うなぎ技術(うなテック)の特許検索〜完全養殖編〜

土用丑の日ということで、先日、うなぎの完全養殖について特許検索をしました。今回は、検索式の作成過程と検索式の検証結果を紹介したいと思います。

1.技術テーマ

検索式を作成するにあたり、技術テーマを「うなぎの完全養殖」と定義しました。これを、背景技術とい構成要素に分解しました。

背景技術 養殖

構成要素1 うなぎ

構成要素2 完全

構成要素2の”完全”を含めないことも考えました。しかし、天然のシラスウナギを捕獲して成長させる一般的なうなぎ養殖が、ノイズとして含まれる可能性があったので、”完全”というキーワードにより一般的なうなぎ養殖を排除しました。

人工孵化から育てた成魚が産卵し、その卵をもとにふたたび人工孵化を行うこと。天然の卵や幼魚に頼ることなく持続的な養殖を行うことを指す。(出典 小学館デジタル大辞泉)

2、特許分類の選定

J-PlatPatによる予備検索から、特許分類を拾いました。

”養殖”関係は、これらのFI、Fタームが使えそうでした。

 A01K61/00 水棲動物の養殖

 A01K63/00 生魚容器> A01K63/00@C 養魚池,養魚槽

 A23K10/00 飼料

 A23K50/00 特定の動物に特に適合した飼料 > A23K50/80・水棲動物用

 2B104 養殖 > 2B104AA07 ウナギ

 2B005 特定動物用飼料 > 2B005GA04 ウナギ

3、検索式の作成

これらの分類からJ-PlatPatの検索式を作りました。

同義語は、webニュース、論文、特許文献等から拾いました。

式1 特許分類×キーワード

[ウナギ/AB+うなぎ/AB+鰻/AB]*[A01K61/00/FI+A01K63/00@C/FI+A23K50/80/FI]*[完全,5N,養殖/TX+人工,5N,ふ化/TX+人工,5N,孵化/TX+人工,5N,繁殖/TX+人工,5N,飼育/TX+人工,5N,種苗/TX+人工,5N,生産/TX+人工,5N,シラス/TX+人工,5N,受精/TX]

式2 Fタームのみ

[2B104AA07/FT]*[2B104BA01/FT] 

式3 Fターム×キーワード

[2B005GA04/FT]*[完全,5N,養殖/TX+人工,5N,ふ化/TX+人工,5N,孵化/TX+人工,5N,繁殖/TX+人工,5N,飼育/TX+人工,5N,種苗/TX+人工,5N,生産/TX+人工,5N,シラス/TX+人工,5N,受精/TX]

式4 キーワードのみ

[ウナギ/AB+うなぎ/AB+鰻/AB]*[養魚/AB+養殖/AB+繁殖/AB+飼料/AB+餌/AB]*[人工繁殖/TX+人工孵化/TX+完全養殖/TX+人工飼育/TX+人工種苗/TX+人工生産/TX+人工ふ化/TX+人工シラス/TX+人工受精/TX]+

式1〜式4をOR演算した結果、79件ヒットしました(2020年7月24日時点)。

4.検索式の検証

もっぱらウナギを食べる方なので、79件のという数字にピンときません。そこで、検索結果の妥当性を検証してみます。

検索式を検証する方法は、(1)発明の名称と背景技術が一致しているか、(2)出願人・権利者が妥当であるか、(3)出願件数の推移が妥当であるか、から検証することができます。

まず、(1)発明の名称と技術テーマが一致しているか、について検証します。

水棲動物用餌料の製..._wordcloud

※ユーザーローカル テキストマイニングツール(https://textmining.userlocal.jp/ )による分析

この図は、発明の名称をワードクラウド化した図です。大きく表示されたキーワードほど、単語の重要度が高いことを意味します。

技術テーマと関係性が強い「ウナギ」「飼料」「仔魚」「養殖」が、大きく表示されています。

他のキーワードも含めノイズは見当たりません。

発明の名称と技術テーマとが、ほぼ一致していると思われます。

次に、(2)出願人・権利者が妥当であるか、について、検証してみます。

まず、うなぎの完全養殖に関する企業・研究機関を調べてみます。

「ウナギ種苗の大量生産システムの実証事業 平成 26~28 年度の3カ年事業概要」によると、マリノフォーラム21、水産研究・教育機構、ヤンマー、不二製油、愛媛大学、IHIが、共同研究を行っているようですね。

日本水産もうなぎの人工種苗を研究しているみたいです。

東洋水産の関係会社(いらご研究所)もうなぎの研究をしています。

ここから、上記の企業・機関が、検索結果の出願人・権利者に含まれているか確認してみます。

画像3

※水産研究・教育機構のみ名寄せしています。

出願人・権利者別の出願件数を見ると、水産研究・教育機構、ヤンマー、不二製油、日本水産、東洋水産(いらご研究所)が含まれています。

マリノフォーラム21、愛媛大学、IHIはゼロでした。個別に出願人検索をしてみましたが、うなぎ関連の出願はありませんでした。検索漏れではなさそうです。

このことから、検索結果の出願人・権利者と市場のプレーヤーとが、おおよそ一致していると言えます。

最後に、(3)出願件数の推移が妥当であるか、について検証してみます。

フラニュース、ウナギ特別号「ウナギ研究の歩み」、2017.3」によると、うなぎの人工種苗生産の研究が始まったのは、1960年代だそうです。その後、2002年にシラスウナギまでの人工飼育が成功し、2010年に完全養殖が実現しています。現在は、量産化に向けた取り組みが行われています。

一方、出願件数の推移を見てみると、最古の出願は1965年です(特公昭44-011578)。うなぎの人工種苗生産の研究が始まったのは、1960年代と一致します。また、ラスウナギまでの人工飼育が成功した2002年付近から出願件数が伸び始めています。さらに、完全養殖が実現した2010年以降、さらに出願件数が伸びています。個人的な感覚ですが、技術的なブレイクスルーが起きると、技術開発は活発になる傾向があります。

このことから、うなぎ研究の歴史と出願件数の推移とが、おおよそ一致していそうです。

図1

以上の3つの検証より、検索式は妥当である、ということにします(ご指摘がありましたらお願いします)。

5.気になったうなテック

出願件数が最も多い「水産研究・教育機構」の最新の公開公報を見てみます。

本発明は、従来の問題点を解決し、サメ卵など、入手が困難となりつつある材料に依存せず、安定供給可能と考えられる材料から調製可能であり、しかもふ化後の仔魚を効率的に成長させることができる飼料及びその製造方法を提供することを目的とする。(特開2018-153147)

完全養殖には、”餌”キーポイントのようです。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳タンパク質及び鶏卵黄末を含有するウナギ仔魚用飼料。
【請求項2】
乳タンパク質及び酵素処理魚粉を含有するウナギ仔魚用飼料。
【請求項3】
乳タンパク質が低乳糖タンパク質である請求項1又は2記載のウナギ仔魚用飼料。(特開2018-153147)

乳タンパク質?と鶏卵の黄身?魚粉?これらから、ウナギの餌ができるんですね。牛乳と玉子と魚を混ぜる。。。あまり美味しくなさそうです。

魚粉の種類が明細書に例示されていませんね。なんでもいいのかしら?

気になります。

あと、「要約不備職権訂正」がされていますね。不備内容は、文字数不足と表現不適だそうです。代理人がいるのになぜ?

気になります。

6.まとめ

今回は、うなテックの完全養殖について調べました。

検索式を検証した結果、検索式は妥当である、という結論になりました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?