憧れ夢見てたタマネギの下で

※以下、本文中にback number「NO MAGIC TOUR 2019」の演奏曲に関する記載があります。ネタバレ回避したい方はご注意ください。

 2019年7月26日、僕は日本武道館にいた。ここでバンドのライブを見るのは初めて。どうしても武道館で見たくて、大学の授業を決める時にもこのライブに行けるように履修を組んで、テストを受けた後に新幹線で直行して、武道館にいた。
 初めて好きになったバンド。初めて買ったアルバムについてきた「初武道館ワンマン」のDVDを何回も見ていた。あれから色んな場所で、色んなバンドのライブを見てきたけれど、結果としてこのバンドで、初めての日本武道館ライブを経験することに運命的なものも感じていた。

 そこから遡ること3年、2015年7月26日。自分にとって、とても大事な日。なおかつ、自分の進む道が変わるキッカケになっている、かもしれない日。
 その日は、初めてラジオ番組でメールが読まれた日。とにかく嬉しくて、ソワソワして、眠れなかったのを今でも鮮明に思い出せる。その経験が特別過ぎて、夢中でメールを送り続けるようになったことも。

 そんな自分の初めて好きになったバンド、初めてのメールを読んでくれた人、そして初めて武道館で見るライブ。
 とにかく楽しみだった。そして、現に楽しかった。アップテンポの曲で盛り上がり、バラードでは美しい歌に酔いしれた。いつも通り、凄く良いライブだと感じていた、あくまでもツアーの中の1本のライブとして。

 しかし、やはりと言うか、武道館のライブはただ「良い」ライブでは終わらなかった。
 "たとえアイドルと付き合えなくたって 外車に乗れなくたって 君がここにいるなら 幸福な人生だろう"(「日曜日」)
 そんな日常の幸せを歌った後、ボーカルの依与吏さんが言う。「幸せで恵まれてて、自分たちを好きになる理由をいっぱいもらってるのに、嫌いになる理由が1個でもあるとダメなんだよ。」
 そう言って歌い始めたのが「電車の窓から」。
"あの日に電車を見ながら 憧れ夢に見てたような 場所までもうすぐなのに"
"あの頃から欲しくて欲しくて やっと手にした切符だって 何の迷いも 僕にはないはずなのに"
"なぜだろう涙が出るのは なぜだろう"
 そんな歌詞の1つ1つが、今の自分の現状に寄り添っていくようだった。
 初めてメールが読まれた日から3年、順風に進んでいく人生、少しずつ増えていく読まれた投稿の数、日に日に減っていく嫌な経験、「最悪な1日」なんて言えるような不幸な体験はせずに暮らせている。欲しくて欲しくて、やっと手にしたチケットでライブも見られている。なのに。
 徐々に減っている将来の可能性、周りと比べて気づく自分のつまらなさ、そして夢を叶えていく人たち。昔の自分が夢見ていたあの憧れはこんなにもチッポケで無力なのか、そしてまだまだ上を目指さなければならないのか。自分には、今まで憧れ夢見てた場所のその先の目標を見つけることができるのだろうか。
 その後のMCで、依与吏さんは「聴いてくれる人と一番深いところで繋がれる、日本で1番のバンドになります」と誓っていた。ファンとしては嬉しいし感動したが、心のどこかではその上昇志向をただ純粋に羨望していた。気付くと、「日曜日」で歌われているようなありふれた幸せを目指そうとする自分がいた。それでいいのだろうか。そんなちょっとしたモヤモヤが、些細な迷いが、僕が今の自分を嫌いになる理由だ。

 自分語りライブ日記は、後編のUNISONプログラム15th編へとつづく。
 あっ、ライブ自体は勿論凄く良かったですよ。武道館で見れてよかったです。8月に城ホールでまた見れるのもとても楽しみ。

ネットラジオ「京大見聞録」やってます。聞いてください。 https://www.youtube.com/channel/UCPoiWUMapwCJCUdLm6VVAKA