距離感とモラル

 深夜お笑いラジオ好きの全員の関心を集めたと言っても過言ではない、4/30放送の「ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン」。
 謝罪があるとはいえ、それなりに普段通りのラジオをするのかな?とも思っていましたが、耳に入ってきたのは想像以上に憔悴した岡村さんの声。30分で3曲流すなど明らかに異常で、この調子で2時間続けるの…と思ったところに飛び込んできた矢部氏。そこからの公開説教の内容は皆さんご存知の通りですが、あのかつてない空気の中でのスポンサーコーナーが半端ない緊張と緩和で爆発していたことは記しておきたい。あのような場面で笑いを生んで番組を支えられるのは投稿者冥利に尽きるだろうなぁと思いました。

 「今年の岡-1も楽しみだな」ぐらいのライトリスナーである僕でさえ心に刺さった矢部さんの言葉。しかし、今回の件で「過激な発言は控えよう」となってしまうのは、リスナーとしてあまりに寂しい。今回の問題や説教を深夜ラジオ全体にフィードバックして、今回のような事態がもう起きないように、内容をしっかり吟味する必要があるなと思いました。以下、あくまでも自分がこれからラジオに関わるうえでの指針として、今回の問題を振り返ろうと思います。

 今回の発言、僕の解釈としては「本心としてはやりたくないが、お金に困り風俗業に携わる女性が増えることを喜ぶ」という気持ちが発言に出てしまったことが炎上の原因だったと考えます。この場面で岡村さんが言った「絶対おもしろいことがあるんですよ」という言葉は、どう解釈しても擁護できないなと僕は思います。これが「コロナが明けて風俗に行くのが楽しみ」という個人的な内容だったらここまで炎上してないのではないか。「ご時世」とかいう言葉で片付けられるかもしれないけど、これが矢部さんの言う「モラル」ではないでしょうか。
 こういったモラルは発言者の立場や社会状況で変化していくから難しい。特に、「リスナーとの共犯関係」と言われるラジオは、客観的な視点を忘れて自由な発言が飛びがちなんだと思います。けれど、価値観を更新していくことで、モラルに反さないけれど過激な発言ができるような空間であってほしい。ラジオは。
 価値観をアップデートするのをやめて、モラルに反さないように「過激なことを言わないように、コンプラをとことん守った内容にしよう」というのは逃げだと思うし、そうなってほしくないです。

 そして、矢部さんの説教で出た「今回の件はリスナーにもスタッフにも責任がある」という言葉。ここから、「自分が投稿したメールが原因で炎上した」と考えているハガキ職人さんのツイートもちらほら見かけましたが、そうは思ってほしくないなぁと思ってしまいます。パーソナリティやスタッフが作ったコーナーで選んだ投稿、その責任は投稿者にはないと思います。ハガキ職人は自由に面白い投稿をする人であってほしい。
 なら、リスナーの責任とは?番組の内容に直接物申せるはずもない、リスナーに出来ることは?となると、パーソナリティーの発言がモラルに反していないかを見る、客観的な視点を持つことが大事なのではないでしょうか。
 盲目的な依存は「ラジオのノリ」として良い方に働くこともあると思いますが、ふと客観的に見て、あまりにも"危なそうな"発言がないかリスナーがチェックできれば。それが続きそうなら、メールとかで指摘できれば。それがリスナーに求められた甘えず逃げずに向き合うことだと思います。

 こういう内容は善悪ハッキリしないし、この記事も書いているうちに「モラル」という抽象的な言葉に逃げてしまった気がするんですが、今回はこのあたりで。
 ギリギリ叱ってくれる人が相方1人だけいたというところに、お笑いコンビのバランスの良さと、自分の生まれる前から続く番組の凄さを感じました。99annはこんなことがキッカケで終わって欲しくないものです。

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