人類は40年以内に種として縮小し始めるかもしれない。

フィンランドは以前、出生率と女性の労働参加率の高さで有名だった。日本や韓国から視察団がきていた。状況は一変し、2023年の合計特殊出生率は1.26まで下がった。要因の4分の3は子どもを1人も産まないか、初産の遅い女性の増加だ。この現象はほかの国でも起きている。

人類の歴史のなかで未曽有の奇妙な時代を迎えている。概して言えば、歴史の大半で女性は2~3人の子どもを産んできた。ところが教育や相続が重要になると、子どもの数を制限するようになる。そしてついに子どもを全く産まない人が増えてきた。

最も多くの赤ちゃんが生まれたのは16年ごろだろう。人類は40年以内にも種として縮小し始めるかもしれない。子どもを持たなくなった理由はいくつかある。

いまの若者は教育水準が高く、キャリアを優先する。一定の実績を積み上げるには時間がかかる。気づいたときにはもう35歳や40歳。パートナーの不在や生殖能力の低下などにより子どもを持てない現実に直面する。

あるフランス人のジャーナリストは子どもを「ケーキのうえのサクランボ」と表現した。教育やキャリアを築いた上で、最後にくるのが子どもだ。昔は子どもが先だった。

親になるためのハードルを若者が自分で高めている面もある。「親になる準備ができていない」という言葉をよく聞く。例えば、日本でもほとんどの人は住居に独立した子ども部屋があるべきだと思うだろう。世界の多くの地域で住宅事情が厳しいなか、完璧を求めすぎている。

こうした価値観や社会構造の変化に伝統的な家族政策では十分に通用しない。フィンランドは育児休業や託児所、住宅などの手厚い子育て支援で成功したと一時は言われた。しかしこうした政策は2人目、3人目の子どもを産む後押しになるものの、1人目を促す効果は弱い。

エストニアやドイツも同じような支援策で一時的に効果が上がったが、すでに薄れた。育休をさらに延ばすなど従来の政策を拡充しても大きな効果は期待できない。

子づくりを含めた人生設計を若者たちに正しく伝えるべきだ。家族を持ちたい場合の計画の立て方を、教育やキャリアプランも含めて教える必要がある。

親になることが素晴らしいと若者に思わせる必要もある。若者の多くは親になると人生はつまらなくなり、もうおしまいだと考えている。

若者と親世代を招いて一緒に議論したことがある。父親の一人が、息子の生まれたときが人生で一番幸せな瞬間で、親であることがとても楽しいと話した。その場にいた21歳の女性は、親になる喜びを聞いたのは生まれて初めてだと驚いていた。

親になることが素晴らしいことで、社会的ステータスだという認識が広がれば、状況は変わるかもしれない。若い女性は社会規範や期待に対してとても敏感だ。若い女性政治家にこうしたメッセージを発信してもらえたらいい。

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