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ある寒い日の話

昨日は風がびゅんびゅん吹いていて、海はあまりみたことがないくらい荒れていた。


今日は少し落ち着いたものの、気温はぐんと下がったまま。手足がチクチク痛いほど冷え込む。
一緒に住んでいる女の子は、お弁当持ってどこかへ遊びに行った。ひとりのためにストーブをつけるのもなんだかもったいない気がして、島の珈琲店へ暖まりに行くことにする。



島に来たばかりの夏は、すれ違う人に挨拶するだけで精一杯だった。季節は移り、最近では言葉を交わしたり冗談を言い合うことも増えた。すれ違うたび温かさをもらう。



よくお魚をくれるおじちゃんが、今日はコーヒーをごちそうしてくれた。珈琲店の店主や、おじちゃんたちとおしゃべりする。
その場にいた3人のおじちゃんのうち、私が姓名を知っているのはひとりだけ。彼らも私の名前を知らないかもしれない。しかしそれは、日常生活の中ではなんの壁にもならない。


帰りにねぎを取りに来んさいと言われておじちゃんの家に寄ると、太い白ねぎとみかんをくれた。両手に抱えてお礼を言う。
優しさで生きている、と日々思う。



少し前まで色とりどりの葉を纏っていた山の木々は、冬支度を終え、寒そうに身を寄せあっているかのようだった。




なめらかになるまで、何度も何度も言葉を綴り直すのが好きだ。心地よく滑るまで、ひたすらにそれを繰り返す。
でも今日は、ぽんと書いて、ぽんと出してみることにした。なめらかな肌触りではないけれど、それもまた、私の言葉の一面だ。

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