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アイスキューブ?

太陽系外から地球に届く、高エネルギーニュートリノの発生源の一つが、4700万光年離れた渦巻銀河「M77」であることが分かった。南極での国際共同実験「アイスキューブ」のチームが2022年11月3日、米科学誌サイエンスに発表した。恒常的にニュートリノを放出している天体が分かったのは初めてという。ニュートリノは、あらゆる物質をすり抜ける幽霊のような素粒子。太陽の内部や超新星爆発などでつくられるが、巨大なブラックホールから噴き出すガス「ジェット」などを起源とするニュートリノには、100万倍から100億倍のエネルギーがあるといわれる。

2021年3月10日には、英科学誌ネイチャーに「グラショー共鳴」についての論文が掲載された。千葉大学などの国際研究チームは、南極の氷床に深い穴を掘って光センサーを埋めた観測施設アイスキューブで2016年12月、高エネルギーの反ニュートリノに由来するとみられるデータを観測。反ニュートリノが、氷に含まれる電子とぶつかり、Wボソンと呼ばれる素粒子ができる兆候があった。この反応は、米国の物理学者シェルドン・グラショー博士が1960年に予言したグラショー共鳴。約60年にわたって観測されず、「素粒子物理学の宿題」といわれていた。飛来したのは、電気的な性質が逆さまなニュートリノの反物質で、超新星爆発で生まれるニュートリノの10億倍のエネルギーだった。

アイスキューブ実験は、南極点の氷床1500から2500メートルの深さに、5160個の直径約33センチの球状をした光検出器を埋めて、宇宙から飛来する高エネルギーニュートリノを観測する12か国共同プロジェクト(2018年現在)。観測施設は、アムンゼン・スコット基地に5年以上かけて建設され、2010年12月に完成。2011年4月から、すべての検出器を用いた観測が始まった。2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊教授が考案したことで有名なニュートリノ観測装置「カミオカンデ」は、ニュートリノが地下に蓄えられた水と相互作用することによって放射する光「チェレンコフ放射」を光電子増倍管を用いて検出。アイスキューブでは、スーパーカミオカンデの2万倍の体積、1立方キロメートルの南極の氷を用いてニュートリノを検出する。2022年12月からは、千葉大学チームによって開発された「D-Egg」検出器を採用したアップグレードが始まる。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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