3/11 くもり。なんねんもまえのこと。

大きな地震のあった日、
わたしは学生で
当時付き合っていた大学の先輩と一緒にいた。
(付き合うことの定義と言われると困るくらい、手すら繋いでもいなかったけれど)

春休みに旅行しよう
そんな話を春日部のカフェで、
駅と大通りに挟まれたガラス張りの細長いカフェ
多分アイスコーヒーとかを飲みながら話していたところに
揺れた

ちょっと混乱するくらいに揺れた

それが未曾有の大地震で、ある地域では未曾有の大津波を引き起こし
多くの命を奪った、出来事だった。

全ての電車が止まり、地盤沈下を起こし、水道管が破裂し、至る所で火事が起きた。

春日部なんて、
どこにも行けない場所にいたものだから
私たちはそのあと5時間も歩いた。
国道沿い、を、ずっと。
歩道のないところは猛スピードで誰かのところに向かう車の横を
黒い服を着ていたわたしが先頭を、
白いリュックを持っていた、彼氏が後ろを歩いた。

彼氏は私よりも背が小さくて
しろさんと呼んでいた。
まわりのひとも、しろぽん、と呼んでいた。

歩道が切れて、
平らなところに飛び移るとき
先輩が先に行った。
振り返って、両手を広げて
おいでー
と言った。

なんだか妙な心持ちがして
そういうのはいいです。
とあっさり断ってしまった。
国が未曾有の大災害に見舞われている端っこで。

しばらく経って、その人とは別れた。
けれど、その時の地震によって流されてしまった中学校の再建に、少しだけ協力した。
一年くらい。

だから、その地震としろさんは一緒になって記憶の引き出しに仕舞われている。

だから、わたしはきっと毎年しろさんのことを、思い出すことになるのだろう。

手すら繋いでいなかったけれど。

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