天狗湯のタオルで作ったマスク 2020年 ゴールデンウイーク 西荻窪
さすがにマスクは拾わない。
「天狗」とプリントされたマスクは、西荻窪の「天狗湯」で貰ったタオルを元に手縫いで作成した。
市場ではマスク不足だったが、まだ迷惑なウイルスに対し、ギリギリでふざけていられた2020年のゴールデンウイークの頃だった。
それでも多少は、天狗の神通力で病から護ってくれ、ぐらいの気分はあったように思う。
天狗は昔から結構好きで、神仏の類なのに、「天狗倒し」と呼ばれる、山で突如として木を倒す怪異を起こしたり、明治維新前までは分類し難い山岳宗教であったところを、「怪しい、野放しにしてはいかん」と真言宗に組み込まれて管理されるようになった後も、神道や陰陽道の影響が残った「修験道」は、時に「山伏」という言葉も詐欺師に近い感覚で使われたりする曖昧さが良い。
そういった趣向により10年ほど前、神主の資格を持ち修験道にも関わっていて、議席を獲得した事のない弱小右翼団体に所属する泡沫候補の60代男性が経営する京都と四国の安宿で暮らしていた時期がある。
奈良の大峰山で山伏修行体験に連れて行かれ、ほら貝を吹かされたり、四国遍路を歩かされたりした。
出馬した四国の町長選挙を手伝ったが、有権者数1万人の町で獲得できた票数は90票だった。「ひょっこりひょうたん島」のテーマソングを爆音で鳴らす真っ赤な選挙カーから、滑舌の悪い、読経か祝詞のような演説をする為に、子供には人気があったが大人からは怒鳴られたりしていた為だ。
他には岡山県で家を造らされたり、高知県の海水で塩を精製させられたり、熱海に購入した廃屋に女性を連れてきて「ヌードを撮れ」と言われ断ったりもした。
それらの行動の理由は全て、何ひとつとして未だに分からない。
それらはそれなりに刺激的な体験ではあったが、結局のところ、面白い人物と関わっても自分自身が面白くなれるものではないと思ってしまい、その人の元を去った。
自分の中に残った教義は、「笑われても気にするな」や「耐えればいつかは開花する」とか「その為にも酒は飲み過ぎるな」といった、変人と関わったにしてはごく普遍的なキーワードばかりだが、それらは案外、生きる上で けっこう重要な指針となっている。
最近、四国の町長選挙で当選した相手候補が、酒に酔ってのセクハラで弾劾されたニュースを聞き、あの怪人物の言葉が蘇った。
大峰山にて
選挙カーから
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?