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ペルシャ絨毯調の絨毯 2013年8月 西新宿

 当時住んでいた新宿の西方面はタワーマンションが乱立し、治安は良かったがあぶく銭を掴んでいそうな人が多く、住民全員がIT長者か高級娼婦に見えた。
 歩いている犬すら高級そうで、ゴミ捨て場にはやはり金目のものが投棄されている事が多く、拾ったカーペットもペルシャ絨毯と思い込んだ。

 暮らしていた部屋の面積よりも大きかったのでヤフーのオークションに「ペルシャ絨毯」として出品すると、「ペルシャ絨毯だと仰る根拠はどこですか」と質問が来た。「あ、ペルシャ絨毯ってしっかりした定義があるのか」と思い、名称を「ペルシャ絨毯調カーペット」にスケールダウンしたが、それでも30000円で売れた。
 売れてからベランダに掛けて水とシャンプーで洗い、そのまま放置して乾かした。
 拾ってきた犬を風呂に入れているようで心地が良かった。

 数年後、ビザが取りやすくなったのでロシアのウラジオストクに出かけ、ナホトカまで足を伸ばすと、似たような洗濯の光景を見かけた。
 しかし、同じ事をやっているのに、絨毯を干す板塀の年季から、建物の外壁の草臥れかた、樹木の尖り具合まで何もかも全てが違っていた。
 しょせん日本で世界中の金銀財宝を集めても本物にはなれないと、それはそれでカラッとした気分になれた。

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