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【障害者のための服?】インクルーシウェアとは

どうも、おっさーです!
わが家の7歳になる娘は重度の知的、身体的な障害があり、それゆえに服で困ることが日常的にあります。
わが家の場合、娘が自分で立つことができないということもあり、寝かせた状態で着替えさせるのが大変、また、よだれや食べ散らかしで服が頻繁に汚れてしまうといったところが主に困っているところです。
そんな中、自分がアパレル業界で仕事をしているということもあり、インクルーシブウェアについて興味を持ち、本やネットでいろいろと調べてみることにしました。

インクルーシブウェアとは?

インクルーシブウェアとは、
「年齢、性別、人種、体形の違い、そして障害の有無にかかわらず、すべての人を孤立させずに包括することを目指すアパレルウェア」のこと。
昔からファッション業界では、毎シーズン新しい服がどんどん消費されるように、ブランドやメディア側主導でトレンドというものをつくり出してきました。
それに基づいてつくられた服を、コレクションで10等身もあるような現実離れした体形のスーパーモデルがランウェイを歩き、消費者に憧れを抱かせるといった手法でマーケティングをしてきました。
そして最近では、そうやってつくり出されたトレンドを、ファストファッションブランドが安価な生地、縫製に置き換え、1シーズンももたないような服が大量生産、大量消費、大量破棄されることが社会問題となる時代に。
また、彼らはPOSシステムを活用して、売り場でどのような色、サイズ、デザインの服が売れているかという細かな情報をもち、それを基に売れ筋を追いかけた商品開発をしています。
でも、こうしてあらゆるブランドが売れ筋を追いかけた商品開発を進めた結果、今アパレル業界で起こっていることは、「服の同質化」、「価格競争」、「短納期競争」といった不毛な消耗戦です。
このような売場主導の商品開発は、顧客のニーズをつかむには有効な手段ということができますが、「買わなかった客」のニーズを汲み取ることはできません。
ブランドが効率よく、大量に商品をさばくためには、標準体形のマス層向けに集中して生産することが実に都合がいいです。
でも、結果として世の中に大量の服が余っているにもかかわらず、「標準」から外れた人たちは服で困っているという状況が生み出されてしまっています。
インクルーシブウェアによって、あらゆる人を孤立させずに包括する商品企画は、消費者よしだけではなくて、企業よし、社会よしのまさに三方よしと言えるのではないでしょうか。

障害者の規模

障害者はマイノリティと言われますが、実際にどれくらいの数になるのでしょうか。
内閣府の「障害者白書」によると、日本における障害者の数は約936万人、全人口の約1割弱もの人たちが、なんらかの障害を抱えています。
ちなみに、昨今流行しアパレルブランドの新規参入も増えているオートキャンプ参加人口は約750万人。
もはや障害者のことをマイノリティと言うことができるのでしょうか。

障害のある人の困りごとを解決できる服はすべての人にとってよい服になる

ストローやライターが、実はもともと手の不自由な障害者のために開発されたものだということをご存じでしょうか?
実は、両手を使ってコップが持てない人や、マッチを擦ることができない人のために、手を使わなくても飲みものを飲めたり、片手で火がおこせるように開発されたものなんです。
ですが、今では一般社会に広く普及しています。
また、タイプライターは目の見えない視覚障害者のために開発されたものですが、今ではワープロ、パソコンのキーボードとして一般社会に広く普及しています。
これは、障害のある人の困りごとを解決できる高機能なものは、すべての人にとってよいものになりうるという一例と言えるでしょう。

インクルーシブウェアに求められるもの

では、インクルーシブウェアとして求められるのは、どういった服でしょうか?
大切なことは、障害がある人専用ではなく、オシャレであるということです。
障害者専用服は介護服です。
そうではなく、
「障害のある人も含めて誰もが省かれず、快適にオシャレを楽しむことができる高機能な服」
といった要素が求められます。
高機能でオシャレといったら、ぼくはアウトドアウェアを連想します。
アウトドアウェアはキャンプや登山などでの着用に適した高機能な服ですが、ブランド各社はこれを街着としてのオシャレなデザインに落とし込み、アウトドアをやらない人たちでも、ファッションアイテムとして着こなしています。
作業着のワークマンにも、同じことが言えるのではないでしょうか。
作業着といったら土木作業員の仕事着ですが、作業着の機能性に街着としてのデザインを落とし込むことで、今では一般社会を席巻しています。
インクルーシブウェアにも、同じことが言えるのではないでしょうか。
障害があっても着こなせる高機能な服を、介護服としてではなく、街着としてオシャレに着こなせるデザインに落とし込むことで、障害当事者だけでなく、一般社会に浸透させていくことができるのではないかと考えます。

どんなブランドがあるのか?


では、インクルーシブウェアのブランドには、どんなものがあるのでしょうか。
いろいろと調べてみたのですが、インクルーシブブランドといったらこれ、と言ったような知名度、シェアを誇るブランドは今のところ無いようです。
そういった中でも、ぼくが調べたブランドをいくつかご紹介したいと思います。

トミーヒルフィガーアダプティブ

https://japan.tommy.com/tommy-adaptive/

2016年ローンチ。
2020年から日本展開。
トミーヒルフィガー自身が自閉症の子どもを育てたことがきかっけとなり立ち上げられたブランドです。
マグネット開きのパンツや、面テープ開きのシャツなどが展開されています。

ユニクロ

https://www.uniqlo.com/jp/ja/kids/innerwear/front-open/front-open

ユニクロと言うと意外かもしれませんが、キッズ用ビックサイズの前開きロンパースが販売されています。
こちらは、廃盤になる予定であったところ、障害をもつ子どもの親からの多数の切実なレビューを受けて、販売を継続することとなったようです。

キヤスク

https://kiyasuku.com/

「たとえ障害があっても世の中にある好きな服を自由に着ることができるように」との想いからはじまった、障害者向けお直し(リメイク)サービスです。
世の中のあらゆる服を、障害当事者の特性にあわせてキヤスクお直ししてくれます。

ヘラルボニー

https://www.heralbony.jp/

こちらは障害者向けの服というわけではありませんが、障害者の雇用を生み出しているという点で素晴らしいブランドなので紹介します。
「異彩を、放て。」を合言葉に障害者アートのプリントTシャツなどのグッズを販売しています。

まとめ


アパレル企業に長く勤めるぼくでも、インクルーシブウェアという言葉はあまり聞かない(最近はサスティナブル、SDG’s一辺倒)ですが、
今後高齢化がさらに進んでいき、日本における障害者の数が右肩上がりに増えていっていることも勘案すると、アパレルブランドは今まで通り若者向け、標準体形一辺倒の服づくりだけでは難しい時代となり、インクルーシブウェアの重要性はどんどん高まっていくのではないでしょうか。


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