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ジブリパークの楼門

遊廓「旭廓」は風紀上の問題などから、1923(大正12)年に現在の愛知県名古屋市中区大須から中村区大門地区に移転し「中村遊郭」となり、妓楼(ぎろう)は最盛期に81軒を数えた。中村遊郭の妓楼は、ロの字やコの字形の建物の中央に日本庭園を配置したものが多かった。べんがら塗りの赤い塀と中国風の門に特徴がある木造2階建ての「稲本楼」(中村区日吉町)も、1923年に開業した。第二次世界大戦後にGHQが発した覚書を受け、1946年に日本政府が公娼制度を廃止する前年、中村遊郭は「名楽園」と改称。売春防止法の施行(1957(昭和32)年4月1日)における猶予期間の経過(1958年4月1日)以降は、旅館「中京温泉 稲本」を経て「料亭 稲本」となった。料亭は2009年に閉店、同年11月から高齢者向けデイサービス施設「べんがら亭」が事業を開始した。建物は、1993(平成5年)10月12日名古屋市の都市景観重要建築物に指定されたが、所有者は維持が困難として建物の取り壊しを決めた。その意向を受けた名古屋市は、民間事業者に聞き取り調査を行うなどして活用を模索したが実現しなかった。べんがら亭は中村区牛田通へ移転し、建物は2018(平成30)年に取り壊され、10月3日に重要建築物の指定も解除された。

建物の解体時、中国風の屋根とベンガラ色の壁が映画「千と千尋の神隠し」に登場する「油屋」をほうふつさせることから、スタジオジブリは楼門を譲り受けた。2020年6月、スタジオジブリは解体保管していた楼門を愛知県に寄付。長久手市にあるジブリパークの魔女の谷エリアで仮組立を行った後、2005年の愛・地球博に合わせて設置されたグローバル・ループの下で保管していた。愛知県は、「どんどこ森」へつながる「林床花園(りんしょうかえん)」の入口に「稲楼門広場(とうろうもんひろば)」を整備。2022年9月に、稲本楼の門の復原を完了した。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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