エリクソン研究会記録『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』P329 第42回

※本記事はめんたねにて2013年3月〜2017年6月まで行われたエリクソン研究会のメモ書きを文字起こししたものです。テキストは『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』を使用しました。メモ書きなのでテキストを読んだ前提でないと、わからない書き方になっていることにご注意ください。
また、エリクソン研究会では現在別のテキストの『2月の男』を読んでいます。
http://mentane.net/workshop/pg167.html

P=ページ数 L=行数
読んだページ数P329

前回のおさらい
エリクソンは、ボニーという女性にトランス誘導をしながら他の参加者にも話をしている。

なぜボニーを指名したのか?ボニーがトランス初体験だから。特にこだわりはない。ボニーに対して特別に特に伝えたいとことはなく、ある意味人身御供のようなもの。

エリクソンがここで言いたいことは
P329
「テキストを見るのではなく目の前の相手を見て考えてためせ」ということに尽きる。

P325参照
他の人もトランスに

ボニーに対してというよりも、参加者全体に対して。だれかをトランスに入れていると、その暗示を見ているほかのひとのほうが良く入る。誘導されている人に注意が行くのでガードが緩み。暗示も入りやすい。

それゆえに、相手の抵抗をくぐるため、エリクソンはAに言いたいことをBに言い、BにいいたいことをAに言ったり言いたいことと、言う相手をずらすことをよくやる。

なぜビックルイスは変わったのか?
先日ツイッターで見た話で、ある家に犬がいて、その家の柵には「この犬は病気なのでえさをあげないでください」と書いてあったのだが、犬にえさをあげる人がいた。注意すると「わかっています、だから一個だけ」といった。

調査で刑務所にいる殺人者にどうして悪いことをしたのか?と質問すると
「悪いと思ってやってない」「あの時は仕方ない」という回答だった。

これらの話は一例だが、それぞれの人間の頭の中でやってもOKというロジックがある。犬のえさの件だと、「あげないで」と書いてあるのに一個ならOKという謎の理屈が出てきたり、殺人者は仕方ないことなら殺してもいいという理屈がでたり。

さて、エリクソンはビックルイスのロジックをどのようにみたて、どういじれば変化するとみたてたのか?という視点で考えてみるとエリクソンの筋を追える。

ひとつの枠として、内集団/外集団という話がある。例えば、私たちは牛や豚を食べるけど、人は食べない不良少年のグループは仲間内から財布を盗ることはないが、それ以外の人間のものは盗んだり、カツアゲする。なぜか?
牛や豚は外のもの、不良グループもそれ以外の人間を外のものとして認識しているからだ。大なり小なり人間は生活するうえで、内と外に集団を分けている。戦争のときも、普段なら人を殺せば罪になるし非難もされるが、敵国の人間ならばそれがよしとされる。

外のものには内とは別のルールが適用される。外の存在には共感もしないし、相手の気持ちを考えることをしない。牛や豚に共感したり、殺される牛や豚の気持ちを考える人は普通の日とはいないだろう。

さて、ルイスにとっては警察官というのは外の存在だった。だから暴力も振るえた。そして、警官に押さえつけられ、病院に入れられたので、病院も外の存在である警官の延長線上にある。だから、病院で暴れて迷惑をかけた。

仮にルイスに他人に迷惑をかけてはいけないという感覚があっても、外の存在にはその感覚は適用されない。

エリクソンのやり方で、どう変わったのか?
ビックルイスはこれまで加害者ポジションだったのをきれいに裏返して被害者ポジションに入れ替えた。今までビックルイスが自分でやってきたことは、このように相手に受け取られるのだと初めて認識することになる。これまでは外集団の存在に対しては、相手の気持ちも考えないし共感もしなかった。

確かに治療の現場でもひっくり返すアプローチというのは良く効く。大抵はひっくり返した状況を連想・想像させるということをやるがエリクソンは実際にやって見せた。想像させるゲームでは、クライアントが実際にだれかに言ったりやったりしたことを「では、あなたに今度同じことをやりますがいいですか?」と聞いてみる。そこで、「うーん」となって初めて相手のことを考え始めるということがよくある。

この問題で困っている人は想像力が無いので機会を作ってあげる。

ビックルイスは頭の中でやらせようとしてもやらないのでやらざる得ない環境にぶち込んだ。気をつけないといけないのは単なる戦争ではだめだということ。立場こそ違うが、自分のやっていた構造と同じものだと気がつかないといけない。ただ、相手の理不尽を攻め立てても意味はない。

これまで、看護婦に押さえ込まれることはされていた看護婦が集団で部屋を壊すのも敵対関係だがと何が違うか?
看護婦に押さえ込まれるのは、部屋を壊すなという病院に対する敵対行動で部屋を壊して押さえ込まれていた。加害者のポジションにルイスは居た。今回は病院が壊しにかかり、それから部屋を守ろうとするルイスという形の構図があるのでルイスは被害者のポジションに入る。

もしも一緒になってルイスが破壊活動を始めたら仲間のポジションに入れるので、仲間内でコミュニケーションがとれる、話せれば片は付く。エリクソンのいやらしいところで、エリクソンはルイスに見えないように看護師に指示をしたからエリクソンは味方のポジションだ。

エリクソン、ルイスはアンチ破壊なので味方。一緒に破壊をしたらこれもまた味方。どっちにころんでもエリクソンは味方になる。これまでされた例のとおり混乱技法、驚愕法にもなる。

コリント人への手紙の話はどんな意図が?
①幼子(ルイス)が大人(適応)になってよかった?
②幼子の感覚を推奨している?
ここでは②だろう。幼子のように考えることは無意識的な思考様式だ。大人の考えは意味・倫理・文化規範など。

ルイスみたいな人間は意識が未発達だし、これまでの話に出てきた患者のジョーとかピーとも未発達だ。ここまでの話をみると幼子を奨励か。

3歳児にいうことを聞かせるのは難しい。3歳児がどのように考えどのように行動するかを考えうる。大人であってもベーシックはそこにある。だから子供への働きかけがうまい人は大人にも働きかけがうまい。幼子に伝えるときには幼子のやり方で伝えよ。ルイスに伝えるときも、本ではなくてルイスをみて考えよという。

トランス席移動P324
Mさんに
「だれがトランスに入ったことなさそうですか?」と聞く
「Sさん」
「じゃあ変わってください」
そういうとMさんとSさんはほぼ同時に立ち上がって席を入れ替えた。
座ったSさんに質問「なぜかわったんですか?」「だれも指示してないですよね」と聞かれると混乱する。支配M

自発的に座ることになる。自発性とは?揺らぐ弱める。意識では処理しにくい場面に直面するトランスに入りやすい。

エリクソンは言葉の前提にその人が同反応するかもチェックしている。

目覚めよに抵抗できるのか?
トランスに入り続けるということはどういうことか?

トランスといってもグラデーションのある話ではあるから、一瞬覚醒したりというのもあるとは思う。トランスに入るのは自分であるし、出るのも自分である。抵抗は自由であるし、トランスはやりたいときにやるというスタンス

トランス誘導の際に抵抗されないような関係を作れるか?ということにエネルギーを向ける。ビックルイスのやることを妨げない。15分までは自由というのは抵抗が自由だという気持ちにアプローチをしている。エリクソンが手間をかけているというのはエリクソン流のツンデレだろう。

エリクソンはよく手間をかけている、親切だということをよく言う。料理を出して毎回おいしいでしょう?という人がいて、なぜ毎回言うのかと聞くといわないと気がつかない人がいると言った。たしかに、料理がおいしいという話のように、感謝や親切も言及しないと気が付かない人がいるかもしれないから言及しているのかもしれない。


ボニーを覚醒させない理由・狙いは?
混乱技法。ボニーは解らず、混乱してトランスに入る。

①ダミーとして意識の集めどころを作る。
②答えの出ない問いを投げられると人は考え続ける。
意識で解ると思考はそこで止まってしまう。

エリクソンがやっていたことの目的は考えさせ、この中でエリクソンが伝える言葉の影響を大きくする。ボニーはよりトランスに入る。

ボニーをトランスに入れた理由話していない。私はなぜトランスに入れられたのか?私のためのトランスとはどういうことか?
よくわからないが良いことかも?とボニーは思う。プラシーボ効果の最大化。私のやっていることで利益があるとさりげなく伝える。


トランス学習の意味は?
①麻酔
意識では直面しにくい、逃避してしまう問題をトランスに入れて意識の逃避を発動させず変化を起こす。
②トランスに入ることとはどういうことか?という学習
トランスに入れたほうが早い。

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