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大人の電子ピアノの選び方とお値段【販売員は教えてくれないウソ・本当】

これからピアノを始めたい大人の方、また昔はアップライト・グランドピアノを使っていたけど、久しぶりに再開しようかなという再チャレンジ組が最初に検討するのが、「電子ピアノ」の購入では無いでしょうか。

巷には楽器販売店による現在売り込み中のピアノの高評価記事がいっぱいありますが、今回はあえて、「その電子ピアノ、大人が自宅に置いて趣味で楽しむのに本当に適してますか・・?」という目線で、かなりばっさりと機種の評価をつけます。

今日本で売れている順に、多くの機種をレビューしていますが、人気モデル以外のマイナーな電子ピアノについては網羅できていません。段々と加筆していく予定なので、どうぞご容赦ください。

それでは見ていきましょう。

大人が買う電子ピアノに重要な要素

鍵盤を押した強さに反応して強弱が変わるタッチセンサー

これはまずマストです。
少し専門的な話ですが、電子ピアノのセンサーは、1番安いモデルでは各鍵盤につき「1つ」、上位に行くにつれて「2つ」あるいは「3つ」備わっています。

基本的なつくりとしては、鍵盤の下に圧力センサーが配置されており、キーをまずおろした瞬間の圧力でタッチの強さを測ります。

これだけだとほぼオモチャのピアノのようなつくりになってしまうのですが、次に2つ目のセンサーが、押し切ったあとでどのくらいの力で鍵盤をおさえ続けているかを測ってくれます。

これはアフタータッチセンサーというのですが、この仕組みが1970年代に開発されたことで、一気に電子ピアノでもある程度まともにピアノ練習ができるという環境に向けて前進することになりました。

近年の上位モデルには、上の動画にあるようにトリプルセンサー=3つ目のセンサーが各鍵盤に備えられています。

3つ目のセンサーは、通常の2つのセンサーでは測れない、戻り切る前の鍵盤の微妙な動きをさらに高速に捉える役割を担います。

この違いが出てくるのは、トリル=高速で2本の指を交代させる技術を使うときです。タララッと装飾する音ですね。

2つのセンサーしかないピアノでは、速いトリルの演奏にピアノが付いてこない、反応しきれないため、かなり演奏が難しくなります。

ただ、センサーが充実するほどに値段も実勢価格で2-3万円くらいずつ一気に跳ね上がり、たいていピアノのフォルムもゴツゴツしたものになります。ここは予算とスペースとの相談ということになるでしょう。

センサー自体についてはヤマハの開発力がかなりダントツの星5。

ただ、ローランドはモデリング音源というものを採用しており、1鍵盤に一種類の音を元々収録してあてがっているのではなくて、弾いたときのタッチに応じて音の特性を計算して出力する仕組みになっています。
センサー自体の作りというより、サウンドの作り方でカバーしているため、良いヘッドフォンで聴いたときに、ローランドの電子ピアノには独特の音のリアル感があります。

ただ、私自身はまだ経験していませんが、ローランドの電子ピアノで配送時や中古購入時にセンサーに不具合が出たという友人に割とたくさん出会ったことがあります。

後述するペダルでもそうですが、堅牢さという意味では電卓の基礎技術があるカシオに多大な安心感があります。

カワイやカシオのピアノは、センサー部分の精巧さは一般に弱い印象です。価格に関係なく、あまりキータッチに感動するようなモデルに出会ったことは私はありません。ただ、他の面でずば抜けている点もあるので、総合的に検討してみてください。

鍵盤センサーの作り込み

ヤマハ:★★★★★
ローランド:★★★★
カシオ:★★★★
カワイ:★★★

ペダルがしっかりしていること

次に大切な要素は(ソステヌート・サステイン)ペダルです。ペダルを何でも好きなものに付け替えできる一部のモデルはよいのですが、ほとんどの電子ピアノはそのメーカーごとの付属のペダル、多くても2〜3種類しか使うことができません。

ペダルにもメーカーごとにかなり良し悪しがあるので、ここも注目してチェクしましょう。

カシオの純正ペダルは、SP-3とSP-20の二種類です。


SP-3は「踏んでいる」「踏んでいない」の2段階だけのフットスイッチですが、実勢価格1,800円ほどで手に入ります。
さすがのカシオの耐久性も魅力で、1〜2時間の練習を月に12回くらい行うハードな状況でも、少なく見積もって3年くらいは優にもってくれます。

ペダル下部のグリップもよく効くので、勢いのあるポップス曲などでえいやっと踏んでもズレてストレスを感じることはありません。

カシオSP-20は、より上位モデルのペダルで、実勢価格は2,200円くらいとなっています。
角張った少し珍しいデザインをしていますが、ある程度の重量感もあり、SP-3より全く遠慮せずに踏み込むことができます。対応機種も非常に多く、ほぼ使い心地は満点といってよいペダルです。

ヤマハの場合、SP-3に対応するペダルの機種はFC-5となります。

FC-5は耐久性については非常にすぐれていますし、底面のグリップ感もすぐれています。しかし、切り替えスイッチがないため、一部のピアノ機種では踏んでいるときに「踏んでいない」と判断され、踏んでいないときに「踏んでいる」と判断されてしまうアベコベ現象が起きることがあります。

ヤマハの電子ピアノに使うのであれば解決方法があるのですが、それ以外の幅広いモデルで使えるフット・スイッチではありません。実勢価格はおよそ1300円です。

ヤマハの上位のサステインペダルは、FC4Aです。
こちらの実勢価格は少し高めで、3000円を超えてきます。しかし、丸っこいデザインは自宅で靴下だけで踏む場合にも足を傷めることがありません。

なお、こちらもFC-5と同じように、他社製のものに使う場合のアベコベ解決のためのスイッチはありません。あくまでヤマハのピアノのために使用するものなので、ピアノを買い換える場合はおそらくペダルもまとめて買い換える必要があります。

カワイの場合、別売りのペダルはあまり充実していませんが、一般的な外部の大手メーカーのペダルを使用することができてしまいます。

1番おすすめなのは、エムオーディオのペダルです。
3000円を切る実勢価格で、バネのきしみもなく、滑りもせず、切り替えスイッチがあるため他社製ピアノでも使うことができます。

ペダルについては、ローランドは最も点数が低くならざるをえません。

実勢価格は6000円くらいですが、ヤマハ同様に切り替えスイッチがありません。フォルムもカシオの安価なものと大きくは変わりません。

ローランドの最新ピアノFP-30Xなどに最初から付属のペダルはこれよりも機能が劣っているため、付け替えは必須です。

独立メーカーのエムオーディオなどのペダルに付け替えるほうが、おそらく満足度は高いでしょう。

ペダルのまとめ
カシオ:コスパと耐久性が最高
★★★★★

ヤマハ:他社との互換性が✗
★★★★

エムオーディオ:独立メーカーで最高の仕上がり
★★★★

ローランド:ペダルの仕上がりは十分だが、コスパが主要メーカーで最も悪い
★★★

大人が買う電子ピアノに要らない・避けないといけない要素

「トランスポーズ」「録音」「キーボードが光る」以外の機能は、ついていればいるほど練習しにくい

トランスポーズとは、実際はドを押したときに、たとえば4つ上の音を鳴らしたいというときに、それを自動的にやってくれて、曲のキーが簡単に変えられるという機能です。

アコースティックのピアノでは、ある曲を実際に手の動きを変えてキーを上げて/下げて弾くというのはたいへんな芸当ですが、電子ピアノであればボタンひとつで実現できます。

曲の構成を勉強するのに、これは外せない機能です。
また勉強の目的では、自分の演奏を振り返るのに録音機能が充実していることはマストでしょう。カシオ専売特許の、弾くべきキーが光ってくれる機能も、初心者にとっては最高にわかりやすいです。

しかし、機能がついていればいいということはなく、ここに挙げた以上の機能は、基本的についていればいるほど練習の気が散るという認識でOKだと思います。

ピアノに付属のアプリは、いまのところ特に各社練習の役にたつようなものはなく、専門の練習アプリやオンラインレッスンを使ったほうがずっとクオリティが高いです。

また、機能がたくさんあるピアノほど、スイッチを入れてからの立ち上げ時間も長くなります。
ボタンが多数ある見た目は、指の動きを追うときにも目の上のたんこぶのように、何となく気になってソワソワしてしまうという大人初心者が多いものです。

音色の変更機能はみんな買って3日しか使わない

これも、電子ピアノの特色表記あるあるですが、200もの音源を切り替えられるといった言葉をよく目にします。
基本的に、あなたがこれから練習時に使う音色は、ジャズを弾こうと、クラシック、ポップス、テクノ、ゲーム音楽、ラテンピアノ、何のジャンルであっても基本的に「グランドピアノ(001)」と書いてある音色だけです。

ほかの音色は購入時にしか切り替えませんので、くれぐれもこれを重視して後悔することのないように…。

電子ピアノはヘッドフォンで練習するのが基本。スピーカーで弾くことはほとんど無い

「10センチの大口径スピーカー」が売りの電子ピアノに心惹かれていますか?あなたのライフスタイルにもよりますが、多くの学習者にとって、思ったよりメリットを感じることはないはずです。

電子ピアノの99%は、どんなに大きなスピーカーがついていようと、ヘッドフォンを差したほうが結局良い音で弾くことができます。

そもそも周りに迷惑にならずに何時でも弾けるということもあって、あなたは購入後、おそらく9割方の練習時間をヘッドフォンをつけたままで過ごすことになります。

じきに、ヘッドフォンを抜き差ししてしまったりするほうが、面倒に感じるようになるでしょう。

スピーカーの音質にこだわったモデルは、たいていピアノに厚みと重量が出てきます。よほどの理由がない限り、試弾の際にも自前のなるべく良いヘッドフォンを持っていって、ヘッドフォンから聞こえる音のよしあしでもって判断するようにしましょう。

スピーカーが自慢のモデルよりはるかに金額の安いモデルのほうが、内蔵されている音の響きはずっとよいということもザラにある話なのです。

売れ筋電子ピアノ、趣味で弾く大人目線での評価一覧

以下が現在売れている主要モデルについて、上記の目線で比較を行った一覧です。

ヤマハP-125B、P-125WH
60〜70台の鍵盤数でスリム:✗
余計な機能が無くてシンプル:○
ヘッドフォンで弾いたときの内部音色がよい:○
対応ペダルの評価:✗
タッチセンサーの評価:○
鍵盤の重さのリアル感:○
総合評価:★★★★★★★★(80点)
実勢価格60,000円

鍵盤の重さが価格に大して素晴らしいです。キーの光沢の質感もよく、本格的なピアノから鍵盤だけ取り出してきたような印象を受けます。
サイドのフレームも非常に小さく、まるでアップル製品のようなシンプルさを感じます。置いたときの部屋の圧迫感もありません。
最大の欠点は、付属のペダルが下位モデルのもので、かつヤマハのペダルには他社製との互換性も無い点でしょう。


カシオPrivia PX-S1100BK
60〜70台の鍵盤数でスリム:✗
余計な機能が無くてシンプル:○
ヘッドフォンで弾いたときの内部音色がよい:○
対応ペダルの評価:○
タッチセンサーの評価:△
鍵盤の重さのリアル感:△
総合評価:★★★★★★★(75点)
実勢価格60,000円

カシオのフルサイズモデルの決定版です。音の好みは人によって別れますが、元気なサウンドのヤマハよりかなりまろやかで丸みを帯びた印象の仕上がりです。長時間演奏していても、飽きのこないサウンドだと思います。

上位モデルとしてPX-S3000があり、700以上の音色が追加されていますが、大人の一般的な練習に多数の音色は不要です。


コルグB2 BK
60〜70台の鍵盤数でスリム:✗
余計な機能が無くてシンプル:○
ヘッドフォンで弾いたときの内部音色がよい:△
対応ペダルの評価:○
タッチセンサーの評価:△
鍵盤の重さのリアル感:○
総合評価:★★★★★★(65点)
実勢価格60,000円

チューナーなどピアノ関連の音響製品でも代表的なメーカーであるKORGのピアノです。
私が弾いた感想としては、キーの感触が一般的なこの価格帯のピアノのなかではかなりよいです。おそらくスプリングのつくりが良いのでしょう。
内部音色については、ローランドのピアノ音色のような弾き方の違いに繊細に反応する感じはありません。何となく音がぼやっとした印象がありますが、予算に対しては平均的な仕上がりでしょう。
大口径のスピーカーがついていますが、これは通常ヘッドフォンでしか弾かない電子ピアノとしては重量が増えて不要なものです。

ローランドFP-30X
60〜70台の鍵盤数でスリム:✗
余計な機能が無くてシンプル:○
ヘッドフォンで弾いたときの内部音色がよい:◎
対応ペダルの評価:✗
タッチセンサーの評価:✗
鍵盤の重さのリアル感:△
総合評価:★★★★★★(55点)
実勢価格80,000円

本記事で取り上げているピアノのなかで、リアルなピアノのサウンドの再現という意味ではおそらく最高のピアノです。普通の電子ピアノなら音が鳴らないのではないかというくらいそっと鍵盤に指をかけても、しおらしい音が鳴りますし、勢いよく弾けば、生のピアノらしいガンガンうるさい音がしっかり鳴ってくれます。
鍵盤の感触は平均的なモデルという感じで、他社で5万円台で手に入るものもあるかなと思います。また、15キロと、他社製よりも2周りほどゴツゴツして、届いたときにぐっと重さを感じます。


電子ピアノで、どう練習したらうまくなれますか?

いまや、オンラインで身に付けられないスキルというのは、ほとんど残っていません。電子ピアノの最高の相棒は、最高の通信教育やオンラインのコーチです。

大人のピアノ学習について、2013年頃からかなりたくさんの革新的な学習法が登場してきました。もうアメリカでは、2020年以降実に6割くらいの楽器愛好者は音楽教室には通っていません。みんな、アプリや動画で勉強しているのです。過半数のひとがです!

現代では、最寄りの教室に一人だけ所属している先生に教わって、教室主催の発表会に2万円払ってよしみで出演して終わり、という学習スタイルはスタンダードでないことを覚えておきましょう。オンラインの練習コーチは、より電子ピアノでの学習にぴったり合った学習方法を提案してくれるはずです。

まるで個人にテーラーメイドで設計してもらえる旅行プランのように、世界中から世界中から自分にぴったりのレッスンをオンラインで選んで、また同じような音楽の嗜好をもったアマチュア同士で集まる発表会や同好会を地元で探してお互いに感想をシェアしあい、自分のブログやSNSを開いて毎日の練習成果や悩みを共有するのがこれからのスタンダードのピアノ練習法です。

ピアノの学習アプリのスタンダードとして、Yousicianがあります。
また、英語の分かるかたなら世界的な動画レッスンのUdemyがおすすめです。

36万人が高く評価している講座が、世界のどこからでも受けられます。

英語の講座は厳しいという方の場合、時間の定めなく受けられるピアノレッスンで日本で1番生徒数が多いのはフォニムです。プロの奏者が自分の練習に日々アドバイスや感想を届けてくれるのが人気となっています。


アプリでの学習がお好みなら、Skooveが1番おすすめ。
オンラインレッスンと違って先生は喋ってくれませんが、マイクであなたのピアノの音を拾って、自動的に演奏があっているか判定してくれます。
ゲーム感覚で上達できるのが魅力です。

コンノ楽器の大人のピアノレッスンは、人気があります。
今野先生は、「聖霊女子短期大学卒業。東京コンセルヴァトアール尚美研究科修了。ウイーン国立大学夏季セミナー参加。」という素晴らしい経歴の方であるとともに、グループレッスンではかなわない、個別の大人の要望にフィットするレッスンを届けてくれます。


無料のYouTube動画でも、とても質が高くて見入ってしまうようなものがたくさんあります。


独学用の本も、対面レッスンより質の良いものがたくさんあります。

ちょっと本が小さいので譜面台に置いて練習できないのが玉にきずですが、周りでも実際に無理なく続けられたというひとの多い名著です。本についているコードから、スマートフォンでお手本動画の視聴ができます。

本当の初心者、初めてピアノに触る方向けで、多少経験があるような方は物足りないかと思いますが、とてもわかりやすい本です。

DVDも、先生の声や姿が載っているものは珍しく独学で始める方にはとてもありがたい名著です。目で見てしっかりピアノが理解できるでしょう。