第3話 アイドルに大切なもの

「マシュ、エリザベート、今まで柔軟体操とダンスの練習を続けてきて、だいぶ上達したね。今日からは発声練習もしようと思う。そこで、特別講師を呼んできたよ。」
すると、大きな人影がトレーニング室に入ってきた。
「ダ・ヴィンチ女史からお二人の発声練習の教官役を頼まれました。私の指導はスパルタですぞ。」
「あなたは…レオニダス王…!」
マシュが言うと、レオニダスは少し笑いながらこう言った。
「ははは、今日の私は教官ですからな。王などと畏まらず、そうですな…是非コーチと呼んで頂きたい。」
「では、レオニダスコーチ…!よろしくお願いします!」
「すごく大きなよく通る声ね!よろしくお願いするわ!」
マシュとエリザベートが言うと、レオニダスは早速授業を開始した。
「声というものはただ闇雲に発すれば良いというものではありません。無理な発声は声帯に負担をかけ、すぐに痛めてしまうもの。それでは歌って踊るなど夢のまた夢!では安定して発声するためにはどうするのか。ここで大切になってくるのが筋肉です!」
「筋肉…!」
「コーチが言うと説得力が段違いね…」
「歌うということは自らの肉体を楽器にするということ。そのために必要な筋肉を鍛えましょう!さあ、まずは腹筋から!」
「「はい!!!」」

「筋トレ…楽しいですね…」
「嘘でしょ…お腹も背中も腕も足もクタクタよ…大した回数はやってないはずなのに…」
「筋トレもまた、闇雲に回数を重ねればいいというものではありません。正しいトレーニングをすることで、少ない回数で大きな成果を得ることができるのです。では少し休憩したところで、次は腹式呼吸の練習です!」
「まだ続くのーーー?!」

〜〜〜〜〜〜

「もう…ムリ…」
エリザベートはぐったりと倒れこんだ。
「大丈夫ですか?その、お水です。」
「ありがと…マシュは元気ね…どうしてそんなに元気なのかしら。地味なトレーニングばかりで飽きてきたわ…早くライブして歌いたいわね。」
そんなエリザベートに、マシュはふと気になることを尋ねた。
「エリザベートさんは、どうしてライブがしたいのですか?」
すると、エリザベートは驚いた顔で即答した。
「どうしてって…楽しいからよ!」
「楽しいから…ですか?」
「そうよ!子豚たちにアタシの歌を聞かせる、最高に楽しいわ!そういうマシュは、どうしてアイドルになりたいのよ?」
「どうして…?…それは、カルデアが、資金難で…それで…皆さんのために、お金を…」
すると、エリザベートの顔色が変わった。
「…マシュ、つまりアンタは、お金のためにアイドルを目指すの?」
「えっ…」
「アンタは!アイドルを何だと思ってるのよ!アタシは!アンタとならきっと最高に楽しいアイドルになれると思ったからユニットを組んだのに!」
すぅ、と息を吐いて、エリザベートは静かに続けた。
「もういいわ…アンタとのユニットは解散よ。私は1人でアイドルを目指すわ。」
そう言って出口に向かった。
「そんな…!待ってください、エリザベートさん!」
ドアが閉まる。1人残されたマシュは、自分の発言の何がいけなかったのかを考えるが、答えは出なかった。

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