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墓石調イタリア噴水 2013年8月 西新宿

 プラスチック製のイタリア噴水は、2013年7月当時、再開発のために立ち退きが進んでいた西新宿の昭和的な地域で、道路沿いの植え込みに上半分が捨てられていた。
 その時はまだ、それが何か解らなかったが、翌日同じ場所を通ると、昨日拾ったものとつがいになりそうな下半分を発見し、家に持ち帰り組み合わせると噴水になった。
 プラスチック製とはいえ重量があったので汗を拭いていると、当時付き合いかけだった女がやって来て一瞥し、「なんだ、墓みてえだな」と毒蝮三太夫の口調で笑った。確かに西洋の墓石に見えなくもない。だからというわけではないが、特に用途も思い付かないのでヤフーのオークションに出品した。
 出品に際し調べると、壁に取り付けるタイプはイタリア庭園の噴水で、公園にあるような円形のものはフランス式らしい。18000円で売れ、知識だけ残った。

 近所の再開発地区は、徐々に取り壊しが進み、最後まで道路だけが残っていた。目的地のない純粋な道路というものが面白く、毎日のように歩いた。
 8月になり再開発地区が完全に取り壊された頃、近くのマンションから、暗い曲を歌う有名な昭和の女性歌手が飛び降りた。その人の娘は更に有名な、平成を代表するような歌手で、こちらは比較的軽快な曲を歌っている。
後日その現場を通ると、献花台のところで数名の人が記念写真を撮っていた。

 再開発地区の跡地には3年後の2017年ごろ、竣工当時は日本で一番高い(高さが。多分価格も)という触れ込みのタワーマンションが建った。
 住民が住むようになっても一階のテナント部分がしばらく空いていたのだが、牛丼屋チェーンが入ったのを見た時には胸のすくような思いがした。心の底から「ざまあみろ」と思った。

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