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長いブランクのあとで、もう一度ピアノを楽しくやり直す方法

今回はこんなご相談を受け取りました。メッセージありがとうございます。

私は5歳から14歳までピアノを弾いていて、部活が忙しくあまり満足に弾けていないながらも、ピアノ教室では一応中・上級というところまで行きました。いま32歳になって、あれからほぼ触れていないので18年くらいは弾いていないことになります。

先週もう一度演奏を始めてみたのですが、手がとにかく硬くかたまっているように感じます。昔ほど上手に弾くことが全然できませんし、難しいところが来るたびに毎回すごく遅くなってしまいます。

何から始めれば、もう一度楽しくピアノが弾けるでしょうか?

私自身も、かつては教室の運営側にも関わっていましたが、業種が代わって転勤を繰り返すうちに何年も弾かない期間ができてしまっていました。

その後ピアノを落ち着いたタイミングで再開して、今は多分昔より指も回っているし、何より昔より自分が本当に弾きたい曲の練習を楽しむことができています。

YouTubeやツイッターに自分の演奏をアップして感想をもらうのも、昔一人で練習室にいたときよりもずっとイキイキした音楽生活を感じることができています。

ほかにも教室運営時に色々なピアノ再開組の大人の生徒さんの成り行きを見ていましたので、そんな私の立場から、今回は長いブランクを経てピアノを再開する大人のための「やるべきことリスト」「NG・やってはいけないことリスト」をまとめてみました。

おすすめ①:「昔いちばん良く弾けた思い出の曲を出してくる」

最初におすすめの大人のピアノ復活手法は、むかし使っていたのと同じ楽譜を引っ張り出してくることです。昔の発表会の写真が出てきて、あれよあれよと思い出探しタイムになってしまいがちですが、少しこらえて、自分が1番よく弾けた記憶がある曲を5から10曲くらい見つけてきましょう。

曲のレベルはそんなに高くなくても、それはそれで初見や暗譜の練習に有効活用することができます。楽譜を見ればはっきり思い出せるけど、2ページ目からはちょっと記憶が怪しいぞ・・というくらいがちょうど良いでしょう。

中学以降もピアノをやっていたようなひとの場合は、あまり最後の方に弾いたソナタやエチュードはよろしくないかもしれません。まずは指をパラパラ滑らせずに、しっかり動きのリハビリができるような曲を見つけましょう。

さて、何年も前であっても、何度も何度も演奏していた作品は、筋肉の記憶がどれほど強力であるかに驚くかもしれません。

先に鼻歌でメロディを歌おうとしても思い出せなかった曲の後半も、流れでゆっくり弾いていったら、勝手に指が動こうとしませんか?
この「懐メロ練習法」で、新たに曲を覚えようとするまえに、1−2ヶ月ほど指を慣らして、まずは10曲ほどのピアノレパートリーを再生させましょう。新曲を使って、気が散りながら指の体操もするのよりも、よほど早く楽譜の読み方や指の回し方の感覚が戻ってくるはずです。
あれ、動こうとしない・・?それはそれで大丈夫です。ほかにもおすすめの練習方法はたくさんあります。

ここでの重要なステップは、昔のように弾けなくてもイライラしないことです。大人のいま、慌ただしい生活を送っているけれど、昔の曲を弾いてリハビリする1−2ヶ月だけはどうか少し辛抱してみましょう。電子ピアノなら、音色を予想外なものにしてみたり、転調(トランスポーズ)して気分を変えてみるのもいいかもしれません。

有名曲なら、YouTubeやApple Musicで、別の楽器でのカバーバージョンをアップしているひとがたくさん見つかるでしょう。伴奏と一緒の演奏をしてみるのも、昔弾いていたときとは予想外な曲の一面が見えてきて、とても気分がよいはずです。

おすすめ②:恐ろしいほどゆっくり弾く

むかしも先生に言われていたし、ゆっくり練習は身についていると思っているでしょう。

・・そう言って実際にピアノに向かった大人のピアノ再学習者は、たいてい1時間後にはフルスピードで曲を弾いています。

そして、昔より回らなくなった指に幻滅して3日でピアノをやめてしまうでしょう。

ギャップの長い大人のピアノリスタート時には、科学的に考えて絶対にスローなテンポで曲を再開すべきです。過去に指の腱鞘炎や手首の関節炎を患ったことがある人や、ある程度中高年でピアノを再開するひとの場合は、なおのことです。いま子どものときのように適当な気持ちで指を叩きつけていたら、相当な確率で来週は手首に鈍痛を感じることになるでしょう・・。

始めたばかりの場合は、手の筋肉を、演奏したい曲に追いつくことができるレベルまで再構築する必要があります。
アマチュアレベルでリスタートしたいなら、まずは練習時間自体も無理のない1回20分から始めるのが良いでしょう。
そこから、手と気持ちの準備ができたら、最大30分、40分、そして最終的には1時間くらいまで持っていくのがよいかと思います。

曲を演奏する速度についても同じことが言えます。まずは速度を遅くして、だいたい初日は半分の速度にしてから、毎日徐々にフルスピードに戻します。だまされたと思って、やってみてください。一日目、二日目はこんなに軽くていいの?となるかもしれませんが、これくらい拍子抜けするスタートが、このあとの再成長の要です。

おすすめ③:ハノンやツェルニーからはちょっと離れよう

ピアノを再開するならと、ちょっとホコリ臭いハノンやツェルニーを引っ張り出してこようとしたあなた、少しお待ちください。

ある程度経験のあるひと向けに、しっかり指の調子を戻しながら、生き生きしたフレーズも楽しめるような教本がいくつかあるんです。

ジャズハノンは、ハノンのフレーズをもとに、全部転調したり装飾を付けたり、きらきらしたジャジーなフレーズとして楽しめるようにした曲集です。

全部通して、バーで弾いても、誰もあのつまらなくてとにかく辛いハノンだとは気づきません。

ツェルニーより音楽性が高くて、よりロマン派寄りの練習曲として海外で人気の、クラーマー練習曲集なんかも、いかがでしょうか?

今からピアノを再開するなら、「単に手を動かしたいわけじゃなくて、興味をもった曲をさらっと弾けるようになりたいんだ」という方もいるでしょう。
このような耳コピ、即興の夢をかなえるには、上記の本がベストです。即実践できる、耳コピできるひとが裏側で考えているコツが覗ける斬新な教本です。

一人でのピアノから、もっと上手くなりたい、楽しく学習したいときは?

カリキュラムを組み上げるのが思ったより大変・・と思ったあなたに

アメリカでは、すでに6割くらいのひとが音楽教室でも独学でもなく、オンラインレッスンでピアノを学んでいます。

既製のカリキュラムにおんぶにだっこで上達できるので、独学用教本で学ぶよりもかなり高い確率で挫折無く憧れの曲まで到達します。

一冊ごとに自分で設計するのが楽しいという方にはおすすめしませんが、何万人もの学習者が実際に上達済みのルートをたどったほうが安心できるという完全初心者の方もいることでしょう。

現代では、最寄りの教室に一人だけ所属している先生に教わって、最寄りの教室主催の発表会に2万円払ってよしみで出演して終わり、という学習スタイルはスタンダードでないことを覚えておきましょう。

まるで個人にテーラーメイドで設計してもらえる旅行プランのように、世界中から世界中から自分にぴったりのレッスンをオンラインで選んで、また同じような音楽の嗜好をもったアマチュア同士で集まる発表会や同好会を地元で探してお互いに感想をシェアしあい、自分のブログやSNSを開いて毎日の練習成果や悩みを共有するのがこれからのスタンダードのピアノ練習法です。

ピアノの学習アプリのスタンダードとして、Yousicianがあります。
また、英語の分かるかたなら世界的な動画レッスンのUdemyがおすすめです。

36万人が高く評価している講座が、世界のどこからでも受けられます。

英語の講座は厳しいという方の場合、時間の定めなく受けられるピアノレッスンで日本で1番生徒数が多いのはフォニムです。プロの奏者が自分の練習に日々アドバイスや感想を届けてくれるのが人気となっています。

コンノ楽器の大人のピアノレッスンは、人気があります。
今野先生は、「聖霊女子短期大学卒業。東京コンセルヴァトアール尚美研究科修了。ウイーン国立大学夏季セミナー参加。」という素晴らしい経歴の方であるとともに、グループレッスンではかなわない、個別の大人の要望にフィットするレッスンを届けてくれます。


アプリでの学習がお好みなら、Skooveが1番おすすめ。
オンラインレッスンと違って先生は喋ってくれませんが、マイクであなたのピアノの音を拾って、自動的に演奏があっているか判定してくれます。
ゲーム感覚で上達できるのが魅力です。

無料のYouTube動画でも、とても質が高くて見入ってしまうようなものがたくさんあります。


独学用の本も、対面レッスンより質の良いものがたくさんあります。

ちょっと本が小さいので譜面台に置いて練習できないのが玉にきずですが、周りでも実際に無理なく続けられたというひとの多い名著です。本についているコードから、スマートフォンでお手本動画の視聴ができます。

本当の初心者、初めてピアノに触る方向けで、多少経験があるような方は物足りないかと思いますが、とてもわかりやすい本です。

DVDも、先生の声や姿が載っているものは珍しく独学で始める方にはとてもありがたい名著です。目で見てしっかりピアノが理解できるでしょう。