大人のピアノ練習、定番の「バイエル」教本は厳禁!のワケ
日本では広く用いられている、子どものピアノ学習のスタンダード曲集「バイエル」。
大人で音楽教室に通おうとしている方や、久しぶりにピアノを再開しようとしている方で、大人でもバイエルを手にとることがあるかもしれません。
でも、そのバイエル、ちょっと待ったほうがいいかもしれません。
本当に今のあなたにぴったりの学習教材かは、だいぶ検討する余地があります!
バイエルについて調べていたのに、いきなり何を見せるんだと言われてしまうかもしれませんが、私自身がピアノの練習法についてとても気に入っているのがこの動画です。ビートルズのポール・マッカートニーが、自分がひとにピアノを教えるなら、というテーマで講演をしたときの様子ですが、こんな想像力をくすぐるレッスンが理想じゃないかと思います。
バイエルも、うまく計画的な練習に取り入れられるならよいのですが、曲数も多いので、半年もバイエルを触っていたのではかなりもったいないように思います。
どんなケースならバイエルを有意義に使えるのか、過去の教室運営経験をもとにお話します。
大人がバイエルを使って練習する方法
まず、バイエルの紙のバージョンは、とても製本が開きにくく、学習しにくいことを、使ったことがある大人のピアノ学習者なら覚えているでしょう。
幸い、いまはバイエルにはKindle版が出版されています。
楽譜用の専用バインダーもありますが、Kindle版をiPadで拡大縮小しながら勉強するほうが、私はだいぶ快適に演奏することができました。
https://www.amazon.com/Elementary-Method-Piano-Alfred-Masterwork-ebook/dp/B00WY64H5C
日本語版はKindle化が進んでいないので、英語版のリンクをはっています。
もともとバイエルには楽譜以外にほぼ日本語の文章は書いていないようなものなので、曲名だけもともと手元にあった紙のバージョンと見比べながら演奏すれば、個人的にはさほど問題は感じませんでした。
大人のバイエルのメリット
基本的な技術の分解
3つの和音、7つの和音、基本的なリズムなど、それぞれを構成する基礎技術の要素はしっかり考えられています。
しかし、どの曲もあまりメロディやリズムに音楽性のあるものではないので、1週間以上飽きずに演奏できるものはないように思います。
今の子どもであれば、ゲーム曲集や、それこそ鬼滅の刃から技術を抜き出したような曲集も充実してきています。よほど集中して練習に取り組めるし、友達に披露しても楽しいので、教室の選択としてはずっとそちらのほうが有意義でないかと思います。
鬼滅の刃のプレイリストをバイエルレベルで弾ける本
ファイナルファンタジーの名曲をバイエルレベルで弾ける本
ドラクエの名曲をバイエルレベルで弾ける本
ただ、バイエルを物凄く簡単に感じるというアマチュアピアニストにとっては、それはそれでメリットがあります。
主な用途は、暗譜の効果的な練習です。大人のピアニストの場合、暗譜の能力が子どものときより落ちていて、本番を迎えるのが不安だなというひとが多くみられますが、バイエルくらいのシンプルな曲集は、それを避けるための効果的なトレーニング題材として活用することができます。
詳しくは、暗譜能力を大きく高める方法についてどこより詳しく解説した記事がありますので、こちらをご覧ください。
大人のバイエルのデメリット
解説がえられない
昔であれば、楽譜だけが載っていて、何も解説がないという教本の存在は当たり前でしたが、今は独学用にもっと楽しく模範演奏動画が観られたり、解説の読み物が充実している教本・通信教育がたくさんあります。
バイエルは、数ページありきたりな説明が載っているだけで、残りは先生の技量に任せるようなスタイルの曲集です。
バイエル一択だった時代より、選曲がもっと練られている曲集もあるので、私としてはあえてバイエルを使う理由はなくなってきているのではないかなと思います。
手のストレッチと強化方法だったり、姿勢・フォームについての解説、曲を分解したトレーニングのやり方など、もっとうまく教えてくれる通信教育やDVDつき教本などが今はたくさんあります。
具体的なリストは下で改めて列挙します。
ヘ音記号の習得が遅れる
バイエルはヘ音記号を本格的に使い始めるのが際立って遅い教本。
バイエルでスタートした学習者は、左手の成長がかなり遅れて、右手一本足打法のような変わった弾き方になってしまいがちだというのが、バイエルが海外でほとんど使われなくなった主な要因です。
アメリカの大人のピアノ再挑戦では、カバレフスキー、クレメンティ、バッハの1番かんたんな曲集が題材に選ばれることが圧倒的に多くなっています。
バイエルくらいの実力で、もっと楽しく学べる方法はある?
アメリカでは、すでに6割くらいのひとが音楽教室でも独学でもなく、通信教育やオンラインレッスンでピアノを学んでいます。
既製のカリキュラムにおんぶにだっこで上達できるので、独学用教本で学ぶよりもかなり高い確率で挫折無く憧れの曲まで到達します。
その場で先生が次の曲を選んでいくやり方よりも、実際にたくさんの方が学んでいる共通カリキュラムで学ぶことができるので、「突然難しすぎる!」「何ヶ月もレベルが変わっていない気がして飽きてきた・・」という不安もほとんどありません。
一冊ごとに自分で設計するのが楽しいという方にはおすすめしませんが、何万人もの学習者が実際に上達済みのルートをたどったほうが安心できるという完全初心者の方もいることでしょう。
現代では、最寄りの教室に一人だけ所属している先生に教わって、最寄りの教室主催の発表会に2万円払ってよしみで出演して終わり、という学習スタイルはスタンダードでないことを覚えておきましょう。
まるで個人にテーラーメイドで設計してもらえる旅行プランのように、世界中から世界中から自分にぴったりのレッスンをオンラインで選んで、また同じような音楽の嗜好をもったアマチュア同士で集まる発表会や同好会を地元で探してお互いに感想をシェアしあい、自分のブログやSNSを開いて毎日の練習成果や悩みを共有するのがこれからのスタンダードのピアノ練習法です。
ピアノの学習アプリのスタンダードとして、Yousicianがあります。
また、英語の分かるかたなら世界的な動画レッスンのUdemyがおすすめです。
36万人が高く評価している講座が、世界のどこからでも受けられます。
英語の講座は厳しいという方の場合、時間の定めなく受けられるピアノレッスンで日本で1番生徒数が多いのはフォニムです。プロの奏者が自分の練習に日々アドバイスや感想を届けてくれるのが人気となっています。
コンノ楽器の大人のピアノレッスンは、人気があります。
今野先生は、「聖霊女子短期大学卒業。東京コンセルヴァトアール尚美研究科修了。ウイーン国立大学夏季セミナー参加。」という素晴らしい経歴の方であるとともに、グループレッスンではかなわない、個別の大人の要望にフィットするレッスンを届けてくれます。
アプリでの学習がお好みなら、Skooveが1番おすすめ。
オンラインレッスンと違って先生は喋ってくれませんが、マイクであなたのピアノの音を拾って、自動的に演奏があっているか判定してくれます。
ゲーム感覚で上達できるのが魅力です。
無料のYouTube動画でも、とても質が高くて見入ってしまうようなものがたくさんあります。
独学用の本も、対面レッスンより質の良いものがたくさんあります。
ちょっと本が小さいので譜面台に置いて練習できないのが玉にきずですが、周りでも実際に無理なく続けられたというひとの多い名著です。本についているコードから、スマートフォンでお手本動画の視聴ができます。
本当の初心者、初めてピアノに触る方向けで、多少経験があるような方は物足りないかと思いますが、とてもわかりやすい本です。
DVDも、先生の声や姿が載っているものは珍しく独学で始める方にはとてもありがたい名著です。目で見てしっかりピアノが理解できるでしょう。