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「史上最高の映画100」(2022) 和訳&考察

英国映画協会が10年ごとに発表している「The 100 Greatest Films of All Time」。映画の原題って意外と日本人には馴染みがなかったりして、いざ観たいというときに参考にしづらいな〜と思うので、和訳をしてみた。

ちなみに、今年は1639人の映画評論家や映画関係者が投票。1952年に企画が始まって以来、女性監督の作品が1位に選ばれるのは初めてとのこと。

ランキング1~100位

1. ジャンヌ・ディエルマン(1975, シャンタル・アケルマン)
2. めまい(1958, アルフレッド・ヒッチコック)
3. 市民ケーン(1941, オーソン・ウェルズ)
4. 東京物語(1953, 小津安二郎)
5. 花様年華(2000, ウォン・カーウァイ)
6. 2001年宇宙の旅(1968, スタンリー・キューブリック)
7. 美しき仕事(1998, クレール・ドゥニ)
8. マルホランド・ドライブ(2001, デイヴィッド・リンチ)
9. これがロシヤだ(1929, ジガ・ヴェルトフ)
10. 雨に唄えば(1951, ジーン・ケリー & スタンリー・ドーネン)

11. サンライズ(1927, F・W・ムルナウ)
12. ゴッドファーザー(1972, フランシス・フォード・コッポラ)
13. ゲームの規則(1939, ジャン・ルノワール)
14. 5時から7時までのクレオ(1962, アニエス・ヴァルダ)
15. 捜索者(1956, ジョン・フォード)
16.午後の網目(1943, マヤ・デレン &  アレクサンダー・ハミッド)
17. クローズ・アップ(1989, アッバス・キアロスタミ)
18. 仮面/ペルソナ(1966, イングマール・ベルイマン)
19. 地獄の黙示録(1979, フランシス・フォード・コッポラ)
20. 七人の侍(1954, 黒澤明)

21. 裁かるるジャンヌ(1927, カール・テオドア・ドライヤー)
21. 晩春(1949, 小津安二郎)
23. プレイタイム(1967, ジャック・タチ)
24. ドゥ・ザ・ライト・シング(1989, スパイク・リー)
25. バルタザールどこへ行く(1966, ロベール・ブレッソン)
25. 狩人の夜(1955, チャールズ・ロートン)
27. SHOAH ショア(1985, クロード・ランズマン)
28. ひなぎく(1966, ヴェラ・ヒティロヴァ)
29. タクシードライバー(1976, マーティン・スコセッシ)
30. 燃ゆる女の肖像(2019, セリーヌ・シアマ)

31. 8 1/2(1963, フェデリコ・フェリーニ)
31. 鏡(1975, アンドレイ・タルコフスキー)
31. サイコ(1960, アルフレッド・ヒッチコック)
34. アタラント号(1934, ジャン・ヴィゴ)
35. 大地のうた(1955, サタジット・レイ)
36. 街の灯(1931, チャールズ・チャップリン)
36. M(1931, フリッツ・ラング)
38. 勝手にしやがれ(1960, ジャン=リュック・ゴダール)
38. お熱いのがお好き(1959, ビリー・ワイルダー)
38. 裏窓(1954, アルフレッド・ヒッチコック)

41. 自転車泥棒(1948, ヴィットリオ・デ・シーカ)
41. 羅生門(1950, 黒澤明)
43. ストーカー(1979, アンドレイ・タルコフスキー)
43. キラー・オブ・シープ(1977, チャールズ・バーネット)
45. バリー・リンドン(1975, スタンリー・キューブリック)
45. アルジェの戦い(1966, ジッロ・ポンテコルヴォ)
45. 北北西に進路を取れ(1959, アルフレッド・ヒッチコック)
48. 奇跡(1955, カール・テオドア・ドライヤー)
48. WANDA/ワンダ(1970, バーバラ・ローデン)

50. 大人は判ってくれない(1959, フランソワ・トリュフォー)
50. ピアノ・レッスン(1992, ジェーン・カンピオン)
52. 不安は魂を食いつくす(1974, ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー)
52. 家からの手紙(1976, シャンタル・アケルマン)
54. 軽蔑(1963, ジャン=リュック・ゴダール)
54. ブレードランナー(1982, リドリー・スコット)
54. 戦艦ポチョムキン(1925, セルゲイ・エイゼンシュテイン)
54. アパートの鍵貸します(1960, ビリー・ワイルダー)
54. キートンの探偵学入門(1924, バスター・キートン)
59. サン・ソレイユ(1982, クリス・マルケル)

60. 甘い生活(1960, フェデリコ・フェリーニ)
60. ムーンライト(2016, バリー・ジェンキンス)
60. 自由への旅立ち(1991, ジュリー・ダッシュ)
63. グッドフェローズ(1990, マーティン・スコセッシ)
63. 第三の男(1949, キャロル・リード)
63. カサブランカ(1942, マイケル・カーティス)
66. トゥキ・ブゥキ / ハイエナの旅(1973, ジブリル・ジオップ・マンベティ)
67. アンドレイ・ルブリョフ(1966, アンドレイ・タルコフスキー)
67. ラ・ジュテ(1962, クリス・マルケル)
67. 赤い靴(1948, マイケル・パウエル & エメリック・プレスバーガー)
67. 落穂拾い(2000, アニエス・ヴァルダ)
67. メトロポリス(1927, フリッツ・ラング)

72. 情事(1960, ミケランジェロ・アントニオーニ)
72. イタリア旅行(1954, ロベルト・ロッセリーニ)
72. となりのトトロ(1988, 宮崎駿)
75. 千と千尋の神隠し(2001, 宮崎駿)
75. 悲しみは空の彼方に(1959, ダグラス・サーク)
75. 山椒大夫(1954, 溝口健二)
78. サンセット大通り(1950, ビリー・ワイルダー)
78. サタンタンゴ(1994, タル・ベーラ)
78. 牯嶺街少年殺人事件(1991, エドワード・ヤン)
78. モダン・タイムス(1936, チャールズ・チャップリン)
78. 天国への階段(1946, エメリック・プレスバーガー & マイケル・パウエル)
78. セリーヌとジュリーは舟でゆく(1974, ジャック・リヴェット)

84. ブルーベルベット(1986, デヴィッド・リンチ)
84. ミツバチのささやき(1973, ビクトル・エリセ)
84. 気狂いピエロ(1965, ジャン=リュック・ゴダール)
84. ゴダールの映画史(1988, ジャン=リュック・ゴダール)
88. シャイニング(1980, スタンリー・キューブリック)
88. 恋する惑星(1994, ウォン・カーウァイ)

90. パラサイト(2019, ポン・ジュノ)
90. ヤンヤン 夏の想い出(1999, エドワード・ヤン)
90. 雨月物語(1953, 溝口健二)
90. 山猫(1963, ルキノ・ヴィスコンティ)
90. たそがれの女心(1953, マックス・オフュルス)
95. 抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-(1956, ロベール・ブレッソン)
95. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト(1968, セルジオ・レオーネ)
95. トロピカル・マラディ(2004, アピチャッポン・ウィーラセタクン)
95. 黒人女(1965, センベーヌ・ウスマン)
95. キートン将軍(1926, バスター・キートン)
95. ゲット・アウト(2017, ジョーダン・ピール)

結果分析

・最多受賞は4本(ヒッチコックとゴダール)。
・次点が3本(キューブリック、タルコフスキー、ワイルダー)。
・日本映画は8本。小津、黒澤、宮崎、溝口。
・2000年代の映画は9本。最新は『パラサイト』と『燃ゆる女の肖像』(2019)。

考察&感想

・ランキングはあくまで盛り上げのためだと思うけど、こういうものの意義って、「継承」と「スポットライト」にあると思っていて、『ジャンヌ・ディエルマン』が選ばれるのは後者の意味ですごくいいと思う。映画人にも愛されている作品という印象がある。

・一方で、今更『市民ケーン』とかが選ばれるのは「継承」に寄りすぎてない…?とも思う。「現代版市民ケーン」とか言われる『ソーシャル・ネットワーク』や『Mank』などフィンチャーの功績もあるのだろうけど、同じものが選ばれ続けるなら10年ごとに更新する意味とは…。

・個人的には、ワイルダーが3作もランクインしてるのが意外で嬉しい。なんとなくウェルメイドでストーリー重視の作風は映画人には好まれない印象があったし、実際過去の2002や2012にランクインしたのは『お熱いのがお好き』だけだったみたいだけど、ワイルダーの時代が来てる…?

・他にもいろんな団体がランキング発表しているみたいだけど、少しずつ毛色や切り口が違う。例えばBBCは、『21世紀の偉大な映画ベスト100』とか『史上最高の外国語映画100』とか。

・ちなみに、監督480人が投票したものもある。大きくは変わらないけど、カサヴェテスの『こわれゆく女』、スコセッシの『レイジング・ブル』が入っていたり、少しだけ「Director's Director」の作品寄りな気もする。

参考リンク

歴代の変遷を考察されている方がいて、興味深い。

NY Timesも変遷をビジュアライズしてくれてる。


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