お酒は好きだけどお酒オタクは嫌い。(141220)

 僕は『プレミアムビール』なんてダサい名前を喧伝して、酒を知りもせんおっさんどもが「プレミアムビールって知ってる?」みたいに若いのにドヤ顔で話しかけるような契機を作った宣伝担当者や代理店は生涯許さんけど、サントリーのプレミアムモルツは日本で25番目くらいに好き。美味いよあれ。
 ただ個人的には、プレミアムモルツよりモルツの方が好きだ。 シャープさに寄りすぎたドライより、軽快な薫りとサッパリ飲み口に行ってるモルツに好ましさを覚えてるのが第一なんだけど、それ以上にプレミアムモルツは繊細すぎて脂に勝てないからね。 そういう部分で、良いビールだけど好みじゃない。
 因みに一番好きなビールは、箕面のWIPAをハンドポンプでジョジョーと注いだもんです。あれを、大阪の直営レストランで飲むのが一番美味しい。 ハナ差の二番目は採れたてホップのドラフト。あれ、全国流通してくれないかな。 大手がああいう良心的なもん作ってるんだから小さい蔵気合入れろよな。
 日本酒は気合入ってる蔵しかないから、プロモーションやってたら、お話聞いて一番スタンダードなやつ買って「当地で、地のもん食べながら飲みたいなー」なんて思うけどさ。地方のビールメーカーは腑抜けたようなビール平気で作るからな。 そんなのは、この10年間で淘汰されてけどさ。まだあんだよ。

 やっぱりお酒は猛烈に気合入ってる会社が、客に媚びないでタイトなもん作んないとさ。 モータウンや昔の歌謡曲のレコード買ってた人達が、流行りものを聴いてるだけなのに、知らず知らずのうちに一流のセッションミュージシャンの演奏を耳にしていたような形で、矜恃を溶け込ませなきゃ意味無いよね。
 大手の日本酒メーカーは、気合入ってるのかどうか判断がつかん。 ただ、スーパーで買えるような一般流通してるもののクオリティは、小さい蔵が信用ある店にしか出してない酒と比べて著しく劣るよね。 樽で買ってブレンドしちゃあなあ…。乳酸菌と酵母の奇跡に対する冒涜だよなあ、あんなの。好かん。

 焼酎も大好きなんだけどさ。ブランド化が酷いから、仲間にされたくない。中間業者が、金のために釣り上げたって見方を僕はしちゃうからね。 名前で飲んでるやつは、大量の氷水で香りを殺すやつが多いんだよ。生で良いじゃ無い。 樽での長期熟成品を燗酒にするやつとかも、まだ出会ってないんだよね。
 焼酎は地元の人達向けに造ってる小さな蔵のものを、その土地に出向いて、当地での飲み方真似しながら地のもの食べる以外には正解ないんだからさ。 それを、美味しくて堪らないから…という理由でなしに、ブランドだからって飲むやつがいるから嫌になんだよな。 最下層は、赤霧島飲んで得意がる奴だ。
 どんなものかなー?って飲んでみるのを否定するものでも、赤霧島が美味しくないとか言うつもりも無いけどさ。(黒霧島同様、あれは美味い) 飲んでないやつより飲んでる俺が偉い、みたいななやつを蹴りたいってだけなんだよ。 僕は焼酎は甲類含めて全部好きなんだってば。一緒にしないで欲しいよ。

 日本酒も、一部の選民思想に毒された自称マニアの振る舞い酷いけどね。 『獺祭』の空き瓶や前掛けをこれ見よがしに店先や店内に飾る居酒屋が、ああいう手合いをのさばらせるんだよな。 ああいうのは、アルコールによる酩酊じゃなく、自尊心による陶酔を求めてるんだよな。本当に本当に、気持ち悪い。
 酒は全て、作った人が偉い。次いで、それを美味しい状態でサーブしてくれたり、教えてくれた人が偉い。 見返りに金出すだけのただの客が思い上がっちゃあいけないんだけど、バッカス神の司祭だと思い違いしてつやつの多いこと多いこと。 衒いのあるやつはすぐ解るからね。謙虚さが足りないよ、やつら
 美味しいお酒がこの世に生まれ、今自分がそれを美味しく飲めている。 それに対する感謝を神か、神ならぬ何かに捧げるのが、一介の客としての筋ってもんでしょう。 それを、自尊心満たすために客同士で知識競い合うんだからお笑い種だね。 組み立ての筋の良さを争う分なら、微笑ましいものを。無粋!
 あまつさえ、年若いやも知れぬけれど、バーテンダーに対しものを教えようなんて態度のやつは驕り高ぶったやつだから、市場で暴れたイエスのまねっこをしながら、暴力を振るうのが最適解なのではないかと思うよ。 まあ、ここまで諸々言い過ぎだけどさ。それくらい腸煮えくり返しながら眺めてるよ僕は。

 半可通はなまじっか知識があるせいで、感性が衰えてるんだよな。 で、何か新しいものに対し、「ああ知ってる」みたいな対応か、「知らないから価値ないよ」なんて対応か。そのどっちか第一に取りがちね。味会うのよりも先に、知識で感覚器官にフィルターかけちゃうんだよな。 見下げたもんだよねえ。
 僕は、高い金を平気で使える年長の酒飲みは疑ってかかってるよ。だって、意味もわからずブランドに金払って、得意がってる可能性があるからね 「どういうお酒が好きか」を聞いてごらんなさい。大体、銘柄答えるから。 つまりだ。時に彼らは、値札に対してのみ敬意を払う、驚く様な痴れ者なのだよね。
 反面、僕が酒場で出会った同世代や20そこそこの酒飲みは気持ちよい人ばっかりよ。 そういう人は、大体シチュエーション込みでお酒の良さを語れるね。 自分の感受性を担保するのは、自分の心の底から浮かんだ感情以外に無いわけでさ。 だれかの価値判断を戴いてるんじゃ馬鹿でしょ。手短に言って。

 マイケル・ジャクソンが褒めてたビールを、そうと知って飲むならさ。 酒飲みの先達に対する、「俺達のKING OF HOPが愛した酒だ!」ってな敬愛を込めて飲むのにこそ意味がある訳で。 「世間で認められたビールだから」なんて、そんなさもしい意識で飲んでたら、寂しい気がしちゃうよね。
 世界のビールランキングもさ。みんながみんな同じ条件で、同じビール飲み比べてるわけじゃないから、そこで高順位だから飲むんじゃないんだよ。逆でさ。 自分が美味しいと思ったビールを愛する人が、世界にそんなに沢山いるんだと、思いを馳せる為に使わなくっちゃ。 そうでないとロマンが無いよね。

 世間で良い評価を受けてるものを消費する事で、消費者自信が評価されるなんて事は稀なんだよ。 だって、評価されてるのを、客が消費したブツなんだもの。 そこで下駄履いた気分になってるやつはダメなやつなんだけど、表面上褒められてるのが嬉しくて気付いてない人多いよね。 格好悪い話だけどさ。
 逆に、情報量の多さや掘り下げ方で一般大衆から差異化を図るマニアもまた嫌いでね。 本当に好きで好きでたまらなくて突き詰めた人ならば、悪く言いたく無いけどさ。 過剰な自負心と安直な自尊心は紙一重だからね。 そこの所ごっちゃにして、誇ったり自慢する対象が自分になったら、困っちゃうよね。

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