エリクソン研究会記録『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』P175L7~P184L14 第26回

※本記事はめんたねにて2013年3月〜2017年6月まで行われたエリクソン研究会のメモ書きを文字起こししたものです。テキストは『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』を使用しました。メモ書きなのでテキストを読んだ前提でないと、わからない書き方になっていることにご注意ください。
またエリクソン研究会では現在は別のテキストの『2月の男』を読んでいます。
http://mentane.net/workshop/pg167.html

P=ページ数 L=行数
読んだページ数P175L7~P184L14

ランプの妖精の話
張良の靴を落とす話に似ている

軍師の張良は戦術の神といわれる老師のもとへ戦術を学ぼうと訪ねる
老師の下に行くと老師は馬に乗ってやってくる。老師は張良の近くまでやってきて靴を落として去っていく。これを延々と繰り返す。
張良は苛つくが、はっとそれが戦術の秘訣だと気がつく。
この人は何をする?と思わせる時点で相手の注目を集めているので、すでに相手に対してイニシチアブを取っていることになるということに張良は気がつく。エリクソンの話もこの話と同じでそうした可能性はありえる。

エリクソンはここでランプに関してしつこく語っている、普通だったらランプの妖霊など信じないだろう。だがエリクソンは明らかに信じるほうに期待をして語っている。このような語りは普通の人は戸惑う。混乱させることで生徒は対処に困る。トランスの混乱技法をここで用いている。どのような効果があるかは特定できない。

大体エリクソンは話の最初と最後にこういう変な話をする

エリクソンがエピソード的なトランス誘導の話をするときは、今ここでの話というよりも、その話がひとつの物語のような、現実からいったん離れたような話になる。こうした話は意識と無意識の橋渡しになる。

話の最初と最後で子供じみたおもちゃやナゾナゾで現実から離れた雰囲気を作る。子供じみたおもちゃや、ナゾナゾで間に挟まれた話は現実から離れる。参加者に挟まれた話に関しては記憶の健忘がおきる可能性がある。
「いったいなんだ?この先生は?」と参加者の意識が向けられる。それまでしていた話は意識から忘れられて、無意識にストンと落ちる。本題として伝えたいことは意識に上らずに守られる形になる。

P179~
Q1エリクソンはなぜクリスティーヌの頭痛の話を持ち出したのか?
Q2ブリンキーのやりとりにはどんな意味があるのか?
右目利きとは何か?
奥さんとは打ち合わせがあるのか?

エリクソンはここで、クリスティーヌとの関係を取ろうとしている。
クリスティーヌはドイツ系、気質的にはロジカルで固い典型的なドイツ人なので、エリクソンの振る舞いに耐えられない。クリスティーヌは混乱し、イライラしている。もっとちゃんとわかりやすく教えてほしいと思っている。そうした彼女の限界が近いという気配をエリクソンが察して合わせているのか?

P181
Q3「それじゃ、あなたはもう頭痛を起こさなくていいですね」
とエリクソンがが言っているのはなぜか

Q4「トランス誘導をする際に。。。。」

A2
火曜日の終わりにエリクソンが見せたホログラムと似ている。
ホログラムもブリンキーと同じくウィンクをしている。ブリンキーとは瞬きをする人の意味。
そして瞬きは目が閉じる→トランスのメタファーか
本当はブリンキーという名前もこじつけで別の名前かも知れない。
エリクソンの狙いとしては前日の火曜日の内容を引っ張り出そうとしている。

エリクソンの妻が電気を消してブリンキーに瞬きをさせる
結果として妻が参加者を間接的にトランスに入れる働きをしている
こうした主催者が働きかけるのではなく、別の第三者を使って働きかけるやり方はオープンカウンセリングなどでも用いられる。クライアントの抱える問題に対して、参加して聞いている他の人間に意見を言って貰う。
主催者はこの場合口を出さないので、クライアントとの関係が切れることがない。明らかに受け入れがたい意見はクライアントが勝手に弾くし、良い物はクライアントが受け入れる。主催者はこの場合口を出さないので、クライアントとの関係が切れることがない。よくやる手法。

ブリンキーというナゾで引っ張ってみんなを注目させたいという狙いもある。

A1
自分の請け負っている生徒がクリスティーヌの様な話をしてきたときどう考えるか?という視点で見て欲しい。
頭痛がすると言ってくる理由はどう理解するか?

頭痛は抵抗と取る。
クリスティーヌはエリクソンとのやりとりを不快だと思っている。
しかしわざわざ遠いところから尊敬する先生のワークショップにやってきてる手前、エリクソンに直接反発するわけにも行かない。
何とかエリクソンとのやりとりに意味を見出したいけれども、納得がいかないという抵抗がある。不安定な状態が頭痛という症状に出てしまっている。こういう人は居る。

何のための抵抗か?
催眠誘導も含めてエリクソンがずっとやっている。習慣的思考パターンを引っ繰り返すということに対して。

エリクソンはクリスティーヌのこうした抵抗(頭痛)は良くあることだと言う。習慣的志向パターンを引っ繰り返すことは慣れていないことで、ある種の痛みを伴うことだとエリクソンは考えるから。今回の頭痛もそうした痛みに伴う抵抗だろうとエリクソンは考える。

対してクリスティーヌは、自分の習慣的志向パターンを引っ繰り返されたから、頭痛が起きたと思っていない。

エリクソンの説明とクリスティーヌの認識が違っている
尾谷の解釈
クリスティーヌは過去の先生の話を持ち出してエリクソンに対して文句を言っている。クリスティーヌの催眠への疑問はエリクソンへの文句だ。

エリクソンは俺は催眠が上手いから悪い方の頭痛の心配はないと言っている。エリクソンは頭痛を起こしているのだと言っている。その頭痛は良い頭痛だと言っている。パターンがひっくり返ると起きることだと。

クリスティーヌは文字通りエリクソンに対して文句をハッキリ言わないからエリクソンはスルーしている。

A3
まずエリクソンは、私の起こす頭痛は良い頭痛と言っている。
習慣的志向パターンを引っ繰り返すと起きる。頭痛が起きて Good!と言う
それを受けてクリスティーヌはエリクソンに対して過去のトランス体験談を語る。
私(クリスティーヌ)の頭痛は指導者が無能で酷い為に起こる悪いモノだと
エリクソンは「じゃあ、その頭痛はもう起きないね」というなぜならエリクソンの起こす頭痛は、悪い頭痛じゃなくて良い頭痛だからだ。

そしてエリクソンは頭痛の話を後でして欲しいと言っているので、クリスティーヌはその場では文句を言えない。まあ、必要だから痛んでおけと。

エリクソンはちょっとフォローするつもりだったが思ったより絡まれたのでスルーして次にいく。


A1
今までやりなれた習慣的志向パターンを引っ繰り返すと、こう言った形で抵抗が起きる。

抵抗する人を引っ張り上げてこのように人は抵抗するのです。と教材にする。抵抗する人は抵抗すればするほど感謝されて居心地が悪い。

崩されることへの抵抗を利用し、「抵抗」「パターン」の具体例を示す教育を行う。

A4
麻酔をしないまま開腹手術はしないように。耐えられる範囲でやるから安心してほしいと。考え方の変化は混乱をして苦痛を伴うものだ。

パーツ分け
・老いた農夫と輪作
・ある民族の輪作
・父でも食事代を払う
・息子を車に乗せない
・既婚男性は朝食を吐き出す
・結婚直後のカップルがすぐに仕事
・背中の痛み

それぞれ何を言っているのか?

エリクソンは全体的な話では、人間が本来、本質的に持っているものと
生育過程の文化で後天的にもっているものと2つあるという話をしている。
皆が思っているほど人間は同じじゃない育ってきた環境でそれぞれ身につけるものがあり、それぞれ違う。また、生まれながらに違うわけではない。

こういう文化があってこういう主義ある。相手の文化、相手の主義、相手の望みを知れという狙いか?

・老いた農夫と輪作
これはクリスティーヌとしていた話を受けて話している。
考えやパターンを変えるということは苦痛を伴うという意味か。

・ある民族の輪作
この民族は輪作はみんなでやるという文化だ。これは背中の痛みの話にもつながってくる。この民族は個人主義ではなく、家族でまとまって作業をする
みんなでやったら楽ということを暗示的に伝える狙いもあるか?

P184
私はそれが大変面白いと(先生は笑う)
話の中に出てくる若い研修医を参加者にかぶせている。奇妙な興奮という反応を引っ張り出そうとしている。細かい解像度で見たうえで、こんな変な連中がいるんだと参加者に思ってもらうことが狙い。

・父でも食事代を払う
・息子を車に乗せない
・既婚男性は朝食を吐き出す
・結婚直後のカップルがすぐに仕事

習慣の話
いろんな考え方がある。お前の常識が世界の常識を思うなよという話をしている。

・背中の痛み
痛みは社会や文化が生み出すものもある。
神経症の症状の話とも似ている。学校に行きたくなくておなかが痛くなる子供の例。

輪作―吐き出す―鳥が食べる
これらの話には
動く回る循環するといったシンボリックな意味がみられる
民族の中の循環を参加者自身への循環に?
この話は全般的にちりばめ技法か?
動く、回る、変わる、違う・・・という意味が込められている。

固定化されたパターンをやわらかくしてくずす、動かす話。

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