ゆりやんレトリィバァの凄まじさ【中編】

前編はこちらです
https://note.com/otukatakuto_/n/nea1991aa8db3

前編ではコントを3つの種類に分け、特に「システムコント」の長所、短所について書いた。しかし記事の最後にも言ったように、ゆりやんレトリィバァのネタは僕の中の常識を覆すものだった。後編ではR-1ネタの内容について書いていこうと思う。

ちゃうねん!ネタの概要

R-1グランプリ2021の1本目でゆりやんレトリィバァが披露していたネタは、分かりやすく「システムコント」に分類される。「○○やな〜、ちゃうねん!」というセリフは日常の中の「あるある」であり、初めは普通の女上司だったゆりやんは、何にでも突っ込む奇人にシステムに沿って変化していった。
ここまでは構造として「バイトの面接」のネタに非常に近い。テレビのアナウンサーに突っ込んだところで、「このルールでやっていくんだな」と視聴者は理解したと思う。

僕はシステムネタが大好物なので、「いいぞ!どんな展開を見せてくれるんだ!」と身を乗り出した。(コントの見方を間違えているし、めちゃくちゃ嫌な視聴者だ)

ここでこのネタは一気に見やすくなり、演者の目的が視聴者にしっかりと伝わる。
しかし前編で言ったようにデメリットもある。
ゆりやんの個性はなくなり、「こういうネタです」と台本を手渡してきた人になってしまう……はずだった。

「ルール」への逆らい方

前編で僕はこう書いた。

システムコントの流れは前述したシステムに支配されているため、そこから逸脱したことをするのはタブーである。多少のくすぐりは入れられるが、あくまでウケは本筋で取ることが求められる。

このようにシステムから逸脱するのは「タブー」ではあるが、実際のコントでは「観客の期待に応えつつ、予想を裏切りつづける」ことが求められる。つまり、システムの中で凡人が思い付かないような大喜利を連打していく必要がある。
(これが出来てしまうのだから芸人は本当にカッコいい)
ある意味でドラマコントもキャラコントも大喜利の連打ではあるのだが、これも前編で言ったようにシステムコントは制約が多く、より狭いテーマで大喜利をし続ける必要がある。大喜利の回答の範囲が限られるということは観客の予想を裏切るのが難しくなるということである。

なので、演者はシステムに沿いつつも、なんとかそのシステムから離れた大喜利の回答を出そうとする。
ここがシステムコントの最も難しいところだと僕は思う。

YouTubeに公式で上がっているネタの中では、今年のR-1決勝にも進んでいたkento fukayaの「献立」が鮮やかだ。

https://youtu.be/45RR5BzJoGw

このネタはフリップネタだが、「変わった献立を紹介する」というシステムに則って進んでいる。

序盤は「子供に人気のなさすぎる献立」「水分を奪う献立」とシンプルな大喜利を続け、客の目が慣れてきた頃に「パニープーン」という語感のおもしろさで笑いを誘う。特に僕が好きなのは「文字の下剋上」だ。中盤にきて誰も予想していなかったどんでん返し。
発想×「下剋上」というワード×フリップのインパクトの重ね合わせで完璧に客の予想を超えてきたボケだと思う。凄すぎる、、、


ちなみに、前編で紹介した「バイトの面接」のネタではおいでやす小田はまったくシステムから離れようしていない。あくまで「バイトの面接に来た、すごすぎる学生」という同じお題でレベルの高い大喜利を披露し続けている。それはそれでめっちゃすごい(尺が3分と短いこともあると思う)

R-1グランプリ2020で守谷日和が披露した「重要参考人」というネタが僕は大好きだ。「取り調べられている重要参考人が落語家くらい演技が上手く、刑事が引き込まれてしまう」という設定で進んでいくネタで、これもシステムから離れることはほとんどなかったが、圧倒的な演技力で観客を飽きさせず心をつかみ続けていた。(あ〜〜〜かっこいい、、)

それでは、ゆりやんのネタではどうか?

(後編につづく)

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