。こんなにも昔の曲たちを披露すれば、そこがピークになってもおかしくないだろうとも思ってしまうが、そんなことはなかった。ここからまた一段とフロアの盛り上がりも加速した気がする。最新が常に最高だと改めて気付かされた。そして、本編最後の曲は“逃避行”。この曲の歌詞の中に、《このまま現在過去未来掻っ攫って》というフレーズがあるが、これがこのリリリピート編にピッタリなフレーズだと感じた。リリリピート編はそもそも、初めての全国ツアーの場所をもう一度回るというもの。昔から見ていた人たちに、今の自分たちを見せたい、という気持ちがあったと思う。そして、昔の曲たちも今のフレデリックが演奏することでより響くものもきっとあったはず。そうなると、やはりその4年前の初めての全国ツアーを見ていた人たちだったり、それより前のライブを見ていた人たちのことを羨ましいと思ってしまいそうになる。だけど、この日のライブを観て今のフレデリックが最高だと思えたし、これから先、その最高を更新し続けてくれる未来を感じることも出来た。だからこそ、この日のライブを目撃することが出来て本当によかったし、今のフレデリックを好きになれてよかったと思える。きっと、このリリリピート編のように、過去のことも大切にしながら、これからも進んでいくんだろうと思えたからこそ、逃避行のあのフレーズが胸に刺さった。そして今この文章を書きながら、リリリピートの《全部リセットするわけないわ 全部背負ったまま》という歌詞も同じことなのかもしれない、なんてことも思った。これまでの過去をしっかり全部背負ったまま、階段を一段ずつ着実に上がってきたバンドなんだと思ったし、これからさらにその階段を駆け上がっていく姿を目撃し続けたいと思えるようなライブだった。健司さんがネタバレ開始の合図を出してから、リリリピート編のことを思い返して書いていたら、こんなにも長い文章になってしまって驚き。ここまで読んで下さった方とかいらっしゃるのでしょうか…。レポとかじゃなく感想なので、そう感じる人もいるんだな、くらいに思って頂ければ幸いです。