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〈レビュー〉ギター文化館モーニングコンサート#5 〜サクソフォーンで奏でる古楽の世界〜

[レビュー]


左から坂口さん、鴨川さん、武澤さん

11/19に、ギター文化館モーニングコンサートが開催されました。澄んだ晩秋の青空に、愛宕山の紅葉が映えてステキな日曜日の朝となりました。

シリーズ5回目となる今回のコンサートは、サクソフォン奏者 坂口大介さん、チェンバロ奏者 鴨川華子さん、トラヴェルソ奏者 武澤泰子さんの3名による、古楽に焦点を当てたプログラムとなりました。

19世紀半ばという比較的新しい時代に生まれたサクソフォンと、17世紀後半には誕生していたフルートのご先祖様のような存在であるトラヴェルソ、さらに古くルネサンス期までに完成していたチェンバロの3重奏は、音楽がこれまで紡いできた歴史の交差点のようなアンサンブルで、ギター文化館のドームに溶け込んでいくような響きが印象的でした。

オープニングはヘンデル作曲「トリオソナタHMV389」より。ヴァイオリンとフルート、またはオーボエの2声と通奏低音のために書かれた作品で、ソプラノサックスとトラヴェルソ、チェンバロでの演奏でした。ヘンデルらしい朗らかで優雅な印象のこの曲は、青空の広がる日曜日の朝にはぴったりの選曲でした。サックスとトラヴェルソという音量も音色もまるで異質な2本の楽器による掛け合いが、熟練した奏者のお二人によって色鮮やかに表現されていました。

2曲目はJ.S.バッハで「プレリュード、フーガとアレグロBWV998」が鴨川さんのチェンバロ独奏で演奏されました。リュートまたはチェンバロのために書かれた作品で、リュートから派生したクラシックギターでの演奏が盛んに行われている曲でもあります。今回はギター文化館での演奏ということで、そういった背景から選曲されたそうです。ギターと同じく弦をはじいて音を出すチェンバロの音色は、まさしくこのホールにぴったりな美しい響きでした。

3曲目にはバリトンサクソフォンによる「無伴奏チェロ組曲第一番」より第1、2楽章。誰しも聞いたことのあるこの曲は、サクソフォンでバッハを演奏する際の代表的なレパートリーのひとつでもあり、チェロとほぼ同音域であるバリトンサクソフォンの持つ、重厚さと伸びやかさがホールを満たしていました。古楽演奏を専門的に学んだ坂口さんによる、和声感や装飾のニュアンスなど、その魅力が存分に発揮されていました。

4曲目も同じくJ.S.バッハの作品から、「トラヴェルソの為のソナタBWV1030」より第2、3楽章。鴨川さんと武澤さんの2重奏となり、トラヴェルソの奏でる、繊細で奥深い世界観に満たされました。現代のフルートのメカニカルな構造と異なり、キーが1つしかなく、その他はすべて管体に穴があいているだけという素朴な楽器であるとのことで、同じ管楽器を演奏する者としてはその操作の難しさと同時に、バッハがトラヴェルソの性能を限界まで想定して書かれた曲であることが感じられました。

最後に再び3重奏で、J.S.バッハ「トリオソナタBWV1039」。この曲は2本のフルートと通奏低音のために書かれていて、それをソプラノサックスとトラヴェルソ、そして通奏低音をチェンバロが担当していました。緩・急・緩・急の4楽章構成の教会ソナタ様式になっており、バッハらしい緻密な対位法を感じられる曲でした。

[開催概要]

豊かな自然に囲まれたギター文化館で、音楽から始まる日曜日。
今回はオランダにてモダン楽器による古楽演奏をテーマに研鑽を積んだサクソフォーン奏者、坂口大介さんのアンサンブルをお招きします。
歴史の新しい現代の楽器サクソフォーンで奏でられるバロック音楽の世界。ぜひお楽しみください。

[プログラム]
J.S.バッハ / トリオソナタBWV1039
J.S.バッハ / トラヴェルソの為のソナタBWV1030より第2、3楽章
オトテール / 2重奏の為の組曲より
ヘンデル / トリオソナタ HWV389


[出演者 プロフィール]
武澤泰子 Taiko Tekezawa
幼少期よりピアノを嗜んだのち16歳よりフルートをはじめ、桐朋学園大学音楽学部を卒業後、オランダへ留学しデン・ハーグ王立音楽院、フラウト・トラヴェルソ科にて修士課程修了。
​音楽院在学中よりトラヴェルソ奏者としてオランダ国内のオーケストラプロジェクトやアンサンブルに参加する一方、
現代フルート奏者として現代曲の初演にも携わった。これまでにフルートを吉川久子、坂橋矢波、白尾彰、フラウトトラヴェルソ及びルネッサンスフルート、ロマンティックフルートをケイト・クラーク、ウィルバート・ハーゼルゼットの両氏に師事。
​スペインのフルート奏者、パブロ・ソーサ・デル・ロサリオ氏とのデュオ、La Conochiave(ラ・コーノキアーヴェ)メンバー。
​オーケストラ•ユヴェナリス メンバー。
https://www.flutiacot.com

鴨川華子 Hanako Kamogawa
東京音楽大学ピアノ科を経て同大学研究科チェンバロ専攻修了。第9回国際古楽コンクール<山梨>チェンバロ部門にて最高位。第7回栃木[蔵の街]音楽祭賞受賞。1998年ブルージュ国際古楽コンクール・チェンバロ部門入選。ソロ活動の他、室内楽の通奏低音奏者として多くのアーティストと共演、録音にも参加している。バッハの森チェンバロ教室講師。ジョーバン・バロック・アンサンブル、オーケストラ・ユヴェナリスメンバー。

坂口大介 Daisuke  Sakaguchi
茨城県日立市出身。昭和音楽大学卒業。東京芸術大学大学院修了。2020-2022年までオランダに渡欧、ハーグ王立音楽院にてモダン楽器による古楽演奏をテーマに研鑽をつむ。artist certificated music 修了。サクソフォンで古楽を奏でるバロックオンザサキソフォンのコンサートシリーズを展開中。[クローバー・サクソフォン・クヮルテット]バリトンサクソフォン奏者。CD「クローバー」「プレシャス(レコード芸術特選盤)」「ゴールドベルク変奏曲」をリリース。

[日時]
2023年11月19日(日)
10:45開演(10:30開場)

[会場]
東京労音ギター文化館
茨城県石岡市柴間431−35

[入場料]
一般    1500円
高校生以下 1000円
当日受付にてご精算ください。

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