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スピーチプライバシー(SPEECH PRIVACY)って何?

「スピーチプライバシー」とは

 会話等の音声の内容が第三者に聴かれる「音声による情報漏洩」や、周囲の音声が作業者の邪魔になる「音声による作業妨害」の問題の総称として使われています。 個人情報や機密情報が会話に含まれる医療施設、オフィス、銀行などを計画する場合には、ぜひ配慮したいものです。

スピーチプライバシーの設計方法を少し紹介しましょう

 スピーチプライバシーの設計では、仕事をしているときに邪魔に聞こえてくる会話の大きさを低減したり、聞かれたくない会話を他人が理解できなかったり気にならないような音環境としたりする必要があります。

会話にふくまれる個人情報が隣に聞こえている様子

 スピーチプライバシーの程度は聞こえてくる会話の大きさ(S dB)とそれをマスキングするその場の暗騒音の大きさ(N dB)の差((S-N) dB)とに関連することがわかっています。
 S-Nが大きいと会話の内容を理解することができ、小さいと会話は聞こえても会話の内容が理解できず不明瞭になります。

 スピーチプライバシーの改善にはS-Nを小さくする必要があり、次に紹介するABCDルールに基づいて、それぞれの効果を総合して設計を行うことが可能です。

ABCDルール

「ABCDルール」とは、以下のようにスピーチプライバシーで行われる対策を、その頭文字をとって示したものです。

ABCDルール


 吸音の目的は、吸音材を増やすことによって、音の大きさ、すなわち音のエネルギーを低減することにあります。一般的に知られている響きと関連した吸音材の効果とは異なり、吸音によって音のエネルギーを下げるという効果があります。

 スピーチプライバシーは、吸音(Aの対策)だけでは解決できませんが、吸音処理が十分に行われていると、室内の声の大きさを低減できるため、必要とされる音の遮断性能を小さくする(Bの対策)、サウンドマスキングの音(マスキングを目的として人為的に発生させる音)を不快に感じない大きさに抑える(Cの対策)、距離が離れた場所で会話の大きさを小さくする(Dの対策)など、その他の対策においても総合的に効果を発揮します。
 設計においてはまず室内の適度な吸音処理を行うことがスピーチプライシーへの配慮の第一歩となるでしょう。


 スピーチプライバシーのための設計規準や評価方法やABCDルールについては、「日本建築学会環境基準 AIJES-S0003-2021 スピーチプライバシーの評価規準と設計指針ー音声による情報漏洩防止ー」で詳細に説明されているので、興味のある方は参考にしてください。


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