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葛城亭出武のライブ飯〜腹減り男に挽歌はいらない〜

アマチュア芸人ファン諸氏におかれてはこのような悩みを持ったことはないだろうか?

「ライブ前後にどこでご飯を食べればいいの?」
「ライブ会場周りのご飯屋さんがわからない…」
「この人数で入れる店ってどこ??」

中野twlや方南会館、シアターミネルヴァなどライブ会場は数あれど、案外近くのご飯屋さんは知らないのではないだろうか?

そんなご飯難民を救うべく、劇場周りのうまい飯屋をリサーチ、紹介することが本記事の使命である。

「キッチン男の晩ごはん」

新宿から快速で7分。

芸人の住処である中野と高円寺を電車から眺め、たどり着く先は阿佐ヶ谷。

阿佐ヶ谷駅の南口を出ると、そこには今も賑わうアーケード、そしてその先にひっそりと佇むのが阿佐ヶ谷アートスペースプロットである。 

今回ご紹介するお店は、そんな南口ではなく、所狭しと居酒屋達が細い路地に肩を並べる北口だ。

「キッチン男の晩ごはん」

酒飲み達とすれ違いながら、レトロ漂う路地を進むと、そこにデカデカと看板が掲げられたその店はあった。

外にある券売機には700〜1500円の丼や定食。

出武は「スタミナ野郎丼(ミックスみそ)」(930円)のボタンに手を伸ばし、食券を持って中に入る。

店内はポップの中に昭和レトロが垣間見えるような明るい雰囲気。

店に入ってすぐ右手にはテーブル席、左手にはカウンター。合わせてざっと30席ほどはある。

友人同士はもちろんだが、カウンターにて一人飯をしても浮くことはない。学生芸人はもれなく友達が少ないのでこれはありがたい。

セルフサービスのお水を持ってカウンターに座った出武は店員さんに食券を渡す。

「大盛りにしますか?にんにくはいれますか?」

おっと、二郎に来ていたようだ。失礼。

次回こそは男の晩ごはんに行こうと思う。

いやいや、違うぞ。ここは「男の晩ごはん」に間違いない。

そう、「男の晩ごはん」ではスタミナ野郎丼のご飯が無料で大盛りにできるうえに、にんにくを無料で追加することもできる。ファンタスティックである。アンビリーバブルである。

そうこうしているとまず味噌汁が出てきた。

湯気がもくもくと立ち込める味噌汁にはネギとわかめが。

続いて、野郎丼が着丼。

カツが器からはみ出し、敷き詰められた肉でその下にあるであろうご飯の存在は目視での確認は不可能である。

そしてそんな肉たちの上に、威風堂々かつ可愛らしく温泉卵が鎮座する。

まさに男の晩ごはん。

出武は颯爽とその丼に箸を入れた。

一口目、肉と白米を口に運ぶ。

えも言われぬ幸福感と満足感、そして背徳感。その味噌の味の濃さと一口サイズからやや大きめの肉のかみごたえ。気づけば二口、三口と箸は進む。

濃いめの味つけは、肉の下に確かに存在する白米とこれ以上にないくらい相性がいい。

また、カツの下敷きになり、脇役感を隠しきれていなかったキャベツが、濃ゆい味付けによって表舞台に登場する。気づけばキャベツのその姿はもうない。短命であった。

さあ、カツにも焦点を当てる時が来た。

丼の際から身を半分外に出し、達観するかのようなカツ。

出武は箸先をカツにむけ、一口、齧り付く。

なんだおよ前、あつあつじゃん。

達観して、興味なさそうな顔してたくせに、あつあつじゃん。

どうやらカツは出武に興味がなかったわけではなく、出武があまりにも肉と白米に熱を注いでいたために嫉妬していたようだ。可愛いやつめ。

もう一口食ってやる。

何口食っても熱々で、サクサク。衣がサクサク。基本的に着ているものは脱がせたい性分の出武だが、今回ばかりは着させたままいただく。

カツを頬張り、肉と白米にテンポよく食らいついていた出武であったが、とうとう濃ゆい味をきつく感じはじめた。

さあどうする。辛い思いをすればそれはもはや食事ではなく苦行。

その時、温泉卵と目があった。

出武は温泉卵の君を割った。

そう、こうすることでまろやかさを出すのだ。まろやかになれば濃いめの味はきつくない。いや、それどころか卵と白米、そして味噌で炒められた肉との三重奏。そう、きついどころか至福。テンポは落ちるどころか加速していった。

最後に味噌汁を飲みきる。

味噌汁を飲むことで興奮状態にあった食欲も落ち着きを取り戻す。母なる味噌汁。安心感。リラックス。


ごちそうさまでした。

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