エリクソン研究会記録『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』P210L4~P217L4 第30回

※本記事はめんたねにて2013年3月〜2017年6月まで行われたエリクソン研究会のメモ書きを文字起こししたものです。テキストは『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』を使用しました。メモ書きなのでテキストを読んだ前提でないと、わからない書き方になっていることにご注意ください。
またエリクソン研究会では現在は別のテキストの『2月の男』を読んでいます。
http://mentane.net/workshop/pg167.html

P=ページ数 L=行数
読んだページ数P210L4~P217L4

エリクソンはバービィに対してなにを狙っているのかよく分からない話をする。よく分からない話を聞くと人は混乱してトランスに入りやすい。目の前の解らないものを何とか解ろうとする。人間の欲求を引き出すのがエリクソンのねらいである。

無法者のソーヤの話は、エリクソンの父親が道を間違えたことで命が助かった話だ。いつもと違った道(こと)を選ぶと良いことがある、また、話の中で、命が助かった後食べ物の話をしている。食べ物と言いイメージを結びつけるのもねらいか。

エリクソンの弟子たちで解決思考アプローチの人たちの話。
クライアントに対して2通りのアプローチがあるという。
①Do more うまくいっていることをもっとやる
②Do different 新しいことをやる

さて、どちらがやりやすいか?
まずは、①Do moreだろう。すでにできていることは負担が少なく、やりやすい。またクライアントの反発も少ない
②はまだできていないことなのでやらせにくい。
しかし、バービィのケースをこのアプローチで考えてみると
①Do moreだけでは回らないケースだ。
新しいことをやらせる必要があるのでそのときDo differentが必要になってくる。ここをやるときにエリクソンの混乱技法がいつも出てくる。訳の分からないこと、意識では理解できないことを話して混乱させる。

例えばワークショップの場でみんなが突然スワヒリ語で会話をし始めたとする。それまで日本語で話していたのにいきなりスワヒリ語で会話が始まるから当然混乱するだろう。人によっては笑い出す。笑うことで緊張を緩和する。スワヒリ語で話しかけられたらどうしようかと困ってしまい、周りをみて、指示を待つという状況に追い込まれる。そのときに日本語に戻って「スワヒリ語で びっくりしたでしょ?」と言うと、その人は緊張が解け、安心してほっとする。一緒にどさくさに紛れて暗示を入れると暗示に反応しやすい。

おぼれかけた人にパッと浮き輪を投げるイメージ
解らないことを目の前にしたら、人は何とかして解ろうともがく。もがいて溺れているところに、助け船を出して、酸素と一緒にこちらの意図した謎の空気を吸わせる。ソーヤの話もそういう気のある話だ。もっとも、バービィ自信はこの話を割合たのしんでいるようだが。

主にバービィの話は以下の要素で構成されている。
地形の話
うがい薬
体重
プレゼント

地形の話
この地形の話があるのとないのとでは、なにがちがうか?エリクソンの話を聞いてたあと、その場に行くと、「ここがエリクソン先生が話していたところか」とエリクソンの話を思い出す可能性がある。エリクソンとの治療のやりとりを思い出すきっかけを作れる。景色についてのコメントを治療のやりとりを思い出させるためのトリガーとして使うことは、別のケースでもある。試験に必ず落ちる弁護士に夕焼けの話をして、その弁護士が夕焼けを見る度にエリクソンの話を想起させるねらいがあったように。

エリクソンがバービィ一家に対してやっていることは、考えが狭く硬直した一家の文化に受け入れがたい話をしている。両親はバービィにエリクソンの話を聞かせたくないし、ふれさせたくもないだろう。両親はバービィを箱入り娘にしたい。

そんなバービィや両親にエリクソンは世の中には、よく分からないけども、違ったもの、変わったもの、おもしろいものががあるのだという話をする。
そうした話をすることで情動を引っ張り出す。

バービィ一家は皆やせていて、体重を保つことが良いことという文化がある。神経質で、意識が強い家族。清潔さとやせているということはなかりつながりが深いだろう。現に綺麗好きなやせっぽっちは多い。汚いやせっぽっちは少ない。

ここでエリクソンは標準体重を持ち出して、それよりも少ないことを怒っている。キッチリした人向けの働きかけだ。

拒食症の人は自分のことにしか感心がないのだ。他者や世界に、自分以外のそういうことに好奇心を持って目を向けて欲しいという狙い。

210後ろから6行目
「彼女はわざとうがい薬を置き忘れ~」
原文では「purposely=目的を持って」
このわざとは無意識のわざとという気がする。
忘れたのは無意識的な目的があって、意識的なわざととは限らない。
エリクソンはバービィはうがい薬を忘れると予測した。
母親にはバービィのうがい薬についてなにも言うなとエリクソンは指示をした。
この指示はバービィの前で話したので、
バービィはうがい薬を忘れても注意されないのだとバービィの無意識が理解する。
エリクソンはバービィに忘れるように誘導した。
忘れさせて、忘れやがってと罪を与える状況をセッティングする。
エリクソンは罪悪感を利用して治療に使いたかった。


罪悪感を持たせることをどう治療に使うのか?
罪悪感を持たせることをエリクソンが仕組んだとして、わざわざ持たせることでなにを狙っている?

P210後ろから3行目
エリクソンはバービィの拒食をバービィが自分自身と宗教を同一視することから起きていると見立てた。つまり自分自身と宗教の同一視をやめさせたら拒食も治るだろうと。そのためにはどう考えても宗教的では居られない状況をバンバン作ることだ。拒食なんてバカなことをやめなさいとバービィみたいな人に言っても意味がない。

宗教的なことをやればやるほどつらくなる状況をつくる。洋服を脱がせたかったら力付くよりもエアコンの温度を上げたほうが脱がせやすいように。
仮に罪悪感がなければ、そもそも宗教と自分を同一視してないので問題がない。宗教的なことに厳格で完璧であるほどに、約束を守らないと言うことがバービィに重くのしかかる。

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