『SSSS.グリッドマン』ーーブルースドライブモンスターの雑記

 グリッドマン3連続です! もうおしまい! これで最後にするから、あと1回だけ! 小粒な語りこぼしをいくつかやらせてほしい!
 そういやこの前友達にグリッドマンを語ってたら、「普通の人はそんなに真面目にアニメを見ないよ」って言われた。もしかして皆新条アカネが主人公であるってことにも気がついてないんだろうか? もしかして最後まで流行りのメンヘラ美少女として消費してるの? いやいやアカネは主人公でしょ。そういう感じの話をやります。

冒頭のドラゴンボール
 『SSSS.グリッドマン』は願いを叶えたドラゴンボールのように星が飛び散るところから始まるじゃないですか。
 空中にコンピューターの街があったことから、あれらはグリッドマンと新世紀中学生がおそらくアクレシスによって分離させられたシーンだと思うんだけど、このシーンよく見ると星が6つあるんだよ。大きなの5つと小さなの1つ。小さいのは目立たないですが、一時停止すると存在を確認できる。
 じゃあこれ何だったのかというと、多分ジャンクだと思うんだよ。裕太に憑依したグリッドマンとは別に、その起動トリガーになるエネルギーがどういうわけか分離してジャンクに宿った。だから裕太の変身にはジャンクが必要になる。
 ここで気になるのがアカネが押し入ってきた際のやりとり。あそこでの内海とのやりとりがどうも浮いて聞こえると思わないか。「要らなくなったものが集まるお店じゃん!」のくだり。どうも何かを説明するためにねじ込んだように感じる。
 無理にでも入れなくちゃならない理由があったとすれば、それはジャンクがアカネが捨てたものの象徴だったんじゃないかと思う。外部との関わりとか、変化する意思とか、そういうやつ。単純に原作がパソコン使ってるから特に理由もなくジャンクを入れたのかもしれないけど、そうすると強殺未遂やった時のセリフが浮くんだよな。

やっぱり主人公はアカネだよね
 六花のほうがかわいいと言いつつほぼアカネの話しかしてないんだけど、そりゃまあ12話のアニメだったらほぼ主人公の話になるわいな。成長の度合いで主人公だと書いたけど、他にも根拠を2つ見つけたので書いておく。
 1つ目はアカネの怪獣好きがわかる回でのセリフ。内海に対して怪獣愛を語りまくってちょっと引かれるシーンで、特撮で本当の主役は怪獣だって言ってる。あそこの時点では狂気を孕んだ怪獣製作者だからそういうもんだろうって受け止めてそのまま忘れていたけれど、作中の怪獣はつまりアカネの象徴だから、全部見終わってから考えると本当は自分が主人公だって言ってるんだよね。
 2つ目は音楽の使い方。1話見返すと実はオープニングテーマがなかったことに気がつく。これもスルーしてたけど、本来オープニングが入るであろう位置では、代わりに学区グラウンドで学校の日常風景としてBelieveの合唱が漏れ聞こえてくる。六花が歌ってるのは覚えていたけれど、一番最初にも流れてたのは完全に記憶から飛んでた。
 最終回にエンディングテーマがなくて変わりにピアノのBelieveが流れていたけど、1話のオープニングと最終回のエンディングが両方Believeってことになる。ってことはもはや『SSSS.グリッドマン』主題歌はBelieveなんじゃないか?
 本編の内容はヒーロー物語ってことになっているけれど、作品のテーマとしては引きこもりが友情に救われて前を向く話だよ、っていう構造だろこれ。そう考えるとやっぱり新条アカネが主人公だよ。

もし本編に悟空が出たら?
 ちょっとドラゴンボールの話が出たついでの話でさ、悟空呼びたくない? 俺は見てるとどうしても悟空を呼びたくなるんだよ。そして言ってもらいたい。あの場面で、あの名言を!

「わたしは人間みたいな怪獣は好きじゃない」「本当にそうか?」


 わざわざグリッドマンを祝して一緒に食事した時のことに言及しての好きじゃない宣言だったけど、見返すとアンチを「一緒に朝ごはんを食べてくれる怪獣」と言って歓迎してるんだよね。思い通りになる相手には好意的で都合が悪くなると邪険にするメンヘラのクズっぷりを描いただけかもしれないけど、結局引きこもりだったんだし世界の怪獣側としての友達が欲しかったんだと思う。
 アンチは何度負けてもしつこくアカネに命令を聞きに来るくせに結局面倒なことを言って命令を聞かないから、失敗作と言われても仕方ないんだけど、アカネは内心ちょっとばかし嬉しかったんだと思う。全くそんな描写はないから勝手な妄想だけど。だからアクレシスに「アンチ君は一周回ってグリッドマンが好きなんじゃないかな」って言葉を気にしてたんだろうな。だから試し行動をとったんだよ。好きじゃないと言って、命令を解除したらアンチはどちらに付くのかを。
 命令を下す創造主のもとに帰ってこようとするだけではなく、傘を持ってきたから見込みはあったんだよね。自分がそう設定した存在に好かれるんじゃ意味がないけど、命令にない優しさを見せたから。勿論グリッドマンには勝てないくせにそういうところばかり成長しているから本当に苛立っていたというのもあるだろう。ただあそこでアカネが求めていたのは拒絶してもなおアンチが自分を慕ってくることだったんだよ。
 ただキャリバーに「怪獣と人間との間で揺れ動いている」と言われるように、アンチの発達がまだ不完全だったから、そこまで読みきれなかった。あそこでアンチが残っていたなら、再び2人でグリッドマンを倒す作戦を考えてもいいとか思ってた気がする。だからアンチが去ったあと「やっぱりきみは失敗作だよ」と寂しそうにつぶやくわけ。傘じゃ足りなくて、もう一歩が欲しかった。グリッドマンは倒せてないから、傘持ってくるだけじゃ納得できなかった。本当は受け取りたかったんだと思う。あそこがあんなに寂しそうで全体的に切ないのはそうとしか考えられなくないですか。
 僕がここまでハマってるのもね、あの傘のシーンがあるからなんですよ。六花の「悲しいかどうかは私達が決める」も超いいけどね。あそこ素晴らしいけどね。でも一番心に刺さったのはアンチが傘持って来るシーンだよ。
 会話のテンポや間の開け方、画面のトーン、雨の音とバックグラウンドの合唱曲、何から何まで悲しくて寂しくて切ないのよ。世界が切なさでひたひたになって画面越しにジワジワ滲み出て心を包んでいく。あのシーンは本当に心に来る。何で来るのか考えると今語ったようなものを感じ取ってるからだと思うんだよ。アカネが怪獣を好きな理由がわかって、その背後にある現実での生活が垣間見えるかもいいね。そういう人間があの場所でああなっていることの絶望的で救いようのない悲しみが伝わってくるでしょ? 

 大負けが続いてきたメンヘラはな、クリティカルでさらにドラが乗って大勝ちしないとバランスが取れないんだよ。そう信じてるんだよ。それ以外は認めないと決めてるのよ。だからその場その時そのシチュエーションの、世間一般から見たら十分な施しを受けても不十分だと不機嫌になることが往々にしてある、と思う。
 アンチが傘持ってきてくれただけよかったとは思えない。もっと先を望んで、救いの手を振り払ってしまう。差し伸べられた手を意地で跳ね除けた経験、皆さんにあるでしょうか。僕は散々やってきました。アカネは主人公だったから、ここで拒絶したことで、怪獣化から自分を救いに戻ってきたアンチに心を開けたけど、普通の人間は手を払ったらもう助けに来てはくれないんだよね。
 多分そのへんがこう、刺さってるんじゃないかなこのシーン。

 ただほらここでアンチを拒絶して、アンチまでがグリッドマンを選んだことで、完全にアカネはあの世界でも独りぼっちになるわけじゃない。グリッドマンによって変えられてしまうわけじゃない。自分でそのスタンスを取ってる側面もあるんだけど、グリッドマンにハブられてるも同然と感じるわけだよね。だからそのあと「私もグリッドマンと話してみたかったな」ってセリフが出るんだよ。我を失った中で自然に出てきた本音なんだよね。切ないよね。

「本当の人間は寝たりしないよ」
 このセリフだけがわからないので、何か有力な説があったら教えてほしいですね。
 単に怪獣を作らせたいアクレシスが急かしただけなのか、あるいはあの世界の本当の人間は神ただ一人だから、神だから寝なくていいでしょうっていう意味なのか、どちらにしてもしっくり来ない気がする。世界が作り物で、アカネだけが外から来た人間であるっていうことを再度提示しておいたのかな? あそこどう思います?

追記
 友達からエンディングにアカネの座席があるとの指摘を受けました。左側に見えるのは手前(廊下側)の列の一番後ろの座席だと。確かに。アカネと裕太(EDだと六花)の席だけ一つ引っ込んだ位置にあるっぽい。
 そうなるとエンディングテーマでは消えてしまったというわけではなく、トマトジュースもちゃんとあるからあれは「覚えていない汗ばむ季節の出会い」を妄想したものなのかな?
 それとも、一部の考察勢が言っているEDの最後でタイツ履いてる六花=最後に目覚めた現実のアカネってのが正しいのかな。二人が光に満ちた世界で一緒にいるところで六花が飲むヨーグルトのストローを噛んだ跡がある。
 1カットだけ髪の色が違っているアカネは現実の六花の憧れの存在みたいな子なのかとも考えたけど、エンディングだと本編の夢世界同様口を抑えて笑っているからやっぱり作中のアカネっぽい。
 うーん謎だ。個人的にはエンディングテーマの歌詞が1番は六花→アカネ、2番はアカネ→六花って感じに思えるから冬になったのとアカネを思い出すのとで六花がタイツ履いてるだけだと思うんだけど、まあ解釈は人それぞれですね。

コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。