Big five性格5因子を考慮したリハビリテーション指導の実際
はじめに
性格(personality)とは、人の思考や行動の基盤となる特性です。これは病気や障害ではなく、過去の経験から生成された思考や行動のパターンであり、基本的に一度形成された性格は変化しません。一方で大きな転換期やlife stageの変化(数年以上)では変化すると言われます。リハビリテーションを提供していると時折、うまくいかない患者と遭遇することがあります。僕の周りでは「あの患者は性格的に…」「元々の性格が…」と耳にすることがありました。でも、本当にそうでしょうか?患者の性格は問題になるのでしょうか?僕はそうは思いません。患者の性格が問題だと主張する場合には2つの疑問に答えましょう。1つは性格が問題であることをどのように捉えたのか?もう1つは性格が問題であった場合に、どう対応すべきなのか?
多くの方はこの2つに答えられません。もし答えられたとしたら、性格を理由とした回避は職務放棄です。つまり、患者さんの性格を知ることは医療従事者にとって必須です。そして性格が問題の1つだとしても、即座に修正困難なものであるため、我々は性格に応じた対応について考える必要があります。今回は性格を考慮した指導について具体的に説明していきたいと思います。
1.性格の捉え方
性格の捉え方には類型論と特性論があります。類型論とは、いくつかの性格から最も当てはまるものを選択する捉え方です。代表例にはユングやクレッチマーの類型が挙げられます。人を1つのタイプに当てはめるため、傾向が分かりやすい反面、当てはまらない部分があります。特性論は、人の性格を1つのタイプに当てはめるのではなく、いくつかの性格特性の増減で表すものです。代表例にビッグファイブ(5因子)特性論があります。ビッグファイブでは、外向性、協調性、勤勉性、神経症傾向、開放性の5つで人の性格を表しています。特性論のデメリットは、5つのパラメータで表された性格を一言でまとめられないことです。パターン化されたわかりやすい類型論に比べて、特性論は間違いが少ないものの分かりにくいと感じるでしょう。特性論では、5つのパラメータ毎にその人の思考・行動の特性を理解していきましょう。では、現在ビッグファイブ理論で用いられている5つの特性について1つずつ説明します。
①外向性(Extraversion)
外向的、内向的を表す軸で、性格の明るさ、社交性、積極性などが含まれています。この特性が低いと内向的であることを示します。ストレス対処行動にも影響します。
②協調性(Agreeableness)
協調性には、他人の意見に同調したり、関係性を維持しようとする思考・行動が含まれます。協調性が低いと、自己中心的、人間関係でトラブルを起こしやすい傾向で、協調性が高いと他者の意見に流されやすく、他者に依存的な関係を作りやすい傾向になります。
③勤勉性(Conscientiousness)
誠実性とも言われ、真面目、良心、達成要求の高さが表れます。勤勉性が低いと、いい加減で粗雑な傾向となります。勤勉性の高さは健康行動の励行と関連があると言われている一方、達成要求が高いと自身の評価が厳しくなり、過小評価となる傾向があります。
④神経症傾向(Neuroticism)
点数が高いほど、神経質で、繊細な性格を示します。点数が低いと粗雑で、楽観的な傾向となります。幸福感を得やすいのは神経症傾向が低いタイプです。痛みに敏感であったり、恐怖感や不安、うつが増大しやすいのは神経症傾向が高いタイプです。
⑤開放性(Openness)
開放性は知的好奇心を表します。時にintelligenceと表現されることもあります。開放性の高さは知能、そして探究心が高いことを示しています。これが低い人は、新しいことを覚えたりすることに苦手意識があるため、これまでに習ったやり方を利用した方が良いです。
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