たとえそれが見えなくても

NHKスペシャル、サカナクションの山口一郎さんのドキュメンタリーを観た。
うつ病と闘う姿を生々しく記録した映像は、ファンであればあるほど平常心で向き合うことは難しかったと思う。
私はあまりサカナクションの歌を聴いたことがないのだが、人気のあるバンドということは知っていた。
うつ病は誰にでも発症する可能性のある心の病気で、心の強さ弱さに関係なく、突然やってくる。
原因がハッキリしている人もそうでない人もいるし、目視できる傷と違って、何をもって完治と言えるのかもわからない。
わからないものは、どうしても怖い。
だから負のイメージが独り歩きする。
そういうものは偏見に繋がりやすい。
山口さんのように多くの人から愛され信頼されているひとがうつ病を公表したことは、とても大きな意味のあることだ。
影響力の大きいひとにこそ、沢山の人に知らない世界を教えてほしいと思う。
好きなひとのことは良いこともそうでないことも何でも知りたいファン心理というものがある。
きっと今回うつ病に対して関心を持った人も少なくないだろう。
まずは少しでも触れて、知ること。
知らなかった世界がいつのまにか自分を作る世界の一部になる。
うつ病に限った話ではない。
すべてにおいて、知ることから始まる。
偏見を持つのは、知らなくて怖いからだ。
自分の身を守るために拒否し、突き放し、差別する。
想像力があれば、誰かに起きていることは全部他人事じゃないのだと、わかるだろうに。

私の周りにも心の病に苦しんだ人や現在進行形で苦しんでいる人が何人もいる。
私も思春期の頃に心が誤作動を起こしたことがあり、その正体が長年わからず怖かった。
14年しか生きていない私の視野は狭過ぎて、絶対に誰にもわかってもらえないだろうとか、この不安な気持ちは伝わらないだろうと思っていたけど、決してそんなことはなかった。
必ず、理解してくれる人はいる。
自分には理解者はいないと思っている人は、信じられないかもしれないけど、まだ出会っていないだけだと思う。この世は案外広くて、頼もしい人は沢山いる。

山口さんも、過去の自分に戻ろうとせず新しい自分でうつ病と一緒に生きていく、というようなことを仰っていて、ハッとした。
私も悩んだ挙句に出した結論がまさにこれだった。辛いなら辛いで、辛さを抱えて生きていけばいいやと。周りに変な目で見られてもいい。私が誰かを変な目で見なければそれでいいんだ。

連休最終日はのんびりしながら、サカナクションの歌を聴いてみよう。

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