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収まるべきところに収まったかのように
昼さがり、ラグジュアリーな路面店が軒を並べる、世界の中心地みたいな風情の路地で、足をくじいて盛大に転んだ。
そのあと、ブランチなどと洒落こんで呼ぶのさえも憚られる優美なカフェレストランで昼食を馳走になった。満席を埋める人々はみな美しく成型されており、おそらく東京カレンダーから抜け出してきて、また誌面の中に帰るのだと思う。
普段は進んで自己開示する類ではないあの人も、今日は収まるべきところに収まったかのように珍しく饒舌だった。一見するとわからないけれど、ほんとうはこういうところに相応しい出自の人なのだ。
そして私はといえば、ラグジュアリーな路面店が軒を並べる、世界の中心地みたいな風情の路地で、やっぱり足をくじいて盛大に転ぶ。
そうやってこの場所で永遠に上滑りし続けるであろう自分の存在感と、どこであろうと並んで歩くことに違和感を覚えないあの人のことが、私はけっこう好きだったりする。
もしかしたら、これが幸せというものなのかもしれない。
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