220314 末森
僕は半袖を着ない。
どれだけ暑い夏場でも、ワイシャツを着ている。
これは僕が中学生の頃からの習慣だ。
僕は当時からマイルールに縛られる人間だった。
誰に言われたわけでもないのだが、勝手に思い込んで勝手に苦しむ節がある。
当時の僕のマイルールは、『末森にバカにされるまでは、長袖を着る』というものだった。
ここで突然出てきた末森とは、僕の帰国子女の同級生である。
ええとこの子で、私服は全身をラルフローレンでコーデするようなやつなのだが、
こいつがちょっと嫌なやつなのだ。
絶妙に人を見下しているというか、デリカシーがない。
僕はそれほど特別仲が良かったわけではないのだが、普通に話す間柄だった。
中学2年の7月ごろ、大阪はめちゃくちゃに暑かった。
別にこの年が特別暑かったというわけではないが、めちゃくちゃ暑かった。
僕の中学は制服があり、6月にはみんな夏服に衣替えをしていた。
しかし、僕はまだ長袖を着ていた。
確か、肘に汗疹ができて、それを隠していた気がする。
別に今となっては大したものではないのだが、当時は気にしてしまうのだ。
そんな中、末森は長袖を着て汗だくの僕を見てこう言った。
『ナンシー半袖持ってへんのwww?』
なんか強烈にムカついた。
なんやこいつ。
別に長袖を着ている理由を推し量って欲しかったわけではないのだが、癇に障るものの言い方だ。
普段はそんなこと思わないが、顔もムカついた。
それから、僕は中高の5年間、末森に『ナンシー半袖持ってへんのwww?』と言われるまで、半袖を着ないことにした。
マイルール化して、末森へのむかつきを希釈したかったのだろうか。
しかし、僕のそばにはもう末森はいない。
確か彼は、地元に残って大学に進学していた気がする。
僕は今、地元を離れ、単身大学院生として過ごしている。
僕はこれからも末森がいない夏を、長袖で過ごさなければならない。
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