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国立国会図書館へ「妖都鎮魂歌」を見に行った結果わかったこと

 妖都鎮魂歌を求めて

 気がつけば8月下旬ー。
 最近友人が絶版書物や昔の古い雑誌を読むという趣味に目覚め、
8月中に国会図書館へ行こうよと声をかけてくれた。

今ではプレミア価格の本も、永田町の【国会図書館】であれば
この国で出版された全ての本が集約しているし、誰でもそれを読むことができるというのだ。

私も前からひとつ気になっている事があったので検証がてら同行する事にした。
それは絶版となったジュヴナイル伝奇シリーズの漫画・妖都鎮魂歌には続きがあったのかどうか?という問題だ。

この作品についての詳しい事は東京魔人學園伝奇 - Wikipedia
各自検索すればわかるので、ここでは詳細を省略する。

とにかく2001年代、角川から2巻が発売し、未完で以下続刊となっているジュヴナイル伝奇の漫画があり、もしかしてそこには続きが…
コミックス未収録のお話が存在していたのではないか?という疑問を一度解決したかったのだ。

なぜそのような話になったかというと、
ずっと前にとある古参ファンがTwitterで「私は未収録の話を見た」と呟いていたからである。
当時の私は「そんなのがあるんだ」と思って流していたのだが、
せっかく国会図書館へ行くならこの目で真相を確かめたいと思ったのだ。


国会図書館のシステム

8月の国会図書館。
国会図書館といえば、ものはらし…
そういえば地下にあるものを目指して侵入したなぁという思い出。
(ゲームやってから来ると聖地にしか見えない。)

 国会図書館のシステムは近年目まぐるしく変わっていた。
コロナ禍での時もそうだし、とにかくデジタル化が急速に進んだ。

 筆者は9年ぐらい前の歴ヲタ全盛期に来たっきりだったのでカードを更新しようと思っていたら、「もうデータが残っていない」と言われたので一から作り直す事になった。
カード発行には時間がかかるので20分くらいはトータルでかかったと思う。連れだって来ている時は結構相手を待たせる感じになった。

ロッカーに荷物を預け、透明バッグに入れ替えいざ本館ゲートへ。
とりあえず雑誌を見たければ新館だ、というのですぐに移動。
平日昼間だというのに結構な人が来ている。

まずはパソコンに座ってデータの閲覧をするのだが、
先にも書いた通り、国会図書館もデジタル化が進んでいる。
以下の画像は家のパソコンから見た画面の画像だ。

家のパソコン画面。
同じような画面が国会図書館でも表示される。

右側にデジタルコレクションと書かれているものがある。
これは電子書籍化が済んでいて、データを自由に見ることができますよ…と言うに風に書いてある。
なお、家のパソコンでアクセスしても、画像は一切見ることはできない。
何故なら家で見れてしまうのなら、スクショは取り放題&拡散し放題だからだ。

その下に書いてあるように館内公開なので、現地に行って同じように検索すると、なんと画像を全部まるまる見る事ができた。
そして、印刷ページまで進んで、「これとこれを印刷したい」という風に画像で指定して、プリンター出力コーナーへ行くと…

出てきた。
連載当時のアオリ文の掲載された見開きがそのまま印刷できてしまった…。
なんて綺麗な骨董屋店主と異端審問官なんだ。
(※画像掲載まずかったら消します)

ちなみにコピー代は有料なのだが、
コンビニのネットプリントよりも安い値段でこれが手に入ってしまった…。
なんだこの高度なコンテンツプリントは…。


デジタル化してない雑誌の申請

今の話は既にデジタル化した雑誌に関しての話。
妖都鎮魂歌はファンタジーDXで連載されたものが途中でミステリーDXという雑誌に移籍して連載されたものだ。
今回お目当てであるミステリーDXはまだデジタル化はしていない。
(ちなみにまだデジタルに移行してない物も国会図書館には膨大に存在している。)

掲載された雑誌に続きは載っていたのか?を調べるには
まだデジタル化していないミステリーDXをまず蔵書から出してもらうしかない。
それも同じパソコンから申請する事ができる。
1回の申請で出してもらえるのは雑誌の場合10冊まで。
とりあえず2001年の分だけ申請し、書庫から出してもらうのに数十分時間がかかるというので、まず館内のレストランで食事などを済ませることにした。

いざミステリーDX

2001年の移籍後あたりから読み始める。
2001年にはどうやらドラマCD2巻が出たり外法帖発売の追い込み時期だったらしくミステリーDXでも大々的にジュヴナイル伝奇について特集を組んでいる。

2巻に収録されているのはミステリーDX(MD)の8月号まで。
包帯がぐるぐる巻きの女が出てきたところの話で終わっている。
直前の7月号はお休みだったようだ。
どうやら外法帖の開発で忙しく原作が追い付いてないような気配をなんとなく感じる。
最後に掲載された8月号のお終いをみると、
次号ミステリーDXは9月〇日発売!などと書かれていた。
なんだか次の号も掲載されていそうな雰囲気がある。

なんだかドキドキしながら書庫から出してもらったミステリーDXの次の号を開くのだが…
妖都鎮魂歌は載っていない。

「休載か」
そう思って巻末ページを見るも、「作者急病のため休載します」とかそういう一言も何もない。
そして10月号を見る。
11月号を見る。
12月号を見る。
…結果は同じだった。
妖都鎮魂歌は載っておらず、休載しますの文字もない。
同時に、真神新聞がコラムとして掲載されているが
「コミックスの2巻発売が決定しました」「外法帖開発してます」ぐらいの情報しか載っていない。

 一回だけコミック魔人劇画伝でも掲載されていた壬生君の拳武館時代と幼少期を笠井先生が描いた漫画があったが、
あれが再掲されている号があった。
何故突然それが掲載されているのか説明書きは特になく─おそらく
もうここしばらく何も載せていないけれど、
そろそろ再開を待ち望むファンのために関連するものとして
笠井先生の昔制作された漫画が代打で掲載されたのだろうと思う。

でも何も書かず急に雑誌に館長が出てきたので思わず天を仰いでしまい、
隣で雑誌を読んでいた友人が「おい、何があった?大丈夫か?」と心配して聞いてきてくれた。
(ありがとう、ちょっと推しが出てきちゃったんだ…)

一回2001年号をすべて返却し、
今度は2002年には何か情報が無いかどうかもう一度見てみる事にした。
国会図書館の番号表記も独特で申請する時1月号とかよく見ないと分からないので実際は肩がこる。
また30分くらい立って受け取って1月号から見始めた。

やはり「休載します」などの文は一切ない。

真神新聞だけが載っていて、外法帖のキャラクター紹介をしている。
攻略などの踏み込んだ話をせず、淡々とキャラクター紹介だけしているのがなんとも言えないシュールさを醸し出している。

ミステリーDXは、内訳をみると
妖怪退治をする陰陽師の話が複数本、ホラー映画のコミカライズ、ミステリードラマのコミカライズ、探偵小説のコミカライズなどを掲載している。
正直ゲームの攻略などを載せては雑誌の色味が違うのであまり詳しく突っ込んだ事は書かないのだろう。

それにしても胸から上の顔だけのイラストを1ページ3人くらい載せて説明書きだけを載せているだけというのがなんとも切ない。
突っ込んだ事も書けないし、連載されている筈のものが何故載っていないのかも説明がなく、
何かをつなぎとめるようにキャラクター紹介だけが載っている気すらする。

そして2002年外法のゲームが発売された後も、
特集ページが4ページほど組まれてはいるが漫画としてはすでに別会社のエニックスの方で取り上げられているし、ミステリーDXはゲーム雑誌でもないために、
広く浅く紹介するだけに留まっているところがなんとも痒い所に手が届かない感じがしてきて悲しい。

特集があるだけ有難いのかもしれない。
せっかくのゲーム画面の掲載も印刷が単色印刷なので少し見づらいのも無情だ。本来なら、巻頭カラーで載せられていたかもしれないものを休載中の作品の関連作とあって、この単色印刷の扱いになっているのかもしれない。
本を閉じた時に外法のCDの宣伝が載っている号もあるにはあったが…。
やはり妖都鎮魂歌ではないんだよな…という思いがしない訳でもなかった。

そして、2002年4月号。
とうとう最後の時を迎える。
「外法発売から一か月半、読者の攻略は進んでいるだろうか?」という問いかけと共に、
妖都鎮魂歌の主役の先祖である壬生霜葉の好感度の上げ方という特集記事が組まれる。

出身地でこれを選ぶといいという壬生特化版。
最初から壬生だけをロックオンするように指南されている。
陰ディスク6話「霜葉絶対仲間にするマン」ができそう。
つよい。
※まずかったら消しますごめんなさい

この壬生繋がりの特集記事を最後に、
ミステリーDXから妖都鎮魂歌は一切存在を消し、
次の号から2ページの真神新聞すら載る事はなくなってしまった。


ガ〇ネタ?

最初に書いたように、このような検証を行った背景には
「掲載されていた当時の雑誌を私は追いかけていた。だから続きを見た。」という古参ファンがいたので、
ならば…と事実を確かめようと思った次第なのだが、結果そのようなものは無い事が今回判明した。

古参ファンの記憶もそろそろ20年経つ。

これから先、もっと記憶はよりおぼろげになっていく事だろう。
今度から「私当時、〇〇見ましたよ」という発言にも、これから沼入りする面々は少し一歩引いた姿勢でいる必要があるように思う。

確かに記憶は美しい。

「昔はよかった、その当時を知っている私はすごい」
…もしこういった願望が裏に見え隠れした発言を目にした際は、
それを全部信じてしまうと痛い事が起きる可能性もあるという事を
これから沼入りする面々へ一回ぐらい警鐘を鳴らしておきたいと思う。
たとえ当時の様子など体感で知る事はできなくても、
幸い国会図書館には電撃プレイステーションも、ザ・プレイステーションも全部所蔵されている。
今手に入らないものも皆等しく平等に手に入るようになったのだ。

蔵書を出してもらえばそこで一日中読めるし、
たとえ当時の様子を知らなくてもちゃんとどういうものが載っているかは
その年に出された全号を通年で見て把握することができる。

何かわからない事があったら国会図書館へ行け、そんな感じになると思う。知らなかったら書けない&手元になかったから書けない…そんな二次創作もこれまではあったと思うが、
そういった不自由がなくなるなら、
こういった公共施設を活用するのは大いにアリだと思う。

(なお、国会図書館には関西館というのもあって取り寄せもできるらしい)


まとめ

今回の検証をして、とても不思議な気持ちになった。

当時の編集部も、なんとか妖都鎮魂歌の連載再開を待ち望みながらギリギリのやり繰りをしている感じがすごく見て取れたし、
それが結局叶わないまま真神新聞まで終わっていく様子もなんだか見ていて切なくなってしまった。
当時の雑誌でしか知り得ない空気というのが確かにあって、それを離れた時間から目撃したような気持になった。

特に、次号掲載されているのかどうなのかわからないまま当時この雑誌を買っていた人はどう思っていたのか…?
その当時の心境の部分はなんだか非常に気になった。
(ハ〇ターハ〇ターは休載しますと毎号ジャンプに書いてあるのに…)

 おそらくこの作品は権利問題の関係で電子書籍化もしないだろうと思う。
原作者の監督は今、別の会社で別のゲームを日々作っている。
おそらく妖都鎮魂歌には権利問題の関係で今後も手はつけられないのではないかと思う。
この作品は中古本でしか手に入らない幻の本になっていくのだ。

でもたとえこの先、この作品が中古でも手に入らなくなっても、
一応この国の中枢にはこれからもアーカイブとして残されていくんだろうなと思う。

当時同じ雑誌に掲載されていた漫画たちも、今の漫画と比べて隔世の感がある。
(20年経っているのだから仕方がないとは思うが…)
それを感じることで、一つの作品の終わりにもう一度立ち会ったような気がした。

国会図書館へ行って思ったのは、
完全に凍結した過去といえども、この作品を終わらせまいと延命治療(特集掲載)が行われていた事、
当時の人の熱意と、応援する気持ちと、

それが叶わずフェードアウトしていった事、やるせなさ、無力感、
何故この作品が未完なのか?
2巻の向こう側にもう一歩別の角度から当てられた視点を得られたことだった。
これは大きな収穫だだった。

ここまでくると、もう終わった作品なんだろうけども、終わったとは言い切れない…まだ生きている感じがしてくるのはすごく不思議だ。

折しもお盆があけにここへ行ったことで、
心の中で作品の迎え火と送り火を両方行ったような気持になった。
現世とは離れた所にいるがいつでも戻って来てくれるようなそんな感覚。
ここ(国会図書館)へ来ればいつでもそんな思いに還れるのかと思うと寂しいけれど嬉しくもなった。
当時の空気感に思いを馳せながら、
また一歩このシリーズはいいなと思った。

(終)
乱筆乱文失礼しました。
もぎ

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