ソラナックスを初めて飲んだときのこと
ソラナックスを初めて飲んだときのことをいまでも覚えている。
新卒でいまの会社に入ったぼくは連日終電かタクシー帰りの仕事に追われる毎日を送っていた。あまりに遅く帰る日が常態化していたせいで、たまに20時に帰っても家でなにをしたらいいかわからない、という状態になっていた。胸の動悸が出始めたのもちょうどその頃で、ひどいときは心臓がキリキリ締め付けられるような痛みを感じていた。
当時のぼくはこれが心の病だということに気が付かずに、いろんな病院を転々として身体検査を受けた。むろん身体に異常はない。それでも傷むぼくの胸。どうしたらいいのかが全くわからず家に帰るたびに泣いていた。
そんなとき、Twitterの医療系のフォロワーが「それはたぶん心の病気だから、心療内科に行ったほうがいいよ」と勧めてくれた。運よく近所のクリニックの予約を取れたぼくに、医者は一言こう言った。「過労です」
そして処方されたのがソラナックス。はじめて飲んだとき、それ以降の記憶がほとんどない。文字通り泥のように眠った。起きたとき驚いた。自分の身体が普通に動いていた。胸の痛みどころか動悸もなにも感じない。普通に戻れた。また嬉しくて泣いた。
数年後の今夜、ぼくはまたソラナックスを飲む。少し耐性ができたのか、あの日ほどぼくを眠らせてはくれない、それでもぼくをほんの少し解放してくれる魔法の薬がここにある。
君がいないと夜を過ごせそうにない。いつかは君を手放したいけど、それはまだ先の話になりそうだ。
今後ともよろしく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?