エリクソン研究会記録『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』P184L15~P191L12 第27回

※本記事はめんたねにて2013年3月〜2017年6月まで行われたエリクソン研究会のメモ書きを文字起こししたものです。テキストは『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』を使用しました。メモ書きなのでテキストを読んだ前提でないと、わからない書き方になっていることにご注意ください。
またエリクソン研究会では現在は別のテキストの『2月の男』を読んでいます。
http://mentane.net/workshop/pg167.html

P=ページ数 L=行数
読んだページ数P184L15~P191L12

P184~185
Q1.エリクソンは何故カトリックの同僚の話をしたのか?
A1.思いこみの強さを言いたい。
A1.文化的な違いを理解させる。
異なる文化、世界観をもつ人とどう関わると上手くいくのか?
その人固有の思考、行動のパターン、原理がどうのようなものかに興味を持て!解らないものに対して、人はふつうシャットアウトしてしまう。
エリクソンは、クライアントに対峙するときには、理解できないものに対して興味を持って近づける姿勢を持つべきだと言っている。こうした姿勢をもてる人はカウンセラーに向いている。

P185L6~
ベネズエラでの話
「ステッキをつく」は自分を守るというメタファー
後の男尊女卑的なレバノンの話の前振りになっている。

Q1.何故男女混合パーティが開催されたのか?
A1.エリクソンが現地の人との関係が良好だから
それは何故か?
最初にエリクソンは「私と妻はベネズエラに適応できない、多くを間違えるが、許してほしい」と言っているのが大きい。
未来の話を予言するというのは大変便利でよく使われる。結合法、リンキングと呼ばれる手法だが、未来に起こる失敗をポジティブなものと一緒に結びつけて語ることで、失敗が起きたときに、その後の捉え方や対応行動がプラスの意味になる。失敗が起きたときにそれが良い意味になる。

家庭教師をしていたときに、生徒に「成績がいいときも、落ちるときもある。落ちたり、間違えたりしたら、伸びたり、なおしたりするチャンスなので、テストの結果ではなくどのようにしたらできるかを考えてほしい」と伝えた。
「満点を取ったら取ったで良い点数だと喜べばいいし、悪い点を取ったら解けるようにする」と伝えた。
悪い点数を取ったときと、伸びる、直すチャンスが結びつけられた。結びつけられたものが思い出されたときに、悪い結果を前向きにとらえることができる。こうすると悪い点数をとっても勉強をやめないし、めげない。
失敗を予言しておいて、失敗した結果をどうとらえるか?どう行動するか?をセットで伝える。とても便利な手法。

引きこもって自殺未遂をした生徒がいた。告白してフられて不登校になった。高校に行くと好きな先輩がいる。恋愛はよいことだと、しかし恋愛でコケることもある。コケたときのセーフティネットをコケる前に伝える。

恋愛は、最初に恋愛した相手と結婚することはあまりない。何らかの形で別れるのだ。あなたが告白されたときに断る自由があるように、相手にも断る自由があるのだと。どうやったら恋愛をうまく失敗できるのか?フられる度に学んでいく、フられ上手になることで、別れることについて勉強になる。

こういう話をすると、実際にフられることが起きたときに思い出される
。困ったときに自分の中にある解決策を探し出す。その時に過去に言われたことが思い起こさせる。尾谷が言ったということは、忘れているが。前もって言っておくことで活性化される。

Q2妻がすごいことをやってのけたというのは、何のメタファーなのか?
原文では、horrible,awfulとあり、恐ろしいこと、ネガティブなニュアンスである。端的に言えば、男尊女卑の世界なのに、知っていることを言ってしまい、女性の博識を示してしまった。しかしここで、未来の失敗を予言しているのが効いてくる。この人はそういう別の文化にいる人なのだと()に入れて貰って、ちがうものだという認識になっているので、それは仕方ないと、やらかしても大事にはならない。

エリクソンのねらい
自分とは考えやパターンが違った文化の人と関わるときにどのように関わると上手く行くのか?異なる文化世界観を持つ人とどう関わると上手く行くのか?というのを伝えたい。カウンセリングにやっていくるクライアントはここに出てくる民族の人たちに近い。想像を絶する思考パターンや謎のルールを平気で言ってくる。クライアントに対しても前もって未来の失敗を言っておけば大丈夫。期待値が下がる上に、未来のイエスをとれるのでラポールもきづきやすい。

違いを伝えておくということと、あなたに近づこうとしていることを伝えておくことは重要。


「硬さです。患者が皆~」
この台詞から、患者の話を言っているのは確実である。ベネズエラ人の同僚も硬いパターンを持っている。自分と同じパターンだと硬さを感じない。自分と異なるパターンを目の前に硬さを感じろ。


「サラリー」世界最大の下着メーカーとかけているのか?
冷凍のパイシートを「サラリー」アメリカ文化の冗談か。スティージフはドイツ人だから、この冗談が解らないので説明。

クリスティーヌはエリクソンに頭痛の話をしている。
クリスティーヌをエリクソンはスルーしているか?クリスティーヌはドイツ文化を持ちながらもアメリカ人として生活している。今回のレバノン人の話をかぶるのでエリクソンは目を付けている?

くだらないことを言って遊んで笑うのはアーリーラーニングセット。
子供時代を想起させる。予定調和を崩す。混乱技法。パターンを崩してトランスに持ち込む。

誰もが好きなもの「サラリー」あなたも言われている。肯定的なもの言い。悪い気はしない。からかってるけどほめている。

P187後ろから6行目「先生 「いいでしょう。何年か前~」
レバノン人のリック
ポイント
エリクソンはレバノン人のことを良く知っている。仕事を受けるにしても、受け方、仕事への入り方次第でその後が大きく変わる。

Q1.本当にエリクソンは受けるエネルギーがなかったのか?

A1.間に心理学者が入っているので、治療へのモチベーションを、本人と両親に持たせるためにもったいぶる言い方になった。
エリクソンがもったいぶるのは「悪魔の契約」
私の言うことを何でも聞くのならば治療をしますということ。エリクソンが渋ることで、頼むから見てほしいというモチベーションを上げる。
もう一つは晩年であったということ。この時エリクソンが死ぬ一年前ほど。
あちこちから患者は押し寄せているが、体調が悪く余裕がなかった。エリクソンとしても、治る可能性のある患者か、おもしろい患者じゃないと診たくなかった。

A1.実際にエネルギー不足はあった。
ここで、おもしろいのは「診ません」とは言わなかったこと。
「診ません」と言ってしまうと関係が切れてしまう。一時間だけと言うと、もっと診てほしいと患者から言ってくる可能性が高い。診る気はあったのではないか?

尾谷が以前、幻視痛のクライアントを診てほしいと言われたことがある。
半身不随で腕浮揚ができないし、横で話しかけるしかない。頼まれた人とのやりとりは自然とこういう物言いになる。この日診ますと。一時間しか時間がないと。なるべくこの間で効果を、効果が出なければこれでおしまい。ということを最初から理解して貰う。そうすると効果が出るのが早い。

P190L8「他のレバノン人に声をかけてはいけません」
→レバノン人男性からの影響を避ける

クリスティーヌの働きかけは、ドイツの男尊女卑文化を意識してのものなのではないか?

ミニの所で働かせる
レバノン文化を脱却してアメリカ文化を学ばせる狙い

Q2.母親に「車を借りて、アリゾナ州のフェニックスを走り回り見たい景色を全て見ること」(P190L4~5)と条件に入れたのは何故か?

A2.父親から距離をとる
母はマサチューセッツ州から泊まり込みできている。息子を置いて母親が帰ってしまうと、母親が父親の影響下に入ってしまう。エリクソンとしてはもう少しアリゾナに足止めをさせたい。母親をこっちの味方に組み入れて息子の治療をしたい。
A2.母親に自由に楽しいことをやらせて、アメリカ文化よりにさせる。
母親を大きく変化させようとはしないが。母親がエリクソンに反対すると抵抗勢力になってしまうのでそれを防ぐ。母親にはオイシイ思いをさせる。

何故条件付けをするか?
上記を自由意志でやることは、レバノン人の文化からすると難しいこと。しかし、指示であれば従いやすい。男性の、目上の人間の指示に従うのはレバノン文化だからだ。指示命令の形をとることで、レバノン人女性でも受け入れる。

事前に聞かせたのは何故か?
聞かせないと息子がドロップアウトする可能性があったからだ。理不尽な指示を出すミニが悪いのではなく、ミニに命令したエリクソンの指示によって理不尽な状態になっている状況を作る。ミニはあくまでも男性であるエリクソンの指示に従っているだけだ。指示はエリクソンから来ている。完全にリックはアメリカナイズされていないので、レバノン人風の文化を入り口にして指示を出す。レバノン文化は年長の男性が偉い。
つまり、ここでエリクソンは相手の行動原理に従って働きかけている。どのように指示を出せば相手は従ってくれるのか?を考えることはカウンセリングには大事なこと。

Q3.なぜエリクソンはミニへの電話をリックに聞かせたいのか?(P190後半)
A3.エリクソンからミニへの指示として「リックを酷く扱う」こと
エリクソンからミニへ伝えられてること、つまり男から女へ伝えられていることをリックが知れば、リックはドロップアウトせずに働き続けられるから。

何故酷いことをわざとさせたのか?
レバノン人女性の境遇を正確に再現させたかった。その結果リックはレバノン文化を酷いと思う。リックが従うのはエリクソンの命令だからだ。レバノン文化の流儀で酷い目にあっている。そこから離れたければレバノン文化から離れる必要、つまり年長者に逆らう必要がある。また、従ったとしても女性であるミニの指示に従っているので、これもまたレバノン文化に反することだ。従っても反発してもどちらにせほレバノン文化に反する行動をとることになる。レバノン文化の流儀で従ってレバノン文化に反する行動をとらせる。パラドックス、逆説的アプローチ。

エリクソンは話の意図を伝えないのは何故か?
人は解ったと思うと考えることを止めてしまう。解らないことが気持ち悪い、もがいて動いている。そのもがいている中で無意識レベルの変化が起きる。頭に汗をかかないと人は学ばない。無意識の学習にパワーがあり、意味があるとエリクソンは考えている。言葉で伝えて解っていなければ、無意識でも解っていないので別に解らなくてもいい。意図を伝えて言葉が解っても無意識が学習しないと意味がない。その人が持っていけるものだけ持って行けばいい。

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?