リュートのシチリアーナ
古楽の本場オランダに7年滞在。リュートを弾いて30年になります。埼玉を拠点に活動中。Youtube で「おやすみリュート」の配信を始めました。
まずは、「シチリアーナ」をお聴きください。
シチリアーナ 聞いたことありますか
「それではここで、皆様もご存知のメロディー“シチリアーナ”をリュートで演奏したいと思います!」
あれ、お客様の反応が薄いですね。ポカーンとしています。
「ほら、パスタかなんかのコマーシャルで、リュート奏者のつのだたかしさんが弾いているやつですよ。聞いたことあるでしょう?」
20数年前の故郷、秋田でのコンサートの一コマです。なんとそのCMは地元では流れていませんでした。残念。秋田で民放は3チャンネルしかないことを忘れていました。
この優しくシンプルなメロディーはリュートにとてもよく合います。一度聴いたら耳に残る感じですね。初心者がリュートで弾きたい曲、No.1が「シチリアーナ」です。リュートは力のいらない楽器なのですぐに楽しめます。これまで、いろいろな方にリュートを教えてきました。全く楽器を触ったことのない人もこのシチリアーナは皆さん弾けるようになりました。
リュートマニア ★☆☆
シチリアーナの名付け親
「シチリアーナ」はレスピーギのオーケストラ曲としても知られています。イタリアの音楽学者キレゾッティが1891年に出版した楽譜「Da un Codice ‘Lauten-buch’ del Cinquecento」 にタイトル不明曲として掲載されています。
これを元にレスピーギが「シチリアーナ」と名付けオーケストラ曲として発表しました。「リュートのための古風な舞曲とアリア」ではイタリアーナとの組み合わせが良い感じです。「シチリアーナ」この素敵なタイトルもこの曲の魅力を高めてくれました。レスピーギさん、ありがとう!
失われたオリジナル楽譜
キレゾッティはリュートのタブラチュア譜をギターの五線譜に書き換えて出版しました。リュートで弾くにはそれをまたタブラチュア譜に戻す作業が必要となります。リュート弾きとしてはできればリュートのオリジナル楽譜も見てみたのですが、キレゾッティが亡くなった後、そのオリジナル楽譜は行方不明になってしまいました。
どんな楽譜だったのでしょうか
行方不明になったオリジナルの楽譜は、1590年にドイツのバイエルンで収集されたリュート曲集で、ニュルンベルクの商人、シャイル家が所蔵していたということまではわかっています。
そのオリジナルの楽譜はリュート用のタブラチュアで書かれていました。キレゾッティの親族も五線譜なら大事な音楽、財産と思ったかもしれません。しかし、記号のようなタブラチュアは価値のないものと判断したのかもしれませんね。そのうち、どこからか出てくることを期待しましょう。
動画の「シチリアーナ」では、まずは原曲通りシンプルに弾いています。繰り返しは櫻田のアレンジです。メロディーと低音はそのままで、中の声部が動いている編曲となります。
シチリアーナはこちらのCDに収録されています。
リュートに興味を持ってくれる方が増えると嬉しいですね。