The Requiem

人はなぜ葬式をするのか。



2020.6.19 故 山崎英明 告別式。




葬式とは、人の死を弔う祭儀のことだ。弔うとは、故人の死を悼み、冥福を祈ることだ。ではなぜ悼み祈るのか。



それは故人への敬意ではないか。



故人の功績や人間性に敬意を表し、天国へ送り出す門出として葬式を行うのだと考える。




ではなぜ故人に敬意を表すのだろうか。

例えば、大量殺人鬼にも葬式はある。こんな犯罪者のどこに敬意を覚えるのか。




死そのものへの敬意ではないだろうか。
敬意というより畏怖に近いかもしれない。


人間は基本的に未知のものに恐怖する。未知の力、未知の種族、未知の未来。未だ知らない、つまりは自分が持ってないものを怖がるのだ。昔の人間は災害を神の祟りと恐れたが、科学が進歩した現在では「またか。」くらいのものだ。同じ地震であっても恐怖の度合いは桁違いだろう。



死を未だ知らない人間は死が怖い。だから儀式を行うのだ。


告別式の最中ここまで考えていた。自分でなんとなく納得した答えが出たつもりだった。



お別れの時間がやってきた。


棺桶に花や手紙など入れていく。



祖父の顔を見られるのはこれが本当に最後だ。



ここから出棺されて火葬場に行けばあとは骨になっておしまい。



ああ、だから告別式なのか。



そんなことを考えていたときだった。



父が声を出して泣いていた。


記憶にある限り、これが初めてだ。



「親父、死んだんやなあ」


その一言で理解した。



人が葬式を行うのは


生きている人が故人の死を認識して


正しく別れを告げるためだ。



人が死ぬとはどういうことかを、静かに、重く感情的かつ理性的に訴えるのだ。



ここは、永遠の別れを告げる場なのだ。


だからこんなにも哀しい気持ちになるのだ。


正しく別れを告げるならば、何を言うべきだろう。



霊柩車に載せられた棺桶に向かって祈った。




『今までありがとう。さようなら』


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