関税率表 第85.41項

第 85 類 電気機器及びその部分品並びに録音機、音声再生機並びにテレビジョンの映像及び音声の記録用又は再生用の機器並びにこれらの部分品及び附属品

85.41 ダイオード、トランジスターその他これらに類する半導体デバイス、光電性半導体デバイス(光電池(モジュール又はパネルにしてあるかないかを問わない。)を含む。)、発光ダイオード(LED)及び圧電結晶素子
8541.10-ダイオード(光電性ダイオード及び発光ダイオード(LED)を除く。)
-トランジスター(光電性トランジスターを除く。)
8541.21--定格消費電力が 1 ワット未満のもの
8541.29--その他のもの
8541.30-サイリスター、ダイアック及びトライアック(光電性デバイスを除く。)
8541.40-光電性半導体デバイス(光電池(モジュール又はパネルにしてあるかないかを問わない。)を含む。)及び発光ダイオード(LED)
8541.50-その他の半導体デバイス
8541.60-圧電結晶素子
8541.90-部分品

(A)ダイオード、トランジスターその他これらに類する半導体デバイス
これらは、この類の注9(a)において規定されている。
このグループのデバイスは、ある種の「半導体」物質の電子的特性に基づいて作動する。
当該物質の主たる特徴は、室温におけるそれらの抵抗率が金属導体の抵抗率と絶縁体の抵抗率との中間にあることであり、当該物質としては、例えば、ある種の鉱石(例えば、方鉛鉱)、四価の元素(ゲルマニウム、けい素等)及び元素の化合物(例えば、ガリウム砒素、インジウムアンチモンのような三価の元素と五価の元素との化合物)がある。
四価の元素から成る半導体材料は一般に単結晶のものであり、それらは純粋な状態では使用せず、特定の「不純物」(ドーパント)で非常に軽度のドープ処理(含有量は 100 万分の1程度の割合)を行った後に使用する。
四価の元素に対して加えられる「不純物」は、五価の元素(りん、ひ素、アンチモン等)又は三価の元素(ほう素、アルミニウム、ガリウム、インジウム等)である。前者は、負の電荷を有する価電子が過剰に存在するn形半導体を形成し、後者は価電子が不足した状態(正の電荷を有する正孔が多数を占めた状態)が生じているp形の半導体を形成する。
三価又は五価の元素が結合している半導体材料も同様に、ドープ処理が行われる。
鉱石から成る半導体材料では、その鉱石中に天然に含有している不純物がドーパントとして作用する。
このグループの半導体デバイスは、一般にp形及びn形の半導体材料の一以上の「接合」を含んでいる。
これらには、次の物品を含む。
(Ⅰ)ダイオード:これは pn 接合を一つ含み、2個の端子を有するデバイスで、一方向(順方向)に電流を通すが、逆方向には高い抵抗を生ずるものである。これは、検波、整流、スイッチング等に使用する。
ダイオードの主な種類としては、シグナルダイオード、電力整流ダイオード、電圧調整ダイオード及び定電圧ダイオードがある。
(Ⅱ)トランジスター:これは三つ又は四つの端子を有するデバイスで電流の増幅、発振、周波数変換及びスイッチングを行うことができる。トランジスターは、第3の端子に電界を加えて他の二つの端子間の抵抗を変化させることにより作動する。付加する制御信号又は電界は、抵抗の変化により生ずる作動より弱いので増幅作用となる。
トランジスターには、次の物品を含む。
(1)バイポーラ型トランジスター:三つの端子を有し、二つのダイオード型接合から成るデバイスで、トランジスターとしての作動は、正負両電荷のキャリアによるものである(このためバイポーラ型と呼ばれる。)。
(2)電界効果トランジスター:金属酸化物半導体(MOS)型とも呼ばれており、接合を有するものと有しないものとがあり、いずれも二つの端子の間で電荷のキャリアを消滅させるか又は増強させることにより作用させる。電界効果型トランジスターにおいては電荷のキャリアの1種類だけによってトランジスタ作用を行う(このためユニポーラ型と呼ばれる。)。
寄生ダイオードは、MOS 型トランジスタ(MOSFET)の中に形成されるものであり、誘導負荷スイッチングの間、還流ダイオードとして作用する。4個の端子を有する MOSFET は、四極素子と呼ばれる。
(3)絶縁ゲートバイポーラトランジスター(IGBT):一つのゲート端子及び二つの負荷端子(エミッタ及びコレクタ)の三つの端子から成るデバイスである。ゲート端子及びエミッタ端子の間に適当な電圧をかけることにより、一方向の電流を制御する(つまり、オンにしたりオフにしたりする)ことができる。複数の IGBT チップが、IGBT デバイスを保護しトランジスターとして機能し続けることを可能にする複数のダイオードとともに、単一のパッケージに組み込まれたもの(パッケージ化した IGBT デバイス)もある。
(Ⅲ)類似の半導体デバイス:ここに述べる「類似の」半導体デバイスとは、その働きが電界の作用に基づく抵抗率の変動によって行われる半導体デバイスをいう。
これらには、次の物品を含む。
(1)サイリスター:これは、三層以上の pn 接合を有する四つの電導領域から成る半導体デバイスで、制御パルスを加えると順方向に直流を流すものである。これは、制御整流器、スイッチ又は増幅器として使用され、共通のコレクタ/ベース接合を有する二つの連動する相補型トランジスターとして機能するものである。
(2)トライアック:これは、2方向3端子サイリスターとも呼ばれ、四層の pn 接合を有する五つの電導領域から成る半導体デバイスで、制御パルスを加えると交流が流れるものである。
(3)ダイアック:これは、二層の pn 接合を有する三つの電導領域から成る半導体デバイスで、トライアックの作動に必要なパルスを発生させることに使用する。
(4)バラクター(可変容量ダイオード)
(5)電界効果型デバイス(例えば、グリディスター)
(6)ガン効果型デバイス
ただし、このグループには、上記のものとは異なり、その作動が基本的には温度、圧力等の作用に基づく非線形半導体抵抗器(サーミスター、バリスター、磁気抵抗器等)のような半導体デバイスを含まない(85.33)。その働きが光の作用に基づく光電性デバイス(フォトダイオード等)については、(B)の項参照。
上記のデバイスは、実装してある(端子を付けたもの、導線を付けたもの又はパッケージに封入したもの)か、実装してないままである(素子)か又は小片に切ってないディスク状(ウエハー)のいずれであるかを問わず、この項に属する。しかしながら、天然の半導体材料(例えば、ガレナ)は、実装した場合に限り、この項に属する。
この項には、28 類の元素(例えば、けい素及びセレン)を電子工業用にドープ処理し、円盤状、ウエハー状その他これらに類する形状にしたもの(磨いてあるかないか及び表面に均一なエピタキシャル層ができているかいないかを問わないものとし、不連続領域を生成するための選択的なドープ処理又は拡散処理を行ってないものに限る。)を含まない。

(B)光電性の半導体デバイス
このグループには、光電性の半導体デバイス(可視光線、赤外線又は紫外線が作用すると、内部光電効果により抵抗率が変動し又は起電力が発生する。)を含む。
その作用が外部光電効果(光電子放出)に基づく光電管は、85.40 項に属する。
光電性の半導体デバイスの主な型式には、次のものがある。
(1)光導電セル(光効果による抵抗器)
通常二つの電極の間に半導体材料(硫化カドミウム、硫化鉛等)を入れたもので、半導体材料の電気抵抗がセルに照射される光の強さに応じて変化するものである。
これらのセルは、火災検出装置、自動カメラの露出計、移動物の計数装置、自動精密測定装置、自動開扉装置において使用される。
(2)光電池
これは、外部電源の補助を受けずに光を直接電気エネルギーに変換するものである。セレンをベースとする光電池は、主として照度計又は露出計に使用され、けい素をベースとする光電池は高出力であるので、特に制御装置、調整装置、光のパルスの検出、光ファイバー通信システム等において使用される。
特殊な種類の光電池としては、次の物品がある。
(ⅰ)太陽電池:シリコン太陽電池は、太陽光線を直接電気エネルギーに変換するものであり、通常、集合体の形で電力源として宇宙探索用のロケット又は人工衛星、山岳救難用送信機
等に使用される。
この項には、モジュール又はパネルに組み立ててあるかないかを問わず太陽電池を含む。
ただし、たとえ簡単なものであっても素子(例えば、電動機又は電気分解装置に直接電力を供給するもので、例えば、電流の向きを制御するダイオード)を取り付けた太陽電池のパネル又はモジュールを含まない(85.01)。
(ⅱ)フォトダイオード(ゲルマニウムフォトダイオード、シリコンフォトダイオード等):本品の特徴は、光線が pn 接合に照射されたときに抵抗率が変動することであり、自動データ処理機械(記憶データの読取り)、ある種の電子管の光電陰極、放射式パイロメーターに使用される。フォトトランジスター及びフォトサイリスターは、光電受信体としてこのカテゴリーに属する。
このカテゴリーのデバイスは、実装したときに、光が通過できるようにハウジングの一部が透明になっていることにより、上記(A)のダイオード、トランジスター及びサイリスターとは区別される。
(ⅲ)フォトカップル及びフォトリレー:これらは、電界発光ダイオードにフォトダイオード、フォトトランジスター又はフォトサイリスターを結合したものである。
光電性の半導体デバイスは、提示の際に実装してある(端子又は導線を有する。)かないかを問わず、この項に属する。

(C)発光ダイオード(LED)
発光ダイオード(LED)又は電界発光ダイオード(特に、ひ化ガリウム又はりん化ガリウムをベースとしたもの)は、電気エネルギーを可視光線、赤外線又は紫外線に変換するものである。これは、例えば、制御システムにおいてデータの表示用又は伝送用に使用する。
レーザーダイオードは、コヒーレントな光のビームを放出するもので、例えば、核子の検出用、高度測定用、遠距離測定用又は光ファイバー通信システム用に使用する。

(D)圧電結晶素子
これは、主として 38.24 項のチタン酸バリウム(多結晶のチタン酸バリウムを分極したものを含む。)、ジルコン酸チタン酸鉛その他の結晶(同項の解説参照)及び水晶又は電気石の結晶であり、マイクロホン、拡声器、超音波機器、安定化周波数発振回路等に使用する。これらは、実装してある場合に限り、この項に属する。それらは、一般に、板状、棒状、円盤状、リング状等の形状をしていて、少なくとも電極又は電気的接続部を取り付けてなければならない。それらは、黒鉛、ワニス等を塗布してあったり又は支持具に支えられていることがあり、また、しばしば容器(例えば、金属製の箱又はガラス製のバルブ)に封入してある。しかしながら、もし他の構成要素を付加することにより完成した物品(装着具を備えた結晶)となったものは、もはや単なる結晶素子とは認められず、この組立品は機器の特定の部分品として認められる。例えば、マイクロホン用又は拡声器用の圧電セル(85.18)、サウンドへッド(85.22)、超音波厚さ測定機用又は超音波探照機用のピックアップ素子(感知部)(通常、90 類注2(b)に従って分類され、又は 90.33項に分類される。)及び電子式時計用の水晶振動子(91.14)がこれに該当する。
この項には、実装してない圧電結晶を含まない(通常 38.24 項、71.03 項又は 71.04 項)。

部 分 品
部分品の所属に関する一般的規定(16 部の総説参照)によりその所属を決定する場合を除くほか、この項の部分品は、この項に属する。

号の解説
8541.21
トランジスターの定格消費電力は、温度を 25 度に保ったケースにそのデバイスを入れて一定の作動電圧を印加した場合の連続電力消費量を測定して決定する。例えば、温度を 25 度に保ったケースにトランジスターを入れて作動電圧5ボルトを印加して 0.2 アンペアの負荷に連続して耐えた場合には、その定格消費電力は、1ワットである(アンペア×ボルト=ワット)。
放熱手段(例えば、タブ又は金属製ケース)を装備したトランジスターの場合の基準温度 25 度は、その底部又は金属製ケースが温度 25 度であることであり、その他のトランジスター(例えば、簡単なプラスチックのケーシングに封入したもの)の場合は、室温が 25 度であればよい。


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