あめのひはすきよ、と母はいった

雨の日は好きよ、
と母は言った
家の中にいると守られている感じがするでしょう

わたしも雨の日が好きよ
レインコートを着て、レインブーツを履いて、フードもちゃんとかぶって歩くと
傘なんかなくても
何処でも行けると思うもの

雨の日に、好きな人がコーヒーを淹れてくれた。
その人も、わたしのことが好きで
でも私たちは恋人じゃなかった。

リビングのソファに座るわたし。
はい、どうぞ
とテーブルに置かれるコーヒー
わたしの隣に座るあの人。

2人で庭とその先の森の緑を眺めていた。
時計と雨の音だけが聞こえる。

雨の日は緑が冴えることについて考えていた。
それから卒業のこと。
と、隣に座るひとのこと。

わたし、きみのことが好きだから
コーヒーをブラックで飲めるようになったの。

コーヒーを淹れるたびに思い出す
きみの横顔とカップを持つ手、雨の音。
それから庭の緑色。

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