関税率表 第29.41項

第 29 類 有 機 化 学 品

29.41 抗生物質
2941.10-ペニシリン及びその誘導体(ペニシラン酸構造を有するものに限る。)並びにこれらの塩
2941.20-ストレプトマイシン及びその誘導体並びにこれらの塩
2941.30-テトラサイクリン及びその誘導体並びにこれらの塩
2941.40-クロラムフェニコール及びその誘導体並びにこれらの塩
2941.50-エリスロマイシン及びその誘導体並びにこれらの塩
2941.90-その他のもの

抗生物質は、生きた微生物によって分泌される物質で、他の微生物を死滅させ又は成長を抑制する効果を有する物質である。これらは、主として病原微生物、特にバクテリア、菌又は時として腫瘍に対する強い抑制作用があるため使用される。抗生物質は数マイクログラム/ml の血中濃度で効果がある。
抗生物質は、単一の物質又はその関連物質の混合物から成っており、その化学構造がまったく不明なものがあり、また、確定しているものもある。抗生物質は、化学的にみた場合種々のものがあり、次の物品を含む。
(1)複素環式のもの:例えば、ノボビオシン、セファロスポリネ類、ストレプトスライシン、ファロペナム(INN)、ドリペナム(INN)、モノバクタム類(例えば、アズトレナム(INN))がある。この種のもので最も重要なものはペニシリン類で、ペニシリウム属の各種のかびによって分泌される。この種類にはプロカインペニシリンも含む。
(2)糖に関連するもの:例えば、ストレプトマイシンがある。
(3)テトラサイクリン類及びその誘導体:例えば、クロルテトラサイクリン(chlortetracycline(INN))、オキシテトラサイクリン(oxytetracycline(INN))がある。
(4)クロラムフェニコール及びその誘導体(例えば、チアンフェニコール及びフロルフェニコール)
(5)マクロライド類:例えば、エリスロマイシン、アンホテリシン B、タイロシンがある。
(6)ポリペプチド類:例えば、アクチノマイシン類、バシトラシン、グラミジン類、チロシジンがある。
(7)その他の抗生物質:例えば、ザルコマイシン、バイコマイシンがある。
この項において、誘導体とは、この項の化合物から得られ、母体化合物の本質的特徴(基本化学構造を含む)を保持した活性な抗生物質化合物をいう。
この項には、また、抗生物質として使用される化学的に変性した抗生物質を含む。これらは、微生物の自然の成長によって生産される成分を分離し、次の化学反応によって構造を変性する方法、さらに成長培地に側策鎖前駆体を加える方法によって製造される。その結果、細胞法(半合成ペニシリン)又は生合成(例えば、ある種のアミノ酸から作られるペニシリン)によって、所望の基が分子に結合する。
合成によって作られる天然と同一の構造の抗生物質(例えば、クロラムフェニコール)あるいは、天然の抗生物質に非常に構造が似ており、抗生物質として使用されているある種の合成物質(例えば、チアンフェニコール)もこの項に含む。

この項には、次の物品を含まない。
(a)飼料として使用されるある種の抗生物質製剤(例えば、乾燥し規格化した完全な菌糸体)(23.09)
(b)非常に低い抗菌活性を有する化学的に単一の有機化合物で、抗生物質の中間原料として使用されるもの(その構造により、この類の前項までのいずれかに該当するもの)
(c)キノリンカルボン酸の誘導体、ニトロフラン、スルフォンアミド及びその他の化学的に単一の有機化合物で、抗菌作用を有しているが、この類の前項までのいずれかに分類されるもの
(d)抗生物質の人為的混合物(例えば、ペニシリンとストレプトマイシンの混合物)で、治療又は予防用に使用するもの(30.03 又は 30.04)
(e)抗生物質の製造工程の中間生産品であって、発酵物をろ過し、第一段階の抽出を行って得られるもので、その濃度が一般に 70%以下のもの(38.24)

号の解説
2941.10
この号には、すべてのペニシリン類を含む。すなわち、アミノ-(4-カルボキシ-5,5-ジメチルチアゾリジン-2-イル)酢酸のβ-ラクタム化合物(ラクタム環のアミン官能基は有機酸とアミド結合で結合したもの)であるペニン(6-アミノペニシラン酸)骨格を分子中に含むすべての活性な坑生物質を含む。これらの有機酸の構造、塩の形成又はその他のチアゾリジン環のカルボキシル基上の置換は、分類に影響を及ぼさない。ただし、ペニン基本構造(骨格)は変性されていてはならない。
この号には、アンピシリン(INN)、アモキシシリン(INN)、タランピシリン(INN)を含む。
しかしながら、この号は、セファロスポリン類(例えば、セファゾリン(INN)、セファクロル(INN))、セファマイシン類(例えば、セフォキシチン(INN))、オキサセフェム類、ペネム類、カルバペネム類等のようなβ-ラクタム環を含むその他の抗生物質を除く。

2941.20
ストレプトマイシンの誘導体は、ストレプトマイシン骨格の構成要素(5-デオキシリキソースに結合するストレプチジン及びメチルグルコサミン)すべてを分子中の構造に含む活性な抗生物質である。いかなる場所にエステル及びグリコシドがあっても誘導体と認められる。
この号には、ジヒドロストレプトマイシン(INN)及びストレプトニアジド(INN)を含む。しかしながら、ストレプチジンの2個のアミジノ基を保持していないブルエンソマイシン(INN)や、ネオマイシン(INN)のような、ストレプトアミンの誘導体を含むその他のアミノグリコシド類は、ストレプトマイシンの誘導体とはみなされない。

2941.30
テトラサイクリンの誘導体は、部分的に水素添加したテトラサイクリン骨格の4-ジメチルアミノ-ナフタセン-2-カルボキシアミドを分子中に含む活性な抗生物質である。エステルは、また誘導体と認められる。
この号は、クロロテトラサイクリン(INN)、エラバサイクリン(INN)及びロリテトラサイクリン(INN)を含む。しかしながら、アクラルビシン(INN)及びドキソルビシン(INN)のような「ルビシン」タイプのアントラサイクリンは、テトラサイクリンの誘導体と認められない。

2941.40
クロラムフェニコールの誘導体は、クロラムフェニコール骨格のN-(2-ヒドロキシ-1-メチル-2-フェネチル)アセタミドを分子中に含む活性な抗生物質である。
この号には、チアンフェニコール(INN)及びフロルフェニコール(INN)を含む。しかしながら、セトフェニコール(INN)は、抗菌的に活性ではないためこのグループに属さない。

2941.50
エリスロマイシンの誘導体は、エリスロマイシン骨格の構成要素(デソスアミン及びミカロース(又はクラディノース)と結合する 13-エチル-13-トリデカノリド)を分子中に含む活性な抗生物質である。エステルは、また誘導体と認められる。
この号は、クラリスロマイシン(INN)及びジリスロマイシン(INN)を含む。しかしながら、15 員環を含むアジスロマイシン(INN)及びクラディノース又はミカロースを含まないピクロマイシンは、エリスロマイシンの誘導体とはみなされない。


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