心と身

_____________5秒 歳をとる


1  2  3  4  5秒

5秒 死に近付く

1  2  3  4  5秒
10秒前の 私は 女性で


1  2  3  4  5秒
10秒前の 私は  健康家


1  2  3  4  5秒
また5秒  死に近付く

“ 今の私はPessimist ”

この中に入って
どれくらいの時間が
経っただろうか

閉所恐怖症の 私
なのにちっとも怖くない

冬場の朝4時に目が覚め
まだ家族が眠っている頃
真っ暗で 冷気が籠る
炬燵の中に入り
縮こまり 眠る あの
少年期の心地よさ

隠れん坊で
押入れの
布団と布団の間に隠れ
いつの間にか眠っていた あの
少年期の心地よさ

生きていると実感する
自分を認識した時に
2020年
生きていることは
刺激では確認できない

この中に入って
どれくらいの時間が
経っただろうか______________

1分前の 私
それは本当に
私だったのだろうか

そこに私は
存在したのだろうか
夢かもしれない
私の 豊かな
想像力かもしれない

それではこの
胸の痛みは
どう説明しよう

この悲しみは
この喜びは

そしてこの
胸の高鳴りは!

押入れの中で
生を実感した時
寸分の狂いもなく同時に
死を実感した

今の自分を認識した瞬間に
今以外の自分を認識する

この中に入って
どれくらいの時間が
経っただろうか

ここは押入れの中

ここは箪笥の引き出しの中

ここは折り畳まれたGパンの
ポケットの中

なんと美しく壮大な 空

雄大な 茶色い 草原

くっきりとした輪郭の 雲

青と白が完璧に配合された 空気

バレリーナのようにくるくる回ると

どこを向いても 遮るものはなく
地平線 

まるで心電図の
フラット音が聞こえそうな
空と大地とを区切る直線
しかし どんな時よりも
生きている

ふと地平線を遮る人影
驚き 私は 回転を止める

目がまわり焦点が定まらない

仁王立ちする 真っ白な太腿
滑らかな 脚首
粉砂糖のかかった
ひと口で食べられる
奥ゆかしい和菓子のような 裸足
艶のある黒髪と 幼さの残った顔には
似合わない 分厚い化粧
悪戯描きのような 真っ赤な口紅

穏やかな 初恋の 相手

「見ぃつけた」

鬼の声  光が差す  目が眩む

「こんなところにいたの」

見つかると負けの遊びなのに
どうして見つけて欲しいのでしょう
見つかると負けの遊びなのに
どうして少し声を出してみるのでしょう

1分前にいた
あの風が吹き抜ける
雄大な 茶色い草原は

そして
あの 穏やかな 初恋は

果たして存在するのでしょうか
それとも一時の夢なのでしょうか

生を実感した時
寸分の狂いもなく同時に
死を実感した

鬼と一緒に
隠れん坊を探す
心は幸福に満ち溢れ
頬は紅く染まる

心は幸福に満ち溢れ
頬は紅く染まる



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