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NHK経営委 議事録開示 控訴審が新展開裁判長も公開求める〜すべてがNになる〜


2024年7月24日【特集】

 NHK経営委員会が2018年に上田良一会長(当時)を「厳重注意」した会議の議事録開示を求める裁判の控訴審(東京高裁、舘内比佐志裁判長)が、面白い展開を見せています。17日の第1回口頭弁論で、裁判長自身がNHK経営委員会に過去にさかのぼっての議事録公開を求めたからです。(和田肇)

 一審判決(2月)は、正式な議事録が作成されていないと認め、元となる録音データの開示をNHKと森下俊三経営委員長(当時)に求めました。

 控訴審でNHK側は、議事録の「草案」を作成した後にデータを消去したと新たな主張を始めました。一審では議事録の「粗起こし」以外に資料は無いと言い続けていたため、原告弁護団は「原告と裁判所をだますものだ」と強く批判。正式な議事録を作成し、開示することで和解したいと提案しました。

 舘内裁判長は「粗起こしがいつできたのか、録音データから確認したのか、確かめる必要がある」とNHK側に提起。さらに、経営委員会は非公表部分について議事録を作らなくてよいという認識ではないのかと確認。NHK側は「(作らなくてよいという認識だったが)修正している」と答え、舘内裁判長は「(作成していない)過去の議事録についても(作成して)公開すべきではないか」と求めました。

 放送法41条は経営委員長に議事録の作成と公表を定めています。正式な議事録がないという状況は違法状態といえます。原告弁護団は、裁判長の訴訟指揮が原告の主張に沿っていると評価しました。

裁判の経過

 裁判の発端は、18年4月のNHK番組による、かんぽ生命保険の不正販売の暴露でした。郵政3社幹部が激怒し、上田会長宛てに取材中止を要請。会長が受け入れないため、森下経営委員長代行に「NHKのガバナンス(組織統治)が効いていない」と注文。応じた森下氏は10月23日の経営委員会で「取材は極めて稚拙」などと番組を攻撃し、石原進経営委員長とともに上田会長に「厳重注意」の処分をしました。

 翌年、「毎日」が「厳重注意」について報道。経営委員の個別番組への干渉を禁じた放送法32条違反が指摘されました。21年、元NHK職員ら市民約100人が提訴しました。(肩書は全て当時)

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