関税率表 第29.15項

第 29 類 有 機 化 学 品

29.15 飽和非環式モノカルボン酸並びにその酸無水物、酸ハロゲン化物、酸過酸化物及び過酸並びにこれらのハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体
-ぎ酸並びにその塩及びエステル
2915.11--ぎ酸
2915.12--ぎ酸の塩
2915.13--ぎ酸のエステル
-酢酸及びその塩並びに無水酢酸
2915.21--酢酸
2915.24--無水酢酸
2915.29--その他のもの
-酢酸のエステル
2915.31--酢酸エチル
2915.32--酢酸ビニル
2915.33--酢酸ノルマル-ブチル
2915.36--酢酸ジノセブ(ISO)
2915.39--その他のもの
2915.40-モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸並びにこれらの塩及びエステル
2915.50-プロピオン酸並びにその塩及びエステル
2915.60-ブタン酸及びペンタン酸並びにこれらの塩及びエステル
2915.70-パルミチン酸及びステアリン酸並びにこれらの塩及びエステル
2915.90-その他のもの

この項には、飽和非環式モノカルボン酸並びにその酸無水物、酸ハロゲン化物、酸過酸化物及び過酸、エステル並びに塩及びこれらの化合物のハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体(複合誘導体を含む。)を含む。
(Ⅰ)ぎ酸(HCOOH)並びにその塩及びエステル
(a)ぎ酸:天然に存在するが、合成によっても得られる。粘性の低い無色の液体で、空気にさらすとかすかに煙を発する。刺激臭を有し腐食性がある。染色用、皮なめし用、ラテックスの凝固用、医薬品(防腐剤)及び有機合成用に使用する。
(b)ぎ酸の主な塩には次の物品がある。
(1)ぎ酸ナトリウム(HCOONa):結晶性白色粉末で潮解性があり、医薬、皮なめし用及び有機合成に使用する。
(2)ぎ酸カルシウム((HCOO)2Ca):結晶である。
(3)ぎ酸アルミニウム((HCOO)3Al):白色の粉末で、繊維工業で媒染剤及び防水用に使用される。なお、塩基性ぎ酸アルミニウムは通常水溶液として使用する。
(4)ぎ酸ニッケル((HCOO)2Ni):油の水素添加用触媒として使用する。
(c)ぎ酸の主なエステルには次の物品がある。
(1)ぎ酸メチル(HCOOCH3):芳香を有する無色の液体である。
(2)ぎ酸エチル(HCOOC2H5):無色の粘性の低い液体で、揮発性及び引火性があり、ラム酒臭を有する。
(3)ぎ酸ベンジル、ぎ酸ボルニル、ぎ酸シトロネリル、ぎ酸ゲラニル、ぎ酸イソボルニル、ぎ酸リナリル、ぎ酸メンチル、ぎ酸フェニルエチル、ぎ酸ロジニル及びぎ酸テルペニル:主に香料に使用する。
(Ⅱ)酢酸(CH3COOH)及びその塩及びエステル
(a)酢酸:木材の乾留又は合成により得られる。酢の特有の刺激臭を有する酸性の強い液体で腐食性がある。冷却すると固化して無色の結晶(氷酢酸)となる。りん及び硫黄並びに各種の有機化合物の溶剤に使用する。
商慣行上の酢酸は淡黄色であり、かすかに有機物を燃焼させた臭いを持つものが多い。
繊維工業用、なめし用。ラテックスの凝固剤用、酢酸塩及び酢酸エステル、合成可塑剤、医薬品等の製造に使用する。
(b)酢酸の主な塩には次の物品がある。
(1)酢酸ナトリウム(CH3COONa):無色無臭の結晶又は無水物は白色若しくは淡黄色粉末で、媒染剤として使用するほか各種の化学品製造に使用する。
(2)酢酸コバルト((CH3COO)2Co):酢酸臭を有する紫赤色結晶で潮解性がある。
(3)酢酸カルシウム((CH3COO)2Ca):純粋のものは無色の結晶
(4)塩基性酢酸銅(CH3COOCuOH):針状結晶又は小フレーク状結晶で青色。空気に触れると風解し、緑色となる。
(5)中性酢酸銅((CH3COO)2Cu):緑青色の粉末又は小結晶で、空気に触れると風解し、白色の粉末となる。
(6)酢酸鉛、中性塩((CH3COO)2Pb)又は塩基性塩(例えば、Pb(CH3COO)2・3PbO・H2O):中性酢酸塩は、無色又は微黄色若しくは微青色の結晶で有毒である。塩基性酢酸塩は密度の大きい白色粉末で、医薬用及び化学分析試薬に使用する。
(7)酢酸リチウム及び酢酸カリウム:医薬に使用し、酢酸クロム、酢酸アルミニウム及び酢酸鉄は、媒染剤として使用する。
(c)酢酸の主なエステルには次の物品がある。
(1)酢酸メチル(CH3COOCH3):木材の乾留物中に存在する。果実様の香気を有する液体で、人造果実エッセンスの製造用及び脂肪、樹脂及びニトロセルロース等の溶剤として使用する。
(2)酢酸エチル(CH3COOC2H5):無色の非常に粘性の低い液体で引火性が強く、果実様の香気がある。不純物としてエチルアルコールを含むものがニトロセルロース、ワニス等の溶剤として、また、抗けいれん剤、鎮痛剤とし医薬にも使用する。
(3)酢酸ビニル(CH3COOCH=CH2):特有の臭気がある無色の液体で、単量体はポリ(酢酸ビニル)(39.05 項の重合体)の製造に使用する。
(4)酢酸ノルマル-プロピル及び酢酸イソプロピル:人造果実エッセンスの製造に使用する。
(5)酢酸ノルマル-ブチル:無色の液体であり、人造果実エッセンス製造及び溶剤として使用する。
(6)酢酸イソブチル:無色の液体。人造果実エッセンス製造及び溶剤として使用する。
(7)酢酸ノルマル-ペンチル(酢酸ノルマル-アミル)及び酢酸3-メチルブチル(酢酸イソ-アミル):人造果実エッセンスの製造に使用する。
(8)酢酸-2-エトキシエチル
(9)酢酸ベンジル、酢酸テルペニル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸アニシル、酢酸パラトリル、酢酸シンナミル、酢酸フェニルエチル、酢酸ボルニル及び酢酸イソボルニル:すべて香料に使用する。
(10)グリセリン酢酸エステル(モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン)
この項には、また、無水酢酸((CH3CO)2O)も含む。無水酢酸は無色の液体で強い刺激臭を有し、腐食性がある。化学合成に使用する。
(Ⅲ)モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸並びにこれらの塩及びエステル
(a)モノクロロ酢酸(ClCH2COOH):無色の結晶
(b)ジクロロ酢酸(Cl2CHCOOH):無色の液体
(c)トリクロロ酢酸(Cl3CCOOH):刺激臭を有する無色の結晶で、有機合成及び医薬に使用する。
(Ⅳ)プロピオン酸(CH3CH2COOH)並びにその塩及びエステル
プロピオン酸は酢酸に類似した臭気を有する液体である。
(Ⅴ)ブタン酸並びにその塩及びエステル
(a)酪酸(ブタン酸):無色の密度の大きい油状液体で、不快な酸敗臭を有する。皮の脱灰剤として使用する。
(b)イソ酪酸(2-メチルプロパン酸)
(Ⅵ)ペンタン酸並びにその塩及びエステル
(a)吉草酸(ペンタン酸):無色透明の油状液体で、不快な酸敗臭を有する。
(b)イソ吉草酸(3-メチルブタン酸)
(c)ピバル酸(2,2-ジメチルプロパン酸)
(d)2-メチルブタン酸
(Ⅶ)パルミチン酸(CH3(CH2)14COOH)並びにその塩及びエステル
(a)パルミチン酸:グリセリドとして脂肪中に存在する。白色の粉末、光沢ある結晶又は無色のフレーク状である。
(b)パルミチン酸の主な塩には、次の物品がある。
(1)パルミチン酸カルシウム:香料に使用する。
(2)パルミチン酸アルミニウム:織物の防水用及び潤滑油の増粘剤に使用する。
なお、水溶性のパルミチン酸塩(例えば、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸アンモニウム)は、せっけんであるが、この項に属する。
(Ⅷ)ステアリン酸(CH3(CH2)16COOH)並びにその塩及びエステル
(a)ステアリン酸:グリセリドとして脂肪中に存在する。白色無定形でろうに類似している。
(b)ステアリン酸の主な塩には、次の物品がある。
(1)ステアリン酸カルシウム:織物の防水に使用する。
(2)ステアリン酸マグネシウム:ワニスの製造に使用する。
(3)ステアリン酸亜鉛:医薬並びにゴム工業及びプラスチック工業並びに油布の製造に使用する。
(4)ステアリン酸アルミニウム:パルミチン酸アルミニウムと同様の用途に使用する。
(5)ステアリン酸銅:青銅色プラスター用及び防汚剤として使用する。
(6)ステアリン酸鉛:乾燥剤として使用する。
なお、水溶性のステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸アンモニウム)はせっけんであるが、この項に属する。
(c)エステルには、ステアリン酸エチル及びステアリン酸ブチル(可塑剤として使用する。)並びにステアリン酸グリコール(天然ろうの代用品として使用する。)も含む。
(Ⅸ)この項のその他の物品には、次のものを含む。
(a)クロロぎ酸エチル:クロロ炭酸エチルと呼ばれることがあり、窒息性臭気を有する無色の催涙性液体で引火性がある。有機合成に使用する。
(b)塩化アセチル(CH3COCl):無色の液体で、空気に触れると眼を刺激する蒸気を発し、強い臭気を有する。
(c)臭化アセチル(CH3COBr):塩化アセチルと同じ特性を有し、有機合成に使用する。
(d)モノブロモ酢酸、ジブロモ酢酸及びトリブロモ酢酸並びにこれらの塩及びエステル
(e)ノルマル-ヘキサン酸(カプロン酸)及び2-エチル酪酸並びにこれらの塩及びエステル
(f)ノルマル-オクタン酸(カプリル酸)及び2-エチルヘキサン酸並びにこれらの塩及びエステル
この項には、次の物品を含まない。
(a)食用の酢酸水溶液(酢酸の含有量が 10%以下のもの)(22.09)
(b)粗ステアリン酸の塩及びエステル(通常、34.01、34.04 又は 38.24)
(c)モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン及びトリステアリン酸グリセリンの混合物(脂肪の乳化剤)(これらが人造ろうの特性を有する場合は 34.04 に、その他の場合は 38.24 に属する。)
(d)脂肪酸(脂肪酸の含有量が乾燥状態における全重量の 90%未満のもの)(38.23)


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