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RISE/SING LIKE TALKING

「はじめて買ったCD」と云うお題で、テキストを募っているとの事で筆を執る事にした。

僕が小学生の頃に音楽を聴く媒体として側にあったのは、(数年前に話のネタに上がっていたが、確かブーム再燃と云うトピックだったと記憶している)『カセットテープ』であった。

今となっては、技術の進歩やインフラの充実に伴い、YouTubeやApple Music、Spotify等のサブスクリプションにて、各々が好みの音を拾い上げる事が容易に出来る便利な時代になったものだ、としみじみ思うが、僕が過ごした少年期にその様なプラットフォームは皆無であり、且つ、兄弟のいない一人っ子、両親も特段音楽に関心の無い環境にいた自分にとっては、(最早死語と化して久しいが)FMラジオから流れてくる洋邦問わずの音楽を「エアチェック」し、CMやディスクジョッキーのトークに被らない様にデッキのRECボタンを如何にタイミング良く押す事に日々心血を注いでいた(このスキルが後年に「マリオパーティー」で役に立つ事になろうとは当時の自分は知る由も無かったが)。

今となってはTVと云う媒体は、情報を発信する上では、インターネットの速報性に引けを取り、コンテンツ制作の能力にも欠け、広告代理店としても『旨味の無い』プラットフォームに堕した、と言い切ってしまうと各所から非難の声が飛んで来るかも知れないが、少なくとも僕の少年期の情報収集の主役は紛れもなくTVであった。

90年代に隆盛を誇ったセールス手法として「タイアップ」が挙げられる。現代を遥かに凌ぐ程その影響力は凄まじく、フジテレビの所謂『月9』の主題歌に起用されようものなら、ミリオンセールスは約束される程に社会への訴求力が高い手法であった(現に僕は、ドラマ『東京ラブストーリー』で起用されていた、小田和正さんの『ラブ・ストーリーは突然に』←意外とカップリング曲だった事を知らない人は多い からオフコースに入っていった訳だが)。

ラジオが先か、TVが先か、時系列があやふやな所はあるが、当時火曜9時に放送されていた「なるほどザ・ワールド」という、旭化成一社提供のクイズ番組をボンヤリと観ていた時に、チューハイのCMで起用されていたこの曲に大変なインパクトを受け、即日になけなしの有り金を財布に突っ込んでCDショップに走った記憶が未だに焼き付いている。


2021年時点に於いても、彼らの曲は現代でも違和感無く受け入れられる普遍性を持っていると言え、当時の売り上げは(セールスが楽曲の質を担保しているとは一切思わないが)お世辞にも芳しいものでは無かった事から、『早過ぎたアーティスト』と勝手に位置付けている次第だ。かれこれ40年生きて来た中で、SING LIKE TALKINGの曲はおろか、名前を知っている人に会った事は殆ど記憶にない。

自分が興味を持ったアーティストのバックボーンを掘り下げる、という事を現在進行形で余念なくこなしているつもりではあるが、1992年時点ではその様な頭を持っている筈もなく、彼らの根底にあるAORやSOUL、FUNKといったジャンルに身を投じて行ったのはその後の話。

余談だが、2枚目に買ったCDは、安全地帯の『あの頃へ』確か真田広之さんが出演していた月桂冠のCMに起用されていたと記憶している…何かとその頃からアルコールとの親和性が高かったマセガキだった(笑)

周りが(僕も通り一遍は聴いていたが)所謂『小室ファミリー』界隈やB'z、チャゲアスに視線が向いていた中で、そら話が合う訳がないわな、と今では笑って述懐出来るが、今思えば、上述した『アーティストのバックボーンの掘り下げ』の切っ掛けを与えてくれたのは、他ならぬSING LIKE TALKINGだったのかも知れない。

(因みに、この『RISE』と云う曲は、Cheryl Lynnの『Got to be real』を下敷きに、SLTとドリカムで各々楽曲を製作しよう、というあるラジオの企画にて作られた曲。ドリカムが拵えたのはかの名曲『決戦は金曜日』よくよく聴いてみると、ベースラインに重なる所が散見される)


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