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父親ってなんだ。


とても厳格な人だった。
遊びのない厳しい人で。

短気で、白か黒かモノサシがはっきりした人だった。そのせいで家族は顔色をうかがう毎日で、いつの間にか父の前とそれ以外の自分は違う人間になっていた。

作っていた。知らず知らずのうちに父が嫌がらない子供を演じるようになっていた。

それは、父以外の家族とは共有していて、皆同じだと気付いていた。目を瞑っていた。家以外で自由にできるのであれば家では我慢しようとしていた。

そして、歳を重なるにつれ、偏屈で頑固な父を変えることはできないからと諦めるようになっていた。見ないよう、考えないようにして、上っ面の笑顔で誤魔化していた。

そして高校卒業を境に、父の正面で話す時間は減っていった。今思えばその頃から父の存在を見ないようにしていたのかもしれない。

これまで抑圧され我慢してきたこともあり、離れて暮らすのがとても居心地が良かった。24時間本当の自分で過ごしたことがなかったから。初めて本当の自分が動き出した。


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