日本で男に生まれるということについて

細身で背の高い、優しい顔立ちの男の子がいた。
彼は私の前職の後輩で同じ部署に2年あとから配属された。
髪もさらさらでワックスなんてつけていなさそうな。
たまに香るのは洗剤だけでなく、きっと香水。
いい匂い。って言ったら、お気に入りなんです。学生の頃からつけてて。
って屈託なく笑う、とてもいい子。

そんな彼は、上司からあまり気に入られていなかった。
建築業界ではそんな女々しい男は評価されないのだ。
あんな宇宙人みたいなヤツ。とか、すぐ潰れるよ。とか、弱そうな男。
そうやって言われていたのを知っている。
辞めてから彼に聞いてみた。
あのおじさんたち、どうしてる?君のこと、弱そうってずっと言ってた人たち。と。
ああ、まだいますよ。でもボク、もともと運動部だしああいうの気にならないんです。
なんていうか、実際打たれ強い方だし。たまたま見た目がひょろいだけで
結構タフなんですよ。ご飯もたくさん食べるし。
と返された。

私は自分がこの国で女に生まれて、便利も不便も味わったと思っているし
きっとこれからも多くのそういう場面に出会うだろう。
ただ、例えば彼の場合、本人が気にしていないというだけで
男のくせに細い、弱そう、香水なんかつけて、といったネガティブな印象をもたれたりすることが女である私より多いのかもしれない、と思った。

女のくせに、の裏側に、男のくせに、が存在することは忘れないようにしたいと思っていたけれど
意外ときっとまわりに多い。

ここ最近、多様な生き方が認められるような社会になってきた。
それでも尚、男は働いてたくさん稼いで強くあってこそ。を要求する場面は多い気がする。
色眼鏡で物事を見ないようにしたい。

自分は自分。

そして彼は彼なのだ。

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