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緊急訪問の壁

介護保険では、訪問看護をサービスと呼び、介護サービスを受ける人(病院でいう患者は)を利用者といいます。

私たち看護師はチームで利用者に関わります。
初めに契約をして、希望する看護が、どんな内容かを伺います。それを、いつ訪問して行うかを決めます。

週1~2回と利用回数を決める方が多いです。
訪問してケアを始める時は、前回からの変化がないかを見たり聞いたりして、血圧や体温などの数値や、症状の変化がないか看させてもらいます。
終わって帰る時は「では、来週」か「では〇曜日」と次に訪問する日時を伝えます。

月1回から始める利用者もいます。
状態が落ち着いているか、他の介護サービス(ショートステイや毎日デイサービスなど)を使っているからという理由です。今日の様子から看させてもらい、月に1回の訪問なら1ヶ月をさかのぼって、変わったことがなかったかを聞きます。そのなかに「これは心配」と、悪化しそうな兆しがあれば、ケアマネに伝えて、訪問頻度を増やします。

退院直後で病状が不安定な時や、急性憎悪といって、病状が悪くなったら毎日訪問します。安定したら回数を減らすか、卒業することもあります。

病名や状態によっては、1日に何回か伺うことが可能になります。

予定を決めて定期的に訪問して、急な変化が起こったら、緊急訪問の対象になります。

これは、契約上で、緊急時訪問看護加算(介護保険)や24時間対応体制加算(医療保険)を付けていると対応することになります。24時間看護師とつながる安心のため、初めに付けて毎月継続する利用者がほとんどですが、外すこともできるし、必要になったら付けることもできます。(この加算を算定しない訪問看護事業所は対応できませんが。)

いつもの訪問で、看護師と家族が看ていくうちに「これは心配」という状態を共有して、その心配なことが起こったら、家族から電話をもらいます。

病名や年齢、症状の出方はみなさん違うので、訪問した時に一人一人のオリジナルな対応方法を覚えていく感じです。

いつ起こるかわからない変化が起こった時、看護師の携帯電話が鳴ります。

という訳で、待機当番を看護師が交代でしています。
電話のお相手は病気と共に生きている人ですので、24時間365日対応です。

自分の当番の日は、トイレもお風呂も電話を持ち歩いて、夜は枕元に電話を置きます。お風呂で電話が鳴ったこともあります。犬の散歩中に電話に出たことも何度かあります。そんな時は、やっていたことを切り上げて訪問に向かいます。
休日の当番は、家事や買い物をしているところで電話が鳴ると、途端に仕事モードに切り替わります。

電話の内容が、予測した症状でない時もあります。「何が起こったの?」
利用者や家族と同じく看護師も不安です。

だから私たち看護師はチームになって、普段から一人一人の利用者の状態を共有します。基本はエビデンス(よいとされる根拠)があってこその個別性ですが、看護師全員の知恵を集結して、その人にとってのベストな対応方法を考えています。

待機当番は一人です。電話が鳴ると、解決できないことだったら、どうしようと不安がよぎります。
主治医に連絡しなければ解決できない時もあります。「先生に連絡がつかなかったら」とか、いろいろ考えを巡らせて訪問に向かいます。

でも、お宅に着いて玄関を開ける時には、目的は本人と家族と一緒に困ったことに向き合うこと、と思いを新たにします。

病気と共に生きている在宅療養者に、24時間365日安心して生活するお手伝いがしたいと心底思います。

けれども、家でテレビを見ている時に、画面から仕事携帯と同じ着信音が聞こえると「あっ、仕事!」とドキッとしてしまいす。

携帯電話をつかんで、勘違いと気づいて「テレビだわ」と苦笑い。

この感じをわかってくれる仲間がいることが大事。

A看護師「昨日、夕飯作ってる最中に電話が鳴ってね。ちょうど部活から帰ってきた息子に後は作ってもらったよ」
B看護師「大変だったね。自分のごはんは?何時に食べたの?」
なんて聞いてくれると、わかってもらえて嬉しくなっちゃいます。

待機当番になると、どの看護師も家族の協力に感謝して、仕事に出かけている。

仕事+αの緊急訪問には、みんなで昇る壁がある。



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