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220224 名古屋旅行記④豚猿龍(2日目)

3-1 アブダクション

10時ごろ目が覚めた。
昨夜の酒の余韻が体に残って、身体中がだるい。
僕は、ベッドの上でギリギリ人の形を留めていた。

いつまでもホテルにいてもよかったのだが、
せっかく友人Aもいるのだ、旅を満喫する努力をしようと思う。

今日はモンキーパークに行く予定だ。
愛知観光地トップ20にも入らない弱小観光地だが、お目当てのものがある。

僕らは、栄近くのホテルから、名鉄に乗るため名古屋駅に向かった。
名古屋駅から、モンキーパーク最寄り駅である犬山駅まで30分ほど。
しかし、名古屋駅に着いたときはすでに11時を過ぎていた。

そこで、僕らは名古屋駅で昼食を取る事にした。
せっかくなら名古屋らしいものを...と、矢場とんで味噌カツを食べる事にした。


たまたま2席だけ席が空いていたため、吸い込まれるように入店。
店の内装は、和風のような、中華のような...?
なかなか奇抜で不思議な、常人には思い付かない異様なデザインだった。

また、まわしをした半裸の豚が店内の至る所にいる。
調べると、ぶ〜ちゃんというらしい。

店員の案内のもと、幾つものぶ〜ちゃんの前を通り、席に向かったのだが、
どのぶ〜ちゃん達もこちらを向いて、ニヤニヤと僕らを歓迎しているようだった。

(気味が悪いな...)

しかし、友人Aは気にしていないようだ。

(きっと勘違いだ、せっかく歓迎してくれているぶ〜ちゃんに失礼じゃないか。)

僕らは席につき、一番人気の味噌カツ定食を注文し、料理の到着を待っていた。

友人Aとたわいもない会話をしていたのだが、どこかから視線を感じる。

(なんだ...?)

視線の出どころを探しながら、ふと天井を見上げた。

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ぶ〜ちゃん宇宙船が、我々を狙っていた。


宇宙人がUFOで、人や動物を誘拐していくアブダクションのように、
ぶ〜ちゃんも我々を攫うつもりだったのだ。

そのために、うまい味噌カツを用意し、名古屋で人気店となり、
集まった人々を捕獲する、という回りくどいことをしているらしい。

血の気が引いた僕と友人Aは、大急ぎで味噌カツを平げ、
命からがら逃げ出したのであった。




『........撒いたか...?』

膝に手を当て、息も絶え絶えに、僕は尋ねた。

『あぁ、流石にもう追ってきてないみたいだ。』

空気が冷たく乾燥し、喉の奥が絡みつくようで苦しい。

『なんだったんだ、あれ...』

ぶ〜ちゃんによる、ガトリングガンの波状攻撃から逃れるため、
走りに走った僕らは憔悴しきっていた。

『おい、見ろよ』

指された方を力無く振り向くと、そこにはモンキーパークがあった。
どうやら、僕らは犬山市まで逃げてきていたようだ。

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3-2 どこまでも正直な遊園地モンキーパーク

モンキーパークとは、愛知県犬山市にある遊園地だ。
犬山キッズたちの遠足先の定番らしい。

この遊園地には、『若い太陽の塔』が設置されている。
僕はこの『若い太陽の塔』をみるため、愛知に来たと言っても過言ではない。
しかし『若い太陽の塔』については、また後日、記そうと思う。

モンキーパークには、2時間ほどしかいられなかったのだが、
非常に面白い遊園地だった。

というのも、自身を擬人化ならぬ、擬遊園地化すれば、
モンキーパークになるのではないかと考えてしまうほど、
近い感覚で運営されていた。

某遊園地は『夢の国』などと呼ばれているが、来場者に夢を見せるには、
多くの嘘をつかなければいけない。
キャストは魔法を使えないし、動物とも話せない。
しかし、嘘を徹底することで世界観を作り上げることができる。

一方、モンキーパークは、正直な遊園地であった。
子供達には楽しんで欲しい、しかし財政的な制約もある。
親御さんの負担を減らしたいが、キャストの数にも限界がある。

そういった事情を踏まえ、多くの取捨選択をしながら、
正直な遊園地として、来園者に向き合っていた。


①多種多様なキャラクターが混在するカオス感
ディズニー、サンリオ、しまじろう、ドラえもん、ポケモン...と
思いつく限りの有名どころのキャラクターが混在していた。
僕はそれを見て『節操ねぇな〜』と笑っていた。
しかし、メタ的なものの、子供にとっては立派な夢の国である。

②マスコットキャラクターのなんとも言えない感じ
モンキーパークには、モンパ君とモンピーちゃんというマスコットがいる。
こいつらがなんとも言えないのだ。
(絶対にめちゃくちゃ似たキャラクターいるよな)
と思いながらも、思いつかない。
サル系の王道のキャラデザインでありながら、何か違う。
脳みその気持ち悪いところが突かれて、すごく気持ち良い。


③昭和のまま止まった部分もある
園内にはゲームセンターがあり、懐かしのアーケードゲームが所狭しと並ぶ。
僕と友人Aは、エアーホッケーをプレイしたが非常に盛り上がった。

友人A『モンキーパークで一番楽しかったわ。』

お土産屋にはタバコ自販機もあり、パパさんに優しい一面も。


④正直で飾らないキャスト
土産物屋の店員さんに、グッズについて尋ねてみると、
ここの土産物屋じゃなくて、入り口近くの大きな店舗の方が良いですよ、
と丁寧に教えてくれた。
別に土産物屋の売り上げが、キャストの待遇に繋がるわけでもないだろうが、
来場者にとって、最も良い選択を促してくれるのは、ありがたかった。

チケットのもぎりのお姉様たちが談笑しながら、お仕事をされていたのも
とてもよかった。(皮肉とかではなく、そのままの意味で)
仕事なんてそれくらいの感覚でやりたいよな、って思う。
僕も仲の良い同僚とニコニコ話しながら、お金を稼ぎたい。

モンキーパークの印象は、雑多で節操がなくて、しかし正直者で親近感が湧く、
そんな遊園地だった。


また、モンキーパークには、動物園が併設されていた。
その名はモンキーセンター。
世界有数のサル専門動物園だ。
ほとんど時間がなく、さらりとしか回ることができなかったが、
どのサルたちも毛並みが良く、ツヤツヤしていたことが印象的だった。

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写真は、ヒーターに当たるワオキツネザル。かわいい。

若い太陽の塔を見るために来たモンキーパークだったのだが、
思いのほか楽しい空間だった。

僕が名古屋の大学に通っていたら、友人や彼女と何度も遊びに来るんだろうな。


3-3 バンテリンドームナゴヤ

さて、モンキーパークを出た僕らは、名古屋に戻ることにした。
バスに揺られながら友人Aはこんな提案をした。

『ナゴヤドーム行かん?』

バンテリンドームナゴヤは、プロ野球・セントラル・リーグの中日ドラゴンズが本拠地として使用する専用球場である。

僕も友人Aもプロ野球ファンだ。
なんなら僕にプロ野球の良さを教えてくれたのは、小学生の頃の友人Aだった。

僕は食い気味に、その誘いを快諾した。

この日、ドームは完全に閉まっていたので、僕らはその周囲を歩いて回った。

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雨がぱらつく中、ドームの軒下を走る人影がいた。
185cmはあろうかという高身長に、長くしなやかな四肢、
しかし、幹のしっかりとした筋肉質の男だ。
ここはバンテリンドームナゴヤ、中日ドラゴンズの本拠地。

(絶対野球選手やん...)

頭の中で選手名鑑をめくりながら、(誰だ...誰だ...)と頭を捻っていた。

(あ!!!!! 梅津選手じゃん!!!!)

梅津晃大
仙台育英から東洋大学に進学し、2018年に中日ドラゴンズがドラフト2位で指名。
背番号はエースナンバーの18。最速153km/h。
2020年は開幕ローテーションに名を連ね、8/2には延長戦完投を記録した。

気がついた時には、梅津選手は彼方まで走り去っていた。

(良いもん見たな...)

ドームから名古屋駅へ帰る間、電車内で感慨に耽りながら、
梅津選手のことを調べていた。

梅津選手は今、沖縄で春季キャンプに参加している。


あいつ誰や。

顔も全然違ったわ。

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