良いコンテンツとは

この記事は川上量生さんの「コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと」を自分なりにまとめたものです。

「コンテンツの秘密」はドワンゴの会長を務める川上量生さんがスタジオジブリの鈴木プロデューサーに弟子入りしたときに、コンテンツについて考えていたことをまとめた本です。

この本では鈴木プロデューサー始め、様々な方のエピソードを交えコンテンツについて説明されており、とてもわかりやすい文章になっています。


-コンテンツと情報量

コンテンツとは情報の集合体です。では、情報が多いものが良いコンテンツかというとそうでもないようです。

川上さんは本の中で、「主観的情報量」「客観的情報量」という概念を用いてコンテンツについて説明しています。

主観的情報量とはコンテンツをみて、実際にひとが受けとる情報量です。

客観的情報量はコンテンツに表現されている全ての情報です。

写真をみた場合、写真に写っている人の顔は覚えているけど、その人がなにを持っていたかや背景に何があったかまで記憶できる人は少ないと思います。

このときに受け取れた情報(人の顔)は主観的情報、持ち物や背景等写真に写っている情報は客観的情報になります。

ひとが受け取れる情報量はとても少なく、特徴だけを覚えています。

主観的情報量<客観的情報量

コンテンツの情報量が多すぎると良くない理由は、情報量が増え過ぎると特徴を捉えきれないため理解が難しくなるからです。


葛飾北斎の話

ここで出てきた葛飾北斎の話がとてもおもしろいです。

北斎は実は幾何学に絵を描いていたらしいのです。

また彼の代表作である 『冨嶽三十六景神奈川沖浪裏 』も 、定規とコンパスをフル活用して描かれたと言われています 。
(中略)
それは 、人間が脳のなかで風景のイメ ージをつくるときには 、円や直線や 、図形の比率みたいなものが使われているからです 。
人間の脳は 、海の波のような複雑なものをそのまま理解できない 。もっと簡単な要素に分解しないと脳にイメ ージをつくれないのです 。
だから 、波のなかに現れる直線や円 、なにかの比率みたいなものを探して理解しようとしているのです 。
それを取り出して絵に表したのが北斎である 。そうなるのではないでしょうか 。

(富嶽三十六景)

北斎が現実を幾何学で再現したように、世界の特徴を抜き出し、ひとが理解しやすい情報へ変換したものが良いコンテンツと言えそうです。
葛飾北斎の絵の情報量は、このようになるのではないでしょうか。

主観的情報量>客観的情報量


現実ではありえない現象に現実以上に惹きつけられてしまう刺激のことを超正常刺激というらしいのですが、葛飾北斎の絵は現実以上にひとを刺激するのではないでしょうか。

現実の女性よりもアニメの女の子に魅力を感じてしまうのもこの考えから説明できそうです。


※「コンテンツの秘密」では良いコンテンツの定義はしてなかったと思うのですが、ここでは世界の特徴を抜き出し、ひとが理解しやすい情報へ変換したものを良いコンテンツとしています。


本の内容ではないのですが、これと似たようなことをチームラボの猪子寿之さんも語っています。

【対談】堀江貴文×チームラボ代表・猪子寿之が語る「アートが変える未来」

以下はアートについて猪子さんが説明している文章の引用です。

例えば時間がある空間は、四次元情報ですよね。絵は脳が処理しやすいように、その四次元情報を二次元化する。
(中略)
四次元情報を二次元化するって、無限に解答があるわけですよ。その時に、人間が気持ち良かったり、美しいと思ってしまったり、衝撃を受けてしまったものが、結果的に広がっていくんだと思うんです。

これは葛飾北斎が幾何学を用いて世界を表現したことと同様に、アーティストは四次元情報から二次元情報への変換の際に世界の特徴を落とし込んでいるのではないでしょうか。

そしてそれが広まることで、世界はこう見えているとアーティストは人類の世界の見え方を変えてきたそうです。

これがアーティストが歴史に名を残せる、またアートに何億もの価値がつく理由だそうです。


おわり。

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