ニグさんが表現する若者の戦い。

目次
第一章 ニグさんの魅力と変化するゲーム実況。
第二章 ニグさんの肉声から読み解く彼の思い。
第三章 生放送と動画の連動となぜスーパーチャットしたくなるのか。
第四章 なぜネットで配信するのか。ニグさんが表現する若者の戦い。

第一章 ニグさんの魅力と変化するゲーム実況
 ニグさんを知ったきっかけはマイクラ人狼リーグだ。動画を見て一番最初に違和感を抱いた。私はその正体を知りたくてニグさんの動画や生放送を視聴した。その結果あることに気づいた。
ニグさんの動画は大枠はニコニコ動画のノリが流行っていた時代のマイクラ実況で、細かいところがYouTubeのノリのマイクラ実況だったのだ。結論から言えばそのことがニグさんの魅力だ。

「大枠はニコニコ動画のノリが流行っていた時代のマイクラ実況で細かいところがYouTubeのノリのマイクラ実況」とはどういうことなのか、ニグさんの動画について書く上でぜひ触れておきたいので書く。
 私の認識ではゲーム実況が爆発的に広まったのはニコニコ動画で、(私の体感では)2013年ぐらいまではYouTubeのゲーム実況はニコニコ動画の転載が多かった。最も当時のゲーム実況自体がグレーゾーンであり、ニコニコ動画に投稿されたゲーム実況自体が転載みたいなものだった。
  死神さんやサンヘルプさんと言った最初からYouTubeにゲーム実況を上げていた人もいた。しかしYouTubeゲーム実況文化自体がニコニコ動画の転載が中心だったので、自然とYouTubeゲーム実況文化もニコニコ動画ゲーム実況文化のようなものがそのまま投稿されていたのだ。

しかし時経つにつれYouTubeで人気が出る形のゲーム実況動画に変わっていた。なぜそうなったのか。あくまで私の推測でしかないのだが書いていこう。
YouTubeにはYouTubeで再生されやすい投稿方式というものがある。それがおそらくYouTuberが有名になっていく中でYouTuberになるための方法としてYouTubeで再生されやすくなるマニュアルのようなものが発見されて、広まっていった。それがゲーム実況の世界でも使われるようになった。
 YouTubeで再生されやすくなる方法というのは、その方法をすれば勝手におすすめ動画に表示されるのようなもので、たくさんの人に見てもらう上で即効性があるものだ(ただしそれをしたところで動画が面白くなるわけではない)。逆に言えばその方法をしていない動画は見られにくくなる。
 ニコニコ動画はタグを使用し自分から興味がある動画を探す方法がとても使いやすい。それに加えてランキングで有名な動画を見ることができる方法の二つを使っている。タグから自分の好きの分野の全期間で最も人気がある動画を見ることができる。そのため昔から人気の動画も、新人が作った新しい動画もどちらも発見されやすくなっている。
 しかしYouTubeおすすめ動画や関連動画を多く表示してくれるが、それは勢いのある最近出た動画が中心で、古い動画や新人が作った動画が見られにくい。

 そのためYouTubeで動画を見てもらうには、まずYouTubeで人気が出やすい投稿方法を行う。ざっくりと言えば頻繁に一定の長さの動画を投稿していく、それをすればある程度発見されやすくなる。その後チャンネル登録(所謂お気に入り登録)をしてもらい、相手のトップ画面に新作動画が表示されるようにしてもらう。
 これにより、配信者は自分をチャンネル登録してもらうことで自分の動画を見られやすくなる。しかしチャンネル登録してもらったところで受動的な視聴者には新作動画しか見つけてもらえないのだ。
 今YouTubeはたくさんの人が見ているし、お金も稼げている。しかしその裏には昔の動画投稿文化が影を潜め、YouTubeのシステム上伸びる、おそらく運営にとって一番都合の良い動画が伸びるように作られて、見られるようになっている。
 
最近動画投稿サイトを見始めた視聴者はそれ何の違和感も覚えない。逆に昔から動画を見ている人はもうすでに自分の居場所を見つけている。動画投稿サイトのことだってもう何年も楽しみつくした後だ。

ならばその間の世代はどうなのだろう。

自分たちの上の世代がたくさん面白いものを見させてくれて、それを好きになったのに自分の世代にはその時好きなものは表に出にくくなり、似て非なるものが自分が好きだったものとして発展しつつけている。自分より下の世代の人たちはそういうものばかりみている。
自分が好きだったものを作っていた人たちも今は時代に合わせたものを作っている。

 ニグさんはちょうどその間の世代だ。年齢的にはYouTubeのシステムに影響されて、投稿される動画が変わるようになる前での時代の動画を見てきた最後の世代の人だ。
 そして投稿者としてもかつてのゲーム実況文化の時代に活躍し始めた最後の世代の人である。

 ニグさんの初期の動画は完全にニコニコ動画に影響を受けていたころのゲーム実況のノリだ。そういう動画を見ていると、昔を思い出して懐かしい気持ちになる。今はあまり作る人が少ない自分が好きだった頃の動画を愛して作ってくれている。
 そしてところどころ今の時代のノリも感じて、作っている人が今の時代を生きている人だという感じもする。それがニグさんの魅力である。


 
 第二章 ニグさんの肉声から読み解く彼の思い。
 私はなぜニグさんがこういう動画を作っているのか興味をもった。そしてこういう動画を作っていてしんどくならないのかも疑問に感じた。
 昔好きだったものが、受け入れられなくなった時、すっきり手を引けば美しい思い出のままいつまでもいつでも思い出すことができる。
 逆にあえて昔のままの動画を出して今も人気な人もいる。
 そんな中で昔人気で自分は今も好きなものを今風にアレンジしながら投稿するという行為がどのような気持ちで行われているのだろうか。
 私はニグさん肉声を探した(この場合本人の作品外の言動の意味で、ゆっくりボイスではない生声実況と言う意味ではないです)。そして見つかったなんとnoteでだ。
 そこにはゲーム実況への熱い思いが書かれていた。そしてその中でいくつか納得できる記述があった。

ニグさん本人のnoteから引用する。
1年半ぶりにYouTubeに戻ってきたら浦島太郎感覚だった話。|ニグ|note

引用ここから
私は受験勉強のために1年半ほど活動を休止していた。人生を決める受験とYouTubeとでは、天秤に比べるまでもなかった。
そして受験が終わり戻ってくると、YouTubeの世界は変わっていた。
今までの経験や戦略が全く通用しない。自分の価値観が古いと感じてしまう。そしてそれを認めたくない謎のプライド。
ここ数カ月はこのような考え方との葛藤だった。このnoteを書きながら考えると、子供みたいな思考回路だったとほほえましくなるものだ。
自分は今でも「ゲーム実況は仕事にできない」と考えている。YouTubeというものに依存している以上、仕事にした場合にはいつ収入がなくなるのかがわからないからである。
「俺これだけ稼いだぞすごいだろ」とはならないし、なれない。YouTubeで手に入れたお金はあくまでも「収益」であり、視聴者の時間を奪って手に入れたものであると考えているからだ。
しかし、今のご時世ではそのような考えも古いのではないかと考えさせられる。毎日投稿は当然、一本ごとの再生数が低くても、動画数を稼ぐことによって人気を得るのが主流になりつつある。
ここで自分の揺らぐ信念を貫いて逆張りをし続けても、成功し続ける可能性は小さい。
変わっていなかったのは、自分の方だった。世界は既に変わってしまっていた。あの頃のYouTubeはもうなくなっていた。
一年半の勉強生活から戻ってきた私にとっては、まるで浦島太郎のような気分だった。
引用ここまで。

諦めなかった2020年、広げたい2021年。|ニグ|note

引用ここから
浪人は楽しかったです。辛いよりも楽しい方が上回りました。自分の脳みそや試行レベルがメキメキ上がる感覚は新鮮でした。浪人ってそこまで悪いことではないと思います。みんなも浪人しよう(沼)。
そんな1月~2月でしたが、正直、動画編集をしたい欲を我慢するのが限界でした。そのため何をトチ狂ったのか、気が付いたら国公立の受験をブッチして編集してました。親に「編集したいから国公立受けるのやめるわ」って言われた時は驚かれました。
結局学費と浪人時の学費を全部負担することで許してもらえました。(ちなみに返済は完了しました)

3月、実況者復帰
そして3月、ゲーム実況者として帰ってきました。
私が受験勉強に追われた約1年半のブランクを埋めるため、とにかく編集しては投稿していました。配信も含めたらほぼ毎日活動していました。
帰ってきたときに、視聴者の皆さんの温かいコメントが本当にうれしかったです。「まだ私を待っている人がいるんだ」という気持ちが湧き、投稿を続けることが出来ました。
引用ここまで
どちらの記事もニグさんの言葉で書かれた、気持ちが伝わってくるのだ。もとの記事ではその後ものすごいペースで活動を続けたことや、スランプ、事務所に所属したこと、有名実況者とコラボした時のことなどが書かれている。ぜひ見てみて欲しい。

 読んでいて謎が解けたというか、驚いた。ニグさん10代だったのだ。24歳ぐらいのイメージだった。それと同時に納得できるところがたくさんあった。
 ニグさんはゲーム実況がどんどん変わっていった時期に受験をしていた。それによって時代の変化に取り残されてしまった。
 しかしそれにより、いろんな人が自分のやり方を変えていった時に居なかったことで、昔の魅力を持ったまま現在動画を出すことができたのだ。

それと同時に本人が自分の考えを意図して変えようとしていた。そのことがニグさんの動画の雰囲気を作っていたのだ。
 作り手がインタビューで言っていることが正解とは限らない。結局は作品を見て感じたことがすべてなのだが、ニグさんの場合は書いてあることを読んで非常に納得できた。


第三章 生放送と動画の連動となぜスーパーチャットしたくなるのか。
 ニグさんは現在ややアレンジしたこれまで通りの動画だけでなく生放送も行っている。生放送ではスーパーチャットというものを解禁している。
 これは視聴者が配信者にお金を直接送ることができるサービスだ。ニグさんはこれでかなりのお金を手に入れた。先ほどのニグさんの文章から見るに、ニグさんは投げ銭でたくさんお金をもらえて一年間の浪人時代の費用と私立大学の学費(そのうち何割か何年分かは文脈からは不明)を手に入れるほどの大金だ。
 それはすごいことであると同時にニグさんが好きだった頃のYouTubeにスーパーチャットで大金を稼ぐことはなかった。もらえるものはありがたくもらうだろう。特にニグさんの場合は活動を続けるための手段としてお金を稼いで親に返さないと行けなかった。ニグさんにとってやや矛盾しているところもあるだろうが、私はニグさんの生放送を見る中でニグさんに投げ銭したくなる気持ちを理解した。

なぜニグさんにスーパーチャットしたくなるのだろうか。
ただ単純にスーパーチャットをしてもらうならば所謂VTuberのよう配信をする方がもらいやすい。
普通に考えればニグさんがこれまでしてきたような長さのゆっくり動画を作って投稿することは、ものすごい労力が関わる割にスーパーチャットはもらえない。スーパーチャットだけもらうなら、肉声の生放送を毎日数時間するほうが効率的だ。
しかし私はゆっくり動画をものすごい労力をかけて作っていることがはニグさんがスーパーチャットをたくさんもらえている理由だと推測している。

ニグさんは普段の動画はゆっくり実況で、コラボや生放送時は肉声で実況している。
 普通に考えたらゆっくりニグさんを好きをなるところと肉声ニグさんを好きになるとことは違うので非効率的だと言える。しかしニグさんはその方法で大成功している。
 なぜか。あくまで私の感想なのだけど、それはニグさんの人徳と努力と実力の結果だ。
 ニグさんの動画を見ればこの人は本気で動画を作っているというのがわかる。動画を見ることで、「こんなに本気で、俺たちが見て面白いと思う動画作っている人の生配信を見たい」と思わせるものがある。
 ニグさんをコラボなどで知った人は、初めは肉声のニグさんが面白かったので本人のチャンネルに来たのにゆっくりなのかとがっかりするかもしれない。しかし見てみれば彼の動画彼が動画にかけている意識を感じられる。
 熱意を感じたからと言ってそれが面白いと感じるかは謎だ。それは人の好みで、全員が全員面白いと思う作品を目指す必要はない。しかしニグさんの面白いと感じる人はたくさんいる。
 ニグさんの肉声動画と、ゆっくり動画はどちらも全く違うものだが、片方を見るともう片方も見たくなるような力がある。だからこそどちらも成功しているのだと思う。

 ニグさんのゆっくり動画はどこか昔懐かしいものだ。だからこそ、見ていて嬉しい気持ちになる。
ニグさんはスーパーチャットでお金を使うことができる世代が、たくさん見ていた頃のマインクラフト動画を作っている。ものすごい熱量をかけて、ところどころ今風にアレンジして。本気で動画作ってくれる。見ている側としてはとても嬉しいものだ。とても応援したくなることなのだ。

しかもニグさんにスーパーチャットしたお金は限りなく多くの割合がニグさんに入る。だったらたくさんのお金ニグさんにスーパーチャットしたいと思うのだ。

 ニグさんの配信には様々な種類がある。基本的にゲームをしているのだが、FPSのようなリアルタッチのゲームの時もあれば、普通のアクションゲームの時もあれば、マインクラフトの時もある。
 マインクラフトでは普通にプレイすこともあれば、ニグさんのゆっくり実況の動画の上側のような作業配信もある。ニグさんの動画は作業時間が非常にかかるものだ。そのためたまにその作業中を配信したりしている。そういうのも見ていて楽しい。
 (もちろんニグさんの動画には代表作であるMODを入れてかなり作業したものをものすごくテンポよく編集するマインクラフトだけでなく地球防衛軍なども実況している)
 
ゲーム実況の世界でゆっくりと肉声途中で変更したり、普段どちらかでたまにもうどちらかの動画を作る人もいる。
しかしニグさんのように肉声とゆっくりどちらも同じ割合で制作しており、どちらでも成功していて、それらが上手くかみ合い相乗効果で伸びて言っている人は珍しい。

第四章 なぜネットで配信するのか。ニグさんが表現する若者の戦い。
 この世に絶対的な善も悪も存在しない。例えば「ニグさんの動画は面白い。しかし受験前にニグさんの動画を毎日12時間見ていたら入試には落ちる。しかし受験に失敗したことがきっかけでその人の人生はより良いものになるかもしれない」という風に。
 だから何かをすることが正しいなんてことはないし、正しいことを求めるべきではない。逆に何かを間違っているというのも一方的なことである。正解は誰かに聞くものではなく、自分で考えて、それでも答えがでない割に、その時その時で考えて実行しってその中で上手くいくことがれば、上手くいかないものある
 
 何が言いたいのかニグさんはゲーム実況において実力も実績も才能も熱意も持っている人だ。しかし同時に動画を見ていて心配になる。特にnoteを見てしまった後若者は守られて欲しいという思いがどうしても出てしまう。ニグさんは自分の世界を外に表現することで戦っている人だ

 ニグさんは非常に珍しいタイプの人だ。

ニグさんの現在の状態。
1中学生から活動を初め花開きもう20歳前後まで活躍している。
2活動はとても軌道に載っている。
3活動の裏方(編集)も自分で行っている。
4活動でキャラクターを演じていない。ニグ=ニグの中の人に限りなく近い。
5編集にとても手がかかる方法(ゆっくり実況)。を取っている
6一人で活動していることが多い。
7活動を通してたくさんのファン獲得しファンからお金をもらっている。
8活動を愛している。

この時点でニグさんがどれだけすごい人かわかると思う。ただニグさんの現在の状態にはあと二つ足すものがある。

9 その活動は数字がはっきり出るものである。
10 その活動がどうすれば数字が伸びるのかはだいたいわかっている。その上で本人はその方法を取りたいとは思っていない。

 ニグさんが活動しているYouTubeの世界は数字がものすごくはっきりわかる世界である。そしてその数字で評価が決まってしまう世界である。
 そしてその数字をどうすれば伸ばせるのかはなんとなくわかっている。しかしそれをしてもシステムに飼いならされるだけで、システム自体がいつ仕様変更するのかわからない。それに自分のやりたいことができなくなってしまう。

 ニグさんは才能も実力も実績もある。やる気も、熱意も、実況へも愛もある。ファンとしてはそういう人が活動してくれるのは嬉しし、そういう人に成功して欲しい。
 しかし活動していくなかで数字に飲み込まれないか、お酒であったり悪いものに依存して、人生を棒に振ってしまわないか心配だ。
 私は一ファンだ。ただの昔ゲーム実況や、ゆっくり動画や、マイクラ動画をたくさん見ていただけのただのファンであって、ニグさんのように実際にマイクラゆっくり実況を作って大成功している人に何か言える立場ではない。
 しかしニグさんの年齢を知ってしまった以上やっぱり思うものがあるのだ。私だってニグさんとはそんなに年齢は変わらない。しかし若者は大人たちに守られて欲しいという思いがどうしてもある。
 私にはニグさんに何か言えるだけの何かは何もない。ニグさんにもっと詳しいファンや実況仲間、先輩ならニグさんに何か言えるかもしれない。
 数字なんて気にせず、自分のペースで動画を作って欲しい。何かに追い詰められることなく、実際そうすれば彼の収入は一時的には減るだろうし、登録者数も数人は減るかもしれないだから彼にそういうことを言えるのは、彼の生活を助けることができるニグさんの家族か、もしくは彼に仕事やコラボなどを提供することが出来る人だけだ。

私も含めて彼の動画を見るとたくさんの人が彼を応援したくなる。スーパーチャットをたくさんしている人がいる。
お金を急にたくさん稼いだ人が天狗になったり、ファンを金づるのように見えてしまい失敗した話は良くある。しかしニグさんはそうはならないだろう。というよりなれないだろう。彼の中で動画を見ることも動画制作も大切なこと過ぎてそれを無下に扱ってしまうと自分自身を否定してしまう。そういうのがわかるからこそ彼にスーパーチャットをしたいと思う人がたくさん出てくる。お金の使い方で失敗することはあっても、悪意を持ったお金の使い方はしなさそうな魅力もある。そして何より動画も生放送もちゃんと面白い。
ニグさんはこれからも動画は伸びていくだろう。しかしそのことがプレッシャーになってニグさんという実況にものすごく意識と愛を持った人が潰れてしまうのは嫌だ。

ニグさんと同年代で活躍して成功して行った人はたくさんいる。同じYouTubeのゲーム実況の世界で言えば日常組の4名もニグさんと同じ年齢の時に大成功した人たちだ。
しかし日常組とニグさんには最大の違いがある。それは時代だ。日常組の時代にはまだどういう動画が受けるのかわかっていないところがあった。ニグさんの時代にはもうどういうものが受けるのかがだいたいわかっている。そのうえでニグさんはその道に背を向けているのだが、完全に背を向けているわけでもない。
誤解を恐れずに言えばその葛藤を抱えながらものを作っている人の作品は見ていてとても面白い。しかしそれは意欲がある若者の消費である。そんな声に答えて自分の葛藤を演出するようなファッション監督になっても誰も得しないだろう。

この記事は結果として彼の活動7年目の記念日に公開されることとなった。彼が今度も活躍していくことを楽しみにしている。同時に私のような彼が今後も活躍していく声に答えなくて良いと思う。
ニグさんにはゲーム実況の世界での実績がある。両親に返さないといけないお金も返せて。コラボだってたくさん出来ている、濃いファンもたくさんいる。
ニグさんはオンリーワンだ。彼のような実況者はめったにいない。Youtuberは登録者が多い、再生数多い、収入がいくらだとか、どういう企業案件を受けたかとか、スーパーチャットを何円もらえたかとかで語られる。しかしそれは一人一人のことを良く知らない人がなんとなく彼らのすごさを理解したつもりになって安心するためのものだ。
本人のすごさや面白さはそこではない。一人一人に生まれた時代があって、背景があって目標があり、動画投稿や配信との向き合い方がある。それを比べることは無意味だ。

今は動画投稿や配信は稼げる場所として使われている。それを仕事としている以上お金を稼げることは大切だ。それにより動画投稿やゲーム実況、生配信をすることが市民権を言えたとも言える。それはたくさんの先人のおかげだ。しかしそれはあくまで動画投稿や生配信やゲーム実況、ゆっくり実況の魅力を知らない人向けの説明でしかない。
今後、社会は動画サイトの魅力を知っている人たちが作っていく時代になる。その上、これまで上の世代を納得させるためについてきた、嘘ではないが、本当とも言えないこと。動画投稿、生配信、ゲーム実況、ゆっくり実況の魅力はそういうことをすれば「お金が儲かる」からだというものの呪いを解く時ではないだろうか。
あくまで上の世代を納得させるための説明に、いつの間に自分たちまで騙されてしまっていないだろうか。

私は好きな実況者さんが何人もいる。その人たちのことが好きなのはお金持ちだからではない。面白くて、楽しくて、感じるものがあるからだ。
私の場合、小学生、中学生時代に見ていた実況者さん、私の場合しにがみさんやサンヘルプさんはお兄さんたちが一緒に遊んでくれているような感覚だった。
今見ている実況者さんたちは、その人たちの言動に共感したり、純粋見て楽しんだり、時に反感を覚えたり、こういう時自分ならどうするかと考えさせられたりするものだ。
ゲーム実況の場合はゲームをする中で、その中にある彼らの思想や生き方、感じ方、考え方を受け取ることが出来るからだ。
それは一方的かもしれないけど、そこから受け取ったものは自分の生き方に確実に影響がある。影響を受けた自分が、いろんなところで生きていくなかで、いろんな人に少しずつ影響を与えて行って、それが世界中に広がって、自分に元の影響を与えてくれた人をにも気づいたら影響を返している。
ネットの関係は一方的であり、正しい人間関係でないかもしれない。しかしもっと規模を大きくしていれば、お互いに影響しあっている関係だ。
ネットで何かを配信することって本当はそういうことなのではないだろうか。

 残念なことに現在のネットはあまりよろしくない手段でお金を稼いでいる人もいたりする。おかしいことだらけだ。
 それはネットの魅力をお金が稼げるという風にしか感じられなかった人たちとその人たちの考えを真に受けてしまった人たちがしていることでもある。その人たちがしていることが裸の王様に見えてしょうがない。

 ニグさんはそうなる前のネットを知っている最後の世代だ。彼はすでに現状に違和感を抱き、自分なりの表現方法を使って、自分の信じるものを発信している。
ニグさんより年下の世代のゲーム実況動画好きの方が、現状をどう思うのかはわからない。何割かはおかしいと思うかもしれない。そのうち何割かはどうすれば良いのか自分なりの方法を思いつくかもしれない。しかしなんとくおかしいと思っている人でもじゃあ具体的にどうすれば良いのか、どういうものが自分の理想をしているのかわからない人もいるだろう。そういう人がニグさんの動画を見た時に、自分はこういうものが好きだ。こういうことが良いと思うかもしれない。
私はニグさんの動画を見た時に感じたこと、忘れかけていた実況熱を再び持つきっかけの一つとなった。こういうもの好きでいて良いんだと思えた。

何が正しくて、何が間違っているはわからない。かと言ってそれはあんまりよくないでしょというゲーム実況やネット配信をしている人もいる。そういうのを否定するのは非効率的だ。そういうのが好きな人もいる。喧嘩しても仕方ない。それよりも自分の好きなものを好きだと言うほうが良いだろう。

おかしいことだらけの世の中で、足踏みすることすらままならない中、自分の大好きな世界で自分が好きだと思うことを表現しているニグさんは今の時代のハイティーン、アラツーの生き方のモデルを示してくれているのではないだろうか。



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