「骨太の方針」を読む(1)医療 マイナ保険証強制・病床削減〜すべてがNになる〜
2024年7月7日【2面】
岸田政権は6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)を閣議決定しました。「財政健全化」の名目で社会保障分野を中心に歳出を削減する方向を打ち出し、国民向けの歳出を標的とした切り捨ての方策を並べています。社会保障分野を中心に「骨太の方針」を4回に分けて分析します。
「骨太の方針」では、政府を挙げて医療DX(デジタル化)を推進するとしています。その柱の一つが、現行の健康保険証の新規発行停止(12月2日)とマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への移行です。
マイナ保険証は医療機関や薬局に設置されたカードリーダーで患者本人かどうかを認証する「オンライン資格確認」を行います。
政府はマイナ保険証の利用促進を狙いますが、利用率は5月時点で7・73%と低迷。利用者数の伸び悩みは、健康保険証と別人のマイナンバーが誤ってひも付けされたなど相次ぐトラブルが原因とされています。
マイナ保険証への移行は、患者も窓口で働く職員にとっても不利益をもたらします。同方針では医療DXに関連するシステム開発などについて「国が責任をもってガバナンスを発揮できる仕組みを確保する」とし、あくまでもマイナ保険証への移行に固執しています。政府は開き直りをやめ、国民からの起こっている反対の声を受け止めるべきです。
治療の制限も
病床削減を進める「地域医療構想」も政府の狙いの一つです。
同構想は医療費削減を狙う自公政権が、2016年度までに全都道府県に策定させたもので、25年時点の病床の“必要数”を4機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに推計。高度急性期・急性期病床は全国の積み上げで15~25年の間に約25万床も減らします。
病床削減は医療機関の再編・統合を通じて行われます。厚労省は人口減少を理由に病床削減を正当化しますが、都市部への集約や医療機関の統廃合が進めば交通手段に乏しい高齢者をはじめ周辺住民は、ますます入院医療にアクセスしづらくなります。
コロナ禍で起きた医療体制の逼迫(ひっぱく)で、政府は方針を転換。入院対応が基本だった新型コロナ感染者を自宅療養としました。呼吸困難に陥った高齢者の治療に制限がかかるなど「命の選別」が現実化しました。公的医療の縮小で国民の健康と命が危険にさらされたのです。
医療費を抑制
同方針では、創薬力の強化やヘルスケアを押し出していますが、その内実は医薬品並びに医療費の抑制に他なりません。「医薬品の革新性の適切な評価も含め、検討する」、「休薬・減薬を含む効果的・効率的な治療に関する調査・研究を推進し、診療のガイドラインにも反映していく」としていますが、処方は医者の権利であり、国が指図すべきものではありません。
また、「スイッチOCT化(市販薬化)」でのセルフケア・セルフメディケーションの推進や薬剤自己負担の見直しについて引き続き検討を進めるとしていますが、患者の自己判断で隠れた病気に気付かず重症化することもあり得ます。安易に一般薬を増やすことは、医療費負担増にもつながります。見直しが求められます。(つづく)
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